大分県の教員採用汚職事件に絡み、大分合同新聞社(本社・大分市)の事業部長(52)が、大分市教委の部長を通じて、08年度の小学校教員採用試験を受験した長女の採用を県教委側に依頼していたことが分かった。長女は点数が水増しされて試験に合格し、事業部長は合格発表前に市教委部長から連絡を受けていた。事業部長は社内調査に事実関係を認め、同社はさらに詳しい調査を進めている。
大分合同新聞社や市教委によると、事業部長は試験前年の06年10月、大分市内のパーティー会場で市教委部長と懇談した。その際、「長女が教員を目指している」と伝えると、市教委部長は「1次試験に合格したら、声をかけてください」と応じたという。長女は過去に3回不合格となり、臨時講師をしていたが、07年7月の1次試験には合格した。
このため、事業部長は07年9月の2次試験前に市教委の部長室を訪れ「よろしくお願いします」と採用を依頼。さらに、10月の最終合格発表後の07年末に、5000円相当の歳暮を市教委部長に贈った。事業部長は社内調査に「パーティーの席で会った縁に甘えてしまった」と話しているという。
長女は1次試験で自力で合格圏内に入っていた。最終的に合格するよう2次試験の点数が水増しされていた。
一方、市教委部長によると、事業部長からの要請後、県教委の富松哲博・教育審議監(60)に電話をかけ、合否を事前に知らせてくれるよう頼んだという。市教委部長は「娘さんは臨時講師として評判がよく、口利きなどはしておらず、歳暮ももらっていない。父親(事業部長)とは1回パーティーで会っただけで、事前の合否連絡もしていない」と事実関係を否定している。
大分合同新聞社は約23万部を発行する県紙。【柳瀬成一郎】
▽樋口淳・同社総務部長の話 報道機関に携わる者として不適切な行動であり、県民におわびしたい。詳しい社内調査を進めており、事業部長は事業局参事に降格した。
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