2008-01-30-Wed-16:38
【 What's New 】 JNATIP活動報告 2006.08（吉田容子）
JNATIPが発足したのは2003年10月である。JNATIPは特に被害者保護支援を含む包括法の制定を目標として発足したネットワークであり、発足当時、まずは被害実態調査を行って立法事実を明らかにし、それをもとに議員や政府へのロビーイングを行い、あわせて社会啓発を行うことを活動内容として企画していた。その後の状況の変化や我々の力不足もあって、すべての活動を予定どおり実施できたわけではなく、まだまだ不十分な点は多い。しかしながら、日本の人身取引の根絶に幾分かの貢献はなしえたものと考える。
以下においてはこれまでの活動を簡単に振り返ってみる。
【2003年秋〜2005年秋】
2003年11月、我々はまず被害実態調査の企画に着手した。しかし、調査対象者の絞り込みや調査票の作成、調査者の研修等々、予想外の時間と労力を必要とし、調査の実施にはなお時間を要する状態であった。
そうする間にも、日本政府は、2004年4月に「人身取引関係省庁連絡会議」を足させ、以後、関係省庁、関係各国大使館、国際機関等との協議や調整を行っていた。事前の検討があったとはいえこの政府の動きは早く、我々は当初の計画を変更し、実態調査とロビーイングを並行して行うこととした。
人身取引の実態と被害者保護支援の必要性を明らかにする与野党議員へのロビーイングは、同年5月から開始し、在京メンバーだけでなく関西からもメンバーが参加した。とりわけ常に現場で被害者と接するシェルタースタッフの参加は重要であり、我々NGOメンバーも教えられるところが多かった。
同年夏には人身取引行為の全てを処罰対象とすること等を内容とする刑法の一部改正案が明らかとなったため、JNATIPが制定を目指す法律の内容を被害者保護支援に特化させることとし、特に人身取引被害者保護支援センターの設置と民間シェルターへの財政支援を重点目標とすることにした。
同年9月、人身取引の現状と日本が取り組むべき課題を多くの人に知ってもらうため、急遽、出版を行うことになり、JNATIPメンバーで執筆を分担。
同年10月にはJNATIP主催の院内集会を開催した。各個別のロビーイングも続けており、これらの活動により、「人身取引って何？」という議員を含めて多くの議員に人身取引の実態と被害者保護支援法の必要性を、ある程度、伝えることができたと考える。全ての政党に人身取引対策ＰＴができ、その検討会にJNATIPメンバーが参加して実態や国内法・国際法の現状を説明し、法に盛り込むべき具体的内容についての意見交換も行った。
また、それまでから関係省庁の実務担当者との若干のコンタクトはあったが、同年10月に人身取引関係省庁連絡会議が実施したヒアリングにJNATIPメンバーが参加し、さらに同年11月には同連絡会議とJNATIPとの意見交換会が実施された。
同年12月、政府は「人身取引対策行動計画」を策定した（その内容や評価は別稿参照）。
同年12月、「人身売買をなくすために―受入大国日本の課題」を明石書店から出版。
被害実態調査については、お茶の水女子大学21世紀COEとの共同プロジェクトに発展し、プロジェクトメンバーと多くの協力者の尽力により粛々と進められ、2005年3月に報告書を発行した。被害者自身及び被害者をサポートするシェルターや大使館担当者などから提供されたまさに実態を示す貴重な調査報告である（2006年秋に英語版発行の予定）。
2005年4月、婦人相談所での一時保護や民間シェルターへの一時保護委託、ＩＯＭによる帰国支援など、「行動計画」に基づく政府の被害者保護施策が実施されることとなった。我々はこの政府対策についてモニタリングを行うこととし、その準備を開始した。
政府は刑法・入管法等の一部改正案を国会に提出、同年６月に成立した（同年7月施行）。JNATIPメンバーは各議院の法務委員会に参考人として出席し意見を述べたが、各党ともに法案自体に異論はなく、審議はもっぱら被害者保護対策が十分であるかという点に集中していた。各議院とも付帯決議により被害者保護対策の一層の充実を求めたが、具体的な法制定の動きにまでは至らなかった。
また、政府は風俗営業法の一部改正案も国会に提出、同年10月に成立した（2006年5月施行）。その審議にあわせて、野党が人身取引被害者保護支援法案を提出したが、成立には至らなかった。「当面、今ある制度の中で被害者を保護していく」という政府方針では不十分であるとの理解を、とりわけ与党議員の中で得られていないことは事実である。
