日本型移民政策 地球的な課題に積極的関与を
国際移住機関(IOM)駐日代表 中山暁雄
国際移住機関(IOM)の基本理念を要約すれば「移民と社会の双方に利益をもたらす人の移動(移住)」を実現することにある。人々は紛争や迫害からの避難、労働、留学、結婚、家族と一緒に暮らすためなどさまざまな動機で国境を越えて移動する。多様化する今日の移民像を反映して、国連は「通常の居住地以外の国に移動し少なくとも12カ月間該当国に居住する人」という移民の定義を推奨している。受け入れ国は、移民の人権と尊厳を擁護し、不正規な人の移動を抑制しつつ、移民の社会参加を促進する包括的政策を求められる。日本は中国、朝鮮半島出身者とその子孫に加え、90年代以降「ニューカマー」と呼ばれる外国籍住民の急速な流入を経験し、既に実態的な移民受け入れを行っている。
自民党の外国人材交流推進議員連盟が先日まとめた「日本型移民政策の提言」は日本を移民の受け入れ国として明確に位置づけ、長期的な移民受け入れの前提となる基盤整備と日本社会の将来像を提示している点で画期的な内容だ。従来、非定住型の外国人労働者の入れ替え(ローテーション)方式をベースとする議論が多かった中で、移民を将来的な日本市民と見なし、家族呼び寄せの権利を保障する定住型、人材育成型の受け入れを提唱していることは注目に値する。伝統的な血統主義に基づく国籍を改正し、永住者の子に生地主義を認めている点は、新たな多文化的市民像の礎として重要だ。
近年、欧州諸国を中心に文化的多様性を尊重しつつ、移民の受け入れ国における現地語習得や社会参加を重視する「社会統合」政策が進められている。日本型移民政策も、自治体、企業、NGO(非政府組織)等の連携による日本語習得支援、多文化ソーシャルワカーの養成・配置、民族差別の防止などを柱とする社会統合の促進を強調している。この分野では、既に外国人集住都市会議等からの各種提言や各地域での先駆的な取り組みが行われており、予算措置を含む早急な中央レベルでの対応が求められている。ちなみに05年に新移民法を制定したドイツでは、すべての長期移民に対して900時間に及ぶドイツ語研修と文化オリエンテーションが行われており、同年の連邦政府予算から約2億ユーロが支出された。後発の移民受け入れ国である日本には、先駆者の成功と失敗を学びつつ、より整備された移民政策を導入できる利点がある。
国際的な経験共有を進めるため、IOMは05年から毎年、外務省と共催で移民の社会統合に関する国際シンポジウムを行っている。
さらに、従来の提言との決定的な違いは、人道的配慮を要する移民の受け入れを掲げていることだ。
日本で庇護を求める難民、第三国定住難民、新日系人(いずれかの親が日本人である子ども)、北朝鮮からの帰還者、本国に帰国できない人身取引の被害者等、日本が国際法上の義務や道義責任を持つ人々の受け入れによる国際貢献を推進することは、日本社会の成熟度を示すものとして国際的な評価を受けるだろう。
最後に、移民政策は人の移動という地球的課題に対する日本の積極的関与を国際的にアピールする上でも重要だ。10月にマニラで開催される「移住と開発に関するグローバルフォーラム」第2回会合は、日本のメッセージを発信する格好の場となる。IOMとしても引き続き移民と社会の多様なニーズに応えるよう日本の取り組みに協力していきたい。