■同じ市のなかでも格差■
同じ市のなかでも格差は大きい。保護世帯が全国一多い大阪市では、24区のうち北区の72.4%から浪速区の21.8%まで50ポイント以上の差があった。東京23区でも、足立、板橋、世田谷区は区内の福祉事務所間でも30ポイント以上の開きがあった。
05、06年に北九州市で保護申請を断られた男性が相次いで孤独死するなど、窓口で申請書を渡さず相談扱いにとどめる「水際作戦」が法律家や福祉団体から批判されるようになった。厚労省も一部自治体への監査で06年度当時の相談記録を調べたところ、「申請意思を確認していないなど申請権の侵害が疑われるケースもあった」という。
政府は、生活保護基準以下の低所得者のうち、実際に保護を受けている割合(捕捉率)を現在調べていない。しかし、複数の研究者らは15〜20%程度と推計しており、欧米諸国と比べて低いとされている。
厚労省は今年4月、保護申請の意思を確認し、意思があれば速やかに申請用紙を交付するよう通知。自治体への監査でも、窓口対応の記録の点検を強化した。
厚労省保護課は「相談したうえで生活保護以外の方法で解決するケースもあるし、対応が丁寧な福祉事務所に多くの相談が集まることもあり得るので、今回の申請率が妥当かどうかは一概に評価できない。ただ、06年度当時、申請意思の確認が不十分な例があった可能性もあり、今は徹底を図っている」としている。
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〈生活保護制度〉 国が決めた「最低生活費」を世帯収入が下回る時、その差額が支給される。自治体の福祉事務所は保護申請を受けると、預貯金などの資産、働く能力、親族の援助などを調査し、保護の要否を判定する。申請を受ければ、必ず調査と要否判定をしなければならない。最低生活費は居住地や世帯構成で異なるが、大阪市や東京23区に住む3人世帯(33歳、29歳、4歳)の場合、家賃や医療費分を除いて約16万7千円。