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2008年7月23日

 連日、半端でない暑さが続く中、あすは土用「丑(うし)の日」。さんざんケチがついたウナギの売れ行きが気にかかる

こんな折だからこそ、エレキテルの実験で有名な江戸時代の人、平賀源内の逸話が思い浮かぶ。ウナギの在庫をかかえる店の主人に頼まれて、丑の日には「う」の字の食べ物が体によい、という宣伝文句を考えた。もの知りの源内先生の言うことなら、と評判になり、売れなかったウナギに火が付いた、という俗説である

「う」の字の食べ物がいいのなら、うどんでも牛でもいいようなものだが、ウナギに人気が集中したのは、夏ばて防止の効用を敏感に感じ取った先人の舌の確かさが働いたからに違いない

だが、因果は巡る。土用のウナギが定着した平成の時代、業者は在庫を抱え、今度は産地偽装の悪だくみをしでかして消費者を怒らせ、嘆かせている。源内のアイデアと、それに人々が感心した江戸時代よりも程度の悪い現代である

今年は暦の関係で、土用の丑の日が8月にもある。ウナギ人気が回復する好機なのだが、源内先生のような知恵者が現れる気配は、とんとなさそうである。


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