東京証券取引所でシステム障害が続いている。22日は東証株価指数(TOPIX)先物や国債先物など、デリバティブ(金融派生商品)と呼ぶ商品の取引を停止した。今年だけでも2月、3月に続く障害である。復旧したとはいえ、売買機会を提供する使命が果たせなかったことを真剣に受け止めるべきだ。
東証によると、今回の障害には2つの要因がある。まず、注文処理の性能を上げるために導入したソフトウエアのプログラムにミスがあったという、システム会社の問題だ。もう1つは、導入前にテストしたにもかかわらず不具合が発見できなかった、東証の問題である。
東証は、なぜプログラムにミスが発生したのかを究明する一方、自らが不具合を見つけられなかった理由を洗い出し、一刻も早く再発防止策を打ち出すべきだ。万が一システム障害が発生した際の悪影響を避けるために、復旧やバックアップの体制も強化を急いでほしい。
今回障害が起きたデリバティブ商品の取引は、株式などの現物取引に依存してきた東証が、他の取引所との「市場間競争」に勝ち抜くために新たな収益源としてテコ入れを続けている分野だ。今年3月に打ち出した今後3年間の中期経営計画では、デリバティブの取引高を倍増し、アジア最大級のデリバティブ取引所になることを目指している。
今年1月にデリバティブ取引向けの新たなシステムを導入したのも、その戦略の一環だった。しかし、導入直後の2月に取引が一部停止したのに続き、今回の障害である。成長への意欲に、技術力が追いついていないようにも見える。東証が成長を目指すこと自体は日本の資本市場の活性化につながり歓迎すべきことである。だが、成長を支える技術力が心もとなければ投資家は安心して利用できなくなり、成長もおぼつかなくなることを肝に銘じてほしい。
東証は来年にも自らの株式を上場し、収益重視の姿勢を一段と強めるとみられる。だが、収益は投資家の信頼なしには得られず、そのためには市場の高い質が不可欠だ。目先の費用はかかるかもしれないが、IT(情報技術)関連の人材の育成や増員は急務になるはずである。