◆応急手当て 夏休みは熱中症や水の事故などが多い。そばで人が倒れたら?
■頸椎の保護忘れずに
倒れている人を見たら手当てより先にすることがある。関西医大付属滝井病院高度救命救急センター(大阪府)の津田雅庸医師は「自分の安全を確保する。それから、近づき話しかける」と話す。
6月の東京・秋葉原の17人殺傷事件では、はねられた男性を介抱していた警察官が刺された。交通事故の現場など、道路なら車にも注意が必要だ。
手当てする場合は患者をその場から動かさないのが原則だ。しかし道路上なら、安全な場所まで移動させる。この際頸椎(けいつい)の保護が大切だ。ぐらぐらしないよう頭を支え、何人かで持ち上げたい。
安全に手当てができる状態になったら、まず声をかけ、意識があるか確かめる。呼びかけに反応しない場合、119番通報とAED(自動体外式除細動器)の手配をし、あおむけにしてあごを持ち上げ、頭を後ろにそらせて気道を確保する。呼吸を確かめ、していなければ心臓マッサージと人工呼吸(心肺蘇生)をする(図参照)。
■酸素不足に注意
人工呼吸は省略もできるが、心臓マッサージは欠かせない。
脳の最大の弱点は酸素不足だ。酸素は血流で供給される。心臓マッサージをすると、心臓が動き出すまでもある程度血流を保てる。「病院に運ばれる救急患者でも、居合わせた人が心肺蘇生をしていると回復が全く違う。一人の命を助けることにつながると思い、勇気を持って積極的に」と津田医師は勧める。
けがをしている場合は、止血のため患部にガーゼやタオル、ハンカチなどを当て、手で強く圧迫する。刃物が刺さっている場合、抜くと大量出血する可能性があるので抜かない。
傷口より心臓に近い部位を縛る止血法もあるが、正しい方法を学んでいないと、患部を壊死(えし)させる心配がある。一度は講習会に参加したい。
■こまめに水分補給
夏にはプールや海でおぼれる事故も増える。助ける側までおぼれないよう注意し、砂浜や陸地に引き上げる。体を横向きにして、口にたまった水などを出し、人工呼吸や心臓マッサージをする。
熱中症も要注意だ。暑さで体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れて起きる。重い場合はけいれんや意識障害に陥る。
特に子どもは体重の割に体の表面積が広く、汗をかく量が相対的に多い。湿度が高い日は汗が蒸発せず、皮膚を流れるだけで体は冷えない。こうなると水分を失うばかりで、熱中症になりやすい。
予防には、こまめに水分を取るのがよい。それでも立ちくらみやめまい、けいれん、頭痛や吐き気が起きたら、日陰など涼しい場所に移して水分を飲ませる。吐き出すなど水分をとれないようなら、病院を受診した方がいい。
ハチなどに刺されるのも侮れない。アナフィラキシーショックと呼ばれる激しいアレルギー反応が起き、呼吸困難などで死亡することがあるからだ。
最初に刺されると、体内に抗体ができる。この抗体が原因で、2回目に刺された時にアナフィラキシーが起きる場合がある。「刺された部分だけでなく、全身が真っ赤になったり、息苦しくなったらすぐに病院へ」と津田医師は警告する。【渋江千春】
毎日新聞 2008年7月22日 東京朝刊