千葉県銚子市の公立病院が突然、9月いっぱいで事実上閉鎖すると発表し、患者らに動揺が広がっています。一体この病院に何が起きたのでしょうか。
先週土曜日。ある集会所に大勢の市民が集まっていました。急きょ設置された、屋外のモニターの前にも人だかりが・・・。一体何の集会なのでしょうか?
この集会は、患者や銚子市民が市立病院の存続を求めて開いたものでした。700人超える参加者の熱気の中、病院を休止しないよう訴える市民の声が続きました。
銚子市立総合病院。60年近く地域の医療を支えてきた市内で唯一の公立病院です。ところが、今月7日。銚子市は「病院を9月いっぱいをもって全面休止する」と突然、発表しました。
理由は医師不足。いま、全国の病院がこの医師不足に悩んでいます。原因は、2004年に始まった医師の新たな研修制度。この制度の導入で、研修医が大学病院ではなく研修内容がより充実した都会の民間病院に集中するようになりました。
働き手である研修医が不足した大学病院は、これまで医師を派遣していた公的病院などから「医師の引き上げ」を行ったのです。このため銚子市立総合病院でも、2004年に35人いた常勤医師が3分の1に減ってしまいました。入院患者も制限せざるを得ないなど、診療体制が縮小して収益が悪化。今年度の赤字はおよそ10億円が見込まれていました。
市は毎年9億円を負担して病院を支えていましたが、これ以上は「無理」と市長が決断したのです。
漁師の牧野益男さん(60)。妻の京子さん(54)は、5年前に脳出血で倒れ、この病院に入院しています。
「もう非常に残念としか言えないね。悔しい、本当」(牧野益男さん)
病院にはおよそ150人の入院患者がいますが、転院先を見つけるのは簡単なことではないのです。
「病院のほうでは次の病院をちゃんと世話してくれるって言ってるけど、決まるまではすごく不安でしょうよ」(牧野益男さん)
病院の存続を求める集会に、牧野さんの姿もありました。
「これからどんどん市民の力だよね。病院が長く続くように願いたい」(牧野益男さん)
「近くに市立病院があってほしい」。多くの銚子市民の当たり前の願いが、医師不足という現実を前にかき消されようとしているのです。(22日13:07)