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社説:福田首相 解散目指す改造なら歓迎だ

 夏休みを終えた福田康夫首相が22日、公務に復帰した。与党内の関心はもっぱら内閣改造である。だが、改造する、しないの判断の前に首相が先に考えるべきことがある。まず、福田内閣は何を目指すのか、もっと明確にする必要がある。そして衆院の解散・総選挙から逃げないことだ。それを目指した改造であるなら歓迎したい。

 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)を終えた後も内閣支持率が横ばいだった福田首相にとって改造は反転のきっかけとなる可能性はある。閣僚の大半を安倍前内閣から引き継いだ首相には「自前の内閣」を作りたいという気持ちもあるだろう。

 ただ、顔ぶれが変わっただけでは今の政治不信を解消できないことは首相も承知のはずだ。逆に新閣僚に政治資金スキャンダルなどが浮上すれば一転して政権は危機に陥ることになる。

 首相も認めている通り、「何をするか」をはっきりさせるのが先であり、改造はそのための態勢作りだ。それが国民の目に見えて初めて支持率アップにつながるのではなかろうか。

 確かに首相は就任以来、「生活者・消費者重視」を掲げ、自ら議論をリードした消費者庁設置関連法案も次の臨時国会に提出する予定になっている。だが、与党内では、これにまるで逆行する動きが出ている。当初、8月下旬に予定していた臨時国会召集を9月中旬以降にするとの動きだ。

 ガソリン代や食料品価格の高騰、深刻な漁業問題など、まさに緊急の政治課題は「生活」だ。ところが、「早期に国会を開いても野党に政府追及の場を与え、民主党代表選(9月8日告示)を盛り上げるのに利用されるだけだ」などと、およそ国民生活とは無関係の理由で二の足を踏む声があるというのだ。

 これでは、いくら「暮らし重視」と言っても国民の耳にはとどかない。

 面倒な話は後回しにする傾向も一段と強まっている。首相が一時打ち出した消費税増税論議は早々とトーンダウン。基礎年金の国庫負担率を09年度から2分の1に引き上げる方針も先送りが取りざたされるほどだ。一方では税金の無駄遣いをなくす作業も進んでいるようには思えない。

 福田首相のやりたいことが見えない。やりたいことがあってもできない。政権の動きを阻んでいるのは衆参のねじれという事情だけではない。やはり、一度も国民の審判を仰いでいないからではなかろうか。まだ国民の信を得ていない政権が自信を持って政策を実行することは困難なのだ。

 ともかく解散を先送りするというだけでは、内閣を改造しても状況はさして変わらないということだ。改造を解散・総選挙に打って出るスタート台とする。福田首相も与党もそろそろ覚悟を決めたらどうか。

毎日新聞 2008年7月23日 東京朝刊

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