2005年には、政府の人身取引対策連絡会議とJNATIPとの意見交換会がさらに３回開かれた。有している情報・認識の違いや準備不足もあって、十分に実のある意見交換ができているかについては疑問もあるが、NGOとGOとが継続的に意見交換の場を持つことは前進である。
【2005年秋以降〜2006年夏】
人身取引被害者の悲惨な状況は、1990年代前半の一時期、メディアにおいて報道されていたが、その後10年以上は殆ど報道されず、多くの人々はその様な問題が起きていることすら気づかなかった。しかし、とりわけ2004年6月の米国務省人身取引報告書で要監視国とされて以降、新聞・TV・雑誌など多くのメディアが人身取引を取り上げ、多くの人々に被害と加害の実態を知らせ、対策の必要性を周知することに寄与した。ただ、政府対策がほぼ固まった2005年春頃から報道が目立って減っていき、同年秋以降は殆ど見かけない。人身取引は以前と同様（より巧妙かつ深刻な形態で）存在しており、日々新たな被害が発生している。需要が一向に抑制されないまま報道が減ることに我々は強い危機感を抱いた。そこで我々は、2005年秋以降、これまで十分ではなかった社会啓発にも取り組むことにした。手始めに、同年10月、JNATIP2周年記念シンポジウムを開き、需要の問題など日本に暮らす私達の責任をテーマとした。
2006年1月、JNATIPが第1回平塚らいてう賞顕彰を受賞。
2006年2月、共催：国立女性教育会館NWEC/外務省/IOM、協力：JNATIPとして「人身取引問題に関する国際シンポジウム」が開催された。JNATIPメンバーはパネリストとしても参加。政府機関、国際機関、ジェンダーバイアスに取り組む研究機関との協力関係を改めて確認？
2006年3月、モニタリングＰＴの企画がトヨタ財団助成プログラムとして採用され、同年４月から民間シェルターや婦人相談所、国外ＮＧＯ等の協力を得て調査が進行中である。今後、分析した結果を報告書にまとめるとともに、婦人相談所との連携の方向も検討中。
構成団体の独自の企画、大学での授業、ワークショップなどは、別稿参照
以下においてはこれまでの活動を簡単に振り返ってみる。
【2003年秋〜2005年秋】
2003年11月、我々はまず被害実態調査の企画に着手した。しかし、調査対象者の絞り込みや調査票の作成、調査者の研修等々、予想外の時間と労力を必要とし、調査の実施にはなお時間を要する状態であった。
そうする間にも、日本政府は、2004年4月に「人身取引関係省庁連絡会議」を足させ、以後、関係省庁、関係各国大使館、国際機関等との協議や調整を行っていた。事前の検討があったとはいえこの政府の動きは早く、我々は当初の計画を変更し、実態調査とロビーイングを並行して行うこととした。
人身取引の実態と被害者保護支援の必要性を明らかにする与野党議員へのロビーイングは、同年5月から開始し、在京メンバーだけでなく関西からもメンバーが参加した。とりわけ常に現場で被害者と接するシェルタースタッフの参加は重要であり、我々NGOメンバーも教えられるところが多かった。
同年夏には人身取引行為の全てを処罰対象とすること等を内容とする刑法の一部改正案が明らかとなったため、JNATIPが制定を目指す法律の内容を被害者保護支援に特化させることとし、特に人身取引被害者保護支援センターの設置と民間シェルターへの財政支援を重点目標とすることにした。
同年9月、人身取引の現状と日本が取り組むべき課題を多くの人に知ってもらうため、急遽、出版を行うことになり、JNATIPメンバーで執筆を分担。
同年10月にはJNATIP主催の院内集会を開催した。各個別のロビーイングも続けており、これらの活動により、「人身取引って何？」という議員を含めて多くの議員に人身取引の実態と被害者保護支援法の必要性を、ある程度、伝えることができたと考える。全ての政党に人身取引対策ＰＴができ、その検討会にJNATIPメンバーが参加して実態や国内法・国際法の現状を説明し、法に盛り込むべき具体的内容についての意見交換も行った。
また、それまでから関係省庁の実務担当者との若干のコンタクトはあったが、同年10月に人身取引関係省庁連絡会議が実施したヒアリングにJNATIPメンバーが参加し、さらに同年11月には同連絡会議とJNATIPとの意見交換会が実施された。
同年12月、政府は「人身取引対策行動計画」を策定した（その内容や評価は別稿参照）。
同年12月、「人身売買をなくすために―受入大国日本の課題」を明石書店から出版。
