フィスチュラとは?
2008年07月22日掲載
フィスチュラ(瘻孔:ろうこう)とは、膀胱と膣および直腸の間に生じる異常な通路のことで、そこから尿や便が断続的に漏れる。その容態は膀胱膣瘻(VVF)あるいは直腸膣瘻(RVF)に分類される。場合によっては、両タイプのフィスチュラを同時に患う女性もいる。
手術を受けるフィスチュラ患者。チャドにて
フィスチュラを患う女性や少女に影響を与える尿および便失禁によって、彼女たちは家族や地域から取り残されてしまう。フィスチュラに関しては、失禁だけでなく、他にも深刻な健康への影響があり、泌尿器(腎感染症など)、婦人科、整形外科、神経科(歩行困難)、皮膚科(継続的な失禁によって生じる皮膚潰瘍形成)や主要な精神・社会的問題等が挙げられる。さらに、このような女性は死産児を出産することが多いだけでなく、夫からの拒絶など女性が見捨てられてしまうケースも多発し、それに続いて起こる無言の精神・社会的トラウマに苦しんでいる。フィスチュラの犠牲者は多くの場合、自分の障害の原因に気づかず、罪を感じて、肩身の狭い思いをする。彼女たちはまた、働くこともできないし、地域の活動に参加することもできない。社会的疎外に苦しめられた女性や少女たちは時に、沈黙の孤立感の中で、捨て身の行動を取るまでに追い詰められてしまう。フィスチュラの90%は、長時間にわたる困難な閉塞性分娩の後に発症する。
フィスチュラは、長引くお産の間に、胎児の頭部が骨盤の反対側の膀胱を絶え間なく圧迫する時に生じる。そのため患部への血流が大幅に減少し、これが組織の壊死と破壊をもたらし、ひいては通常、膀胱と膣の間にフィスチュラ(VVF)が形成される。
閉塞性分娩は、フィスチュラの主な原因であるだけでなく、しばしば、分娩中の女性の死亡原因にもなっている。
そもそも閉塞性分娩の原因は、多くの場合、思春期前あるいは思春期の間に結婚する女性の、年齢の若さおよび身体的な未熟性と密接に関連している。小柄で非常に若い年齢で妊娠した女性が、たった一人、あるいは訓練を受けていない助産師の助けを借りて出産し、かつ診療所から遠く離れた場所に住んでいる上に、そのような時に医師に診察を求めるのは望ましくないと信じる習慣の中で生きている場合、女性がどのような結果になるかは、チャドで毎年発表される妊婦死亡率の統計とフィスチュラの症例数に如実に反映されている。フィスチュラ症例の少なく見積もっても75%が20歳未満なのである。
フィスチュラの患者に手術を施し、それを治すことは可能であり、いくつかの団体がその活動に関わっている。今後、チャドのアベシェで活動する国境なき医師団(MSF)も、この活動に加わっていく。ただし、フィスチュラを患っている多くの女性がいまだに、その可能性を知らないままであり、知っていたとしても、診療所までの適当な交通手段を見つける必要があるだけではなく、自分の家族を説得しなければならない。非常に多くの場合、フィスチュラを患った女性がやっとの思いで診療所にたどり着いた時には、ひどい栄養失調で体が弱っており、外科手術を受けられる状態になるまでに、特別なケアを一定期間受けなければならない。最近、フィスチュラ修復の外科手術はそれなりに発達してきてはいるものの、非常に専門化した技術であることに変わりはない。手術後、数週間は術後ケアが必要で、フィスチュラの手術を受けた女性は、その後の妊娠中に医学的な経過観察を受け、特に、次の出産時には、帝王切開での出産計画を行うことが極めて重要である。
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