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2008年06月29日

愚かな賢人

「はたらくげんき」の収録で、和田中に伺った。あの「よのなか科」の学校です。
藤原和博先生は、任期満了でご退任。代わって、同じくリクルート出身の、民間人校長・代田昭久先生が、この4月に就任している。
現在、ネットを検索してみると、検索エンジンの上位にでてくるのは、ほとんど藤原先生がてがけた改革に対す批判的コメント。夜に私塾(SAPIX)を招いて行う「夜スペ」、PTAの解体等、象徴的にとらえられがちな施策なんだけど、住民からの監査請求があったりして、物議をかもしだしている。

「教育までも民営化するのか」「行き過ぎた新自由主義だ」と、不安が噴出しているようなのだ。

いやー、こりゃ大変なときに、代田先生は就任したなぁ。渦中に栗を拾いにいくチャレンジャーというのは、まさに彼のこと。こういうことは初代よりも、あり意味、優秀でないと、できない。

で、実際のところは、どうだったかというと・・・

素晴らしいんですよ、代田先生。

取材がはじまる前は、上の空で・・・
どうしたのかと思ったら、その収録直前に野球部が準決勝で、試合に負けた、という。
そこから立ち直れない。中学三年生が、号泣するなか、自分も隠れて泣いていたそうだ。

「なんで、隠れて泣くんですか?」という私からの質問に対する、代田先生の答えは

「校長という立場で、泣くわけにはいかないでしょう」

そう語っている間から、代田先生の目はみるみる真赤になっていく。

ネット上での批判者は、中学生とともに涙を流す代田先生の姿を知らない。そして批判者の言葉は実に知的で、正しく聞こえる。

言葉の受け手が真実を見続けようとしない限り、批判者の言葉は真実として広がっていく。

「ネット上やマスコミでの批判に対して、生徒の反応は?」

代田先生は、ひとりの生徒の言葉を教えてくれた。

「先生、仕方がないですよ。マスコミも仕事なんだから・・・。ところで、昨日の取材のときの先生、ウツリ(映り)、いいですよ」

私は、和田中の教育の成果は、この中学生の言葉で明らかであると思う。中学生の認識レベルの高さは、現実に汗も涙も流さない賢い批判者の言葉を、幼稚にすら思わせた。

溢れる情報のなかで、もはや私たちの思考すら自由を失ってしまった今、自由でいられるのは、良質な教育を受けたものだけの特権だ。


投稿者 kanda55 : 2008年06月29日 09:34

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コメント

これ全く同感ですよ!

批判者の声ってなぜかわからないけどもっともらしく、
正しく聞こえるんですよね。

しかし中学生でこんなに真実が語れるのは、
むしろ中学生という、いい意味で社会に汚れてないから
でしょうね。

投稿者 mitti : 2008年06月29日 13:08

教育を民営化していけない理由とかは、
正直よくわかりません。

既成概念に囚われていては、本当の改革とは縁遠い気がしますし


それにしても、野球部のことについては、
校長先生にも堂々と泣いてもらえた方が良いのではないか?

と、個人的には思います。

世間がどう思うかは知りませんが、
一緒に泣いてもらえた球児達にとっては
心に残る程の何かになったかもしれませんし…


本当の気持ちを表現することの大切さを伝えることも大事な教育であるように思えるのは私だけでしょうか?


少くとも私は、
神田先生に感情の動きを感じた時に
親しみと安心感を覚えて、
お話をもっと聞きたいという気持ちになりますし(*‘‐^)-☆

投稿者 まお : 2008年06月29日 14:25

批判者はある意味、必要と思います。

しかし、神田先生がおっしゃっているように現代社会では、それが「その他大勢」を巻き込んで、「いじめ」的な態勢が形成されてしまうことが、脅威であると思います。

ちょっと古い例えになってしまいますが、沢尻エリカさんしかり、倖田來未さんしかりです。

できれば批判者は匿名性・集団性が無いほうが良いのでしょうが…。

現実は難しいですね…。

投稿者 SUNAGA : 2008年06月30日 11:45

藤原和博さんはいろんなものを学校に残されたと思います。今いる生徒たちとそこにいる先生たちとで作り上げたものが、目に見える状態で表されるのは数年先になるかと思います。
新校長が生徒と先生たちとで作りあげていくものはまた数年先に結果が出てくるでしょう。
何をするにしても、批判は起こります。新しいことを試みる時にはそれは一層強いです。ですが、世の中に必要とされていればきっと残るのではないでしょうか。
大切なのは、学生たちが将来を自分で切り開いていける力を身につけることだと思います。その手助けを学校がしていくことを強く求められているように思えてなりません。

投稿者 渡部敦 : 2008年06月30日 14:57

同じ教育者として
その気持ちわかります

「俺たちが働いてるのは
 子どもたちがいる時間だけじゃないんだ!」
とよく思います

神田先生のセミナー受けに行ったり
自費で何冊も本買って
クオリティを高めてるんだよ

ああ、それなのに
部分だけ切り取って
クレーム言ってくるんよなあ

時代を見る目を養って
生きる力をつけてやろうと
思ってるのになあ

そんなことを
思いました

さあ
学期末
がんばるよ~

投稿者 さくまけんじ : 2008年06月30日 18:52

いつも、沢山の気付きをありがとうございます。

「思考の自由」=「意識すること」と僕は思うのですが、僕の周りには「思考が束縛されている」ことに気付いていない方が多いです。

もちろん、僕にも意識できていない部分はありますが(笑)

ただ、良質な教育とは・・・?は良く考えます。
僕にも子供がおり、よく話をします。

常に自分が起こす行動や発言は「意識をする必要がある」と・・・まぁ、まだ5才の子供ですが(爆

今の時代、教育者は何をしても批判される時代のような気がします。

それでも、その言動や行動が、結果的に間違ったとしても、自分の考えを持って行動をする方を僕は称え続けたいと思います。

上司に言われたから・・・、本に書いてあったから・・・、成功者が言っていたから・・・、これこそ「思考が束縛されている」ことだと思います。

自分で考えて行動したら、必ず誰かが応援してくれますよ♪

乱文及び長文で失礼いたしました。

投稿者 k.hiroshi : 2008年07月01日 00:28

教育って、考えれば考えるほど、結局、正解も不正解もないのかな・・と思う親です。

ただ、一生懸命想いをこめて、ああでもないこうでもないと思い悩みながら、子育て、自分育てをすることが、親にも教育者の方々にも大切なことなのかな・・と。

そんな熱い先生に出会えたら、素直に嬉しいし感動するし自分自身にも、もっと責任を感じたりしますよね。

投稿者 peko : 2008年07月07日 00:22

今日やっと野老さんの回を拝見しました。
今回の3回は何だか苦労してやっと時代が来た
そんな方たちでしたね。
野老さんはマダマダ苦労の真っ只中という感じで
触れれば崩れて爆発しそうなモロさと強さを兼ね備えた
感じがしました。

あえてかどうか分かりませんが、
大成功者を出していらっしゃらないのは
なにかの意図が含まれるんでしょうか?
時代を呼ぶとか、これからを創るとか?

なんにしても野老さんは修行僧のような
人でした。

投稿者 occhi : 2008年07月10日 12:56

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