被害実態調査については、お茶の水女子大学21世紀COEとの共同プロジェクトに発展し、プロジェクトメンバーと多くの協力者の尽力により粛々と進められ、2005年3月に報告書を発行した。被害者自身及び被害者をサポートするシェルターや大使館担当者などから提供されたまさに実態を示す貴重な調査報告である（2006年秋に英語版発行の予定）。
2005年4月、婦人相談所での一時保護や民間シェルターへの一時保護委託、ＩＯＭによる帰国支援など、「行動計画」に基づく政府の被害者保護施策が実施されることとなった。我々はこの政府対策についてモニタリングを行うこととし、その準備を開始した。
政府は刑法・入管法等の一部改正案を国会に提出、同年６月に成立した（同年7月施行）。JNATIPメンバーは各議院の法務委員会に参考人として出席し意見を述べたが、各党ともに法案自体に異論はなく、審議はもっぱら被害者保護対策が十分であるかという点に集中していた。各議院とも付帯決議により被害者保護対策の一層の充実を求めたが、具体的な法制定の動きにまでは至らなかった。
また、政府は風俗営業法の一部改正案も国会に提出、同年10月に成立した（2006年5月施行）。その審議にあわせて、野党が人身取引被害者保護支援法案を提出したが、成立には至らなかった。「当面、今ある制度の中で被害者を保護していく」という政府方針では不十分であるとの理解を、とりわけ与党議員の中で得られていないことは事実である。
2005年には、政府の人身取引対策連絡会議とJNATIPとの意見交換会がさらに３回開かれた。有している情報・認識の違いや準備不足もあって、十分に実のある意見交換ができているかについては疑問もあるが、NGOとGOとが継続的に意見交換の場を持つことは前進である。
【2005年秋以降〜2006年夏】
人身取引被害者の悲惨な状況は、1990年代前半の一時期、メディアにおいて報道されていたが、その後10年以上は殆ど報道されず、多くの人々はその様な問題が起きていることすら気づかなかった。しかし、とりわけ2004年6月の米国務省人身取引報告書で要監視国とされて以降、新聞・TV・雑誌など多くのメディアが人身取引を取り上げ、多くの人々に被害と加害の実態を知らせ、対策の必要性を周知することに寄与した。ただ、政府対策がほぼ固まった2005年春頃から報道が目立って減っていき、同年秋以降は殆ど見かけない。人身取引は以前と同様（より巧妙かつ深刻な形態で）存在しており、日々新たな被害が発生している。需要が一向に抑制されないまま報道が減ることに我々は強い危機感を抱いた。そこで我々は、2005年秋以降、これまで十分ではなかった社会啓発にも取り組むことにした。手始めに、同年10月、JNATIP2周年記念シンポジウムを開き、需要の問題など日本に暮らす私達の責任をテーマとした。
2006年1月、JNATIPが第1回平塚らいてう賞顕彰を受賞。
2006年2月、共催：国立女性教育会館NWEC/外務省/IOM、協力：JNATIPとして「人身取引問題に関する国際シンポジウム」が開催された。JNATIPメンバーはパネリストとしても参加。政府機関、国際機関、ジェンダーバイアスに取り組む研究機関との協力関係を改めて確認？
2006年3月、モニタリングＰＴの企画がトヨタ財団助成プログラムとして採用され、同年４月から民間シェルターや婦人相談所、国外ＮＧＯ等の協力を得て調査が進行中である。今後、分析した結果を報告書にまとめるとともに、婦人相談所との連携の方向も検討中。
構成団体の独自の企画、大学での授業、ワークショップなどは、別稿参照
2008-01-30-Wed-16:37
【 What's New 】 JNATIP/F-GENS・人身売買被害に関する調査プロジェクト：「日本における人身売買の被害に関する調査研究」報告書（稲葉奈々子）
2003年11月から人身売買禁止ネットワーク（JNATIP）とお茶の水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」の共同で「JNATIP/F-GENS・人身売買被害に関する調査プロジェクト」実施を担い、日本の性産業における外国人女性の渡日の経緯と就労の仕組みを、支援の現場から明らかにした。
2005年には改正刑法に人身売買の処罰も盛り込まれた。しかしこれはあくまで刑法の一部改定にとどまっており、被害者の保護の視点を欠いている。被害女性の救済の必要を訴えるための実態調査は、今後の制度の具体化に欠かすことができない。本調査は、現場の実態から必要な制度を明らかにする試みであった。
