医療を守る多彩な運動が展開−北海道
「医療崩壊を超えた医療破壊をくい止めなければならない」−。市町村立94病院のうち38病院を診療所化する計画などが進められている北海道。道内では、既に8割を超える市町村で出産ができなくなるなど、地域医療が深刻な事態に陥っている。こうした中、道内各地で、住民と医療関係者、地元行政が連携して医療を守る多彩な運動を展開している。
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全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が7月19日に東京都内で開いた「医療・介護『再生』シンポジウム」に出席した全日本民医連副会長で勤医協札幌病院長の堀毛清史氏が、全国でも特に厳しい“医療崩壊”問題に直面している北海道の実態を報告した。
道内では今年1月現在、180市町村のうち80.5%に当たる145市町村で出産ができなくなっている。堀毛氏は、根室市で昨年3月、市立病院の分娩休止のため、23歳の妊婦が55キロ離れた別海町立病院に向かう車内で出産し、新生児が低体温で一時危険な状態になった事例などを挙げた。
救急医療も困難になっており、岩内町では岩内協会病院の院長を除く全医師が退職し、救急の受け入れが不可能になった。このため、町内の救急患者を1時間半かけて札幌市内の医療機関へ搬送しなければならない実態なども報告した。
産科や救急など医療供給体制が危機的な状況にある中、道内では国の「公立病院ガイドライン」などによって、市町村立94病院のうち38病院が診療所化されるほか、9病院が規模縮小される計画が進められている。これに対し、堀毛氏は「この計画通りに進むと、道内では多くの市町村が『病院空白地域』になる」と強く批判した。
一方で、堀毛氏は、住民や医療関係者、行政などが連携し、医療問題の解決策を検討する集会や地域医療を守る会をつくる運動が道内各地で起きていることを強調した。
根室市では、住民の呼び掛けで開業医が市立病院の日当直体制を支援する活動を展開。釧路市でも、循環器科が閉鎖されて心筋梗塞の患者などを受け入れられなくなった市立病院に対し、釧路労災病院と釧路医師会病院が勤務医を派遣するなど、地域全体で医療を支える取り組みが進められている。
こうした新たな動きに触れ、堀毛氏は「いま住民が主人公となる医療改革が求められている。道内各地の関係者と医療再生に向けた輪を大きく広げていきたい」などと語った。
更新:2008/07/22 10:13 キャリアブレイン
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