最近、記者たちと話していて、残念だなと感じることがある。公立の文化施設が主催するシンポジウムや講演会などの催しで、聴衆の姿がまばらなのだという。聞く側がわずかでは、大切なメッセージも届かずじまいだ。
多様なニーズを持つ市民を集客するのも大変なんだと思っていたが、よく聞いてみると広報にも問題があるらしい。ワークショップの日程をチラシに刷ったままでどこにも来場を呼び掛けていなかったり、開催直前にチラシが出来上がったりと「えっ!?」というようなケースもあった。
岡山県内のミュージアムでもホームページは当たり前になったが、こまめに更新している館は少ない。限られた予算と人員で厳しい事情も分かるが、まず開催ありきで、割り当てられた予算を消化するといった“お役所仕事”のようにも映る。
同県が財政危機宣言した後の六月定例県議会では、コストカットの対象として県立美術館も俎上(そじょう)に載った。文化をカネで換算することには賛成しかねるが、どこの自治体も財政は逼迫(ひっぱく)しており、こうした問題は同美術館に限ったものではない。
美術・博物館の所蔵品、図書館の蔵書などは住民の貴重な財産だ。文化施設の廃止が決まってから慌てても遅い。職員の皆さんには少なくとも「今までのやり方ではいけない」ぐらいの危機感を持ってほしい。
どうすれば楽しんでもらえるかといった“サービス精神”でちょっとした工夫を凝らせば案外、気付いていなかったものが見えてくるかもしれない。
(文化家庭部・金居幹雄)