Kyoto Shimbun


環境を考える
京都市BDF化事業

 ディーゼル車の燃料として廃食用油を再利用する京都市のバイオ・ディーゼル燃料(BDF)化事業で、市交通局と廃食用油を回収、精製している業者との間がぎくしゃくしている。市バスへの利用を見込んで回収量を増やしてきた業者に対し、市交通局が軽油引取税の負担増などを理由に「これ以上は増やせない」と難色を示しているためだ。「集めた廃食用油を有効に使えない」と業者は訴えるが、互いの主張は平行線のままだ。(社会報道部 下尾芳樹)

市バス利用拡大が頭打ち
背景は軽油引取税の負担

 一般家庭や飲食店から出る廃食用油(てんぷら油)を精製したBDFは軽油に比べて排ガスの黒煙や硫黄酸化物を減らせ、二酸化炭素の排出も10%程度少ない。京都市は循環型社会実現の一環で、1996年からこの廃食用油の回収と精製を京都市伏見区の業者に全面委託し、事業を始めた。

 翌97年には一日当たり約5000リットルの廃食用油を確保。市のごみ収集車の全220台に100%のBDFを、また2000年から市バスの1部80台(現在95台)にBDF20%と軽油80%の混合油を使うようになった。04年6月からは日量5000リットルの処理能力がある精製プラントを市が独自に伏見区で開設。業者から廃食用油の供給を受け、ごみ収集車と市バス用のBDFを精製している。

写真
使用済みのてんぷら油を回収用のドラム缶に入れる市民(京都市左京区)
 この間、業者は回収範囲を市内から近畿一円に広げ、日量五千リットルから1万5000リットルまで増やした。「市が市バスへの利用を拡大していくというから回収を増やした」といい、和歌山市に精製プラントも新設した。

 ところが市バスへの供給量は一向に増えなかった。業者によると、回収量の3分の2は大阪府箕面市や京都生協に売ったり、工業用原料として商社に格安で処分したりしているという。業者は「約束が違う」と市バスへの利用増を求めている。

 これに対し、市交通局技術課は「増やすという約束はしていないし、これ以上増やせない」と主張する。背景にBDFへの軽油引取税課税(1リットル当たり32円10銭)がある。事業スタート当初は無税だったが、02年度から京都府が国の解釈に基づき、混合油を急きょ課税対象とした。

 市も府に対し「約束が違う」と訴え、結局、税金分を府市で折半したが、04年度からは市交通局が全面的に負担している。「仮に市バス全車にBDF20%の混合油を使えば税金は1億円近くになる。とても負担できない」という事情がある。

 100%なら無税

 BDF100%だと無税で問題はない。100%のごみ収集車は故障なく走っている。「市バスに100%を使ってほしい」と業者は訴えるが、市交通局の相田正雄技術課長は「市バスとごみ収集車は性格が違う。燃料が原因でバスが故障する可能性があり、BDFの安全を保証する国のJIS規格も定まっていない」と話が前に進まない。

 市バスへのBDF利用の拡大をめぐって、市と業者との約束は「やぶのなか」だが「市民・事業者・行政」の協働で回収量を増やしていくことがバイオ・ディーゼル燃料化事業の本旨だったはずだ。

 市民回収課題

 京都市の市民回収拠点は現在、855カ所で、回収量は日量440リットル。ここ数年、大きく伸びていない。市内の家庭から1日に排出されるてんぷら油は8000リットルと推計され、市民回収を増やしていくことが課題になっている。

 「市が率先してBDFを使っていかないと、家庭回収は進まない」という業者の主張に対し、市も新たな税金の負担は厳しい。

 クリーン・エネルギーの一つであるBDFの利用促進の前に、税制や燃料の規格の問題、つまり制度の壁が立ちはだかっている。(2005年4月19日掲載)


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