この「調査プロジェクト」チームは、2003年11月から05年3月に、国内のNGOと婦人相談所、シェルターを利用した被害者の女性に対する聞き取り調査、およびフィリピンとタイのNGOの協力で帰国後の追跡調査を行った。それにより人身売買は刑法の観点から取り締まる法律だけでは解決されず、被害者の人権擁護を目的とし、予防策ともなりうる対応を見据えた裾野の広い法律でなければ、被害の回復はありえないことを明らかにし、また、地方都市においてはとくに、公的支援機関と民間支援組織の連携がないがゆえに、救援を求められても必要な支援が行われない事実も明らかになった。こうした問題点の解決に向けた提言を、調査の成果として2005年3月に公刊した「日本における人身売買の被害に関する調査研究」報告書のなかで述べた。
報告書では、フィリピン、タイ、コロンビアの、90年代末以降の状況を扱っている。人身売買による被害とはどのようなものか、さらには人身売買の被害者支援の鎖の連鎖がどこで途切れ、被害が回復されないのかを明らかにした。
たとえば、近年の日本では、年間に7千から8千人の女性が、「ホステス等接客業」に資格外で就労したことで入管法違反を問われて強制退去処分を受けている。「人身売買」の被害者の多くが、この「ホステス等接客業」に仕事を斡旋されている。「女性の家HELP」は97年から05年現在までに人身売買の被害にあった98人のタイ人女性を保護しているが、全員が性産業に就労していた。強制退去処分を受けた女性の数からも、被害者としてシェルターに保護される女性が、全体のわずか一部にすぎないことがわかる。その他多くの女性は、人身売買の被害者であっても、適切な被害者支援の連携がないため、入管法違反者として強制退去処分を受けている。支援を求めたにもかかわらず、警察が保護してくれなかったという例や、保護されたのに通訳が同国人男性であったために警戒して証言ができなかったという例など、被害者支援が制度化されていないがゆえに生じる多くの問題が明らかになった。
また、シェルターのスタッフや女性たちの話から、フィリピンやタイの場合、女性たちに仕事を斡旋する「人身売買組織」は、「国際犯罪組織」のイメージから遠いことが多いこともわかった。日本行きを勧誘する人は、多くが職場の同僚や友人、近所の人、親戚などであり、こうした身近な人が女性を送り出し業者に紹介していた。そのため、女性たちは犯罪組織の被害にあったという認識を持ちにくい。本人の認識はあくまでも家計を支えたり、借金を返すための出稼ぎである。しかし平均して400万にもなる渡航費用を返済するまでは、女性たちは厳しい管理下で買春を強制される。一日2〜3時間の睡眠で働かされ、客の入りが悪ければ路上で客引きをさせられた女性もいた。そうまでして働いても、たとえば興行の資格で働きにくるフィリピン人女性の場合だと、月額3万円から5万円しか本人の収入にならない。
知人や親戚といった身近な人がブローカーのことも多いタイ人やフィリピン人は、身元を知られているだけに被害を訴えにくい。コロンビア人の場合、店から逃げて帰国したあとに家族ともに殺害された女性もおり、被害を訴えることをためらう。
さらに、新たに策定された刑法では人身売買者の取り締まりは定められたが、被害の回復の方法は具体的に定めていない。女性たちの被害は賃金不払いという金銭的被害に集約されない。心身に受けた被害を100％回復することは不可能であるが、本人が望むなら日本で治療や訴訟を続けることを可能にするべきである。
【今後に向けて】
2004年12月に政府は人身取引行動計画を発表、また改正刑法は2005年7月から施行された。行動計画の被害者の保護については、帰国前提の一時保護にとどまっており回復までの支援には至っていない。指針にとどまっており具体的な対応のあり方が示されていない。報告書では、今後の政策に向けて、被害者支援の運用を帰国後までを見据え、地域社会の支援機関が有機的に連携した支援の構築を目指すべく、以下にあげる提言を行った。
【政府の掲げる行動計画の適正な運用に向けて】
これまでは入管法違反者としての国外退去が、被害者の女性に提示される唯一の選択肢であったが、行動計画と法律策定以降、日本で一定程度まで被害を回復する道が開かれた。支援の現場に法律と行動計画が周知され、被害者保護と健康の回復の支援の実施を優先として適用されているかを研究者を含む市民社会がウオッチする。
【支援機関の連携構築】
また、前述の調査では、被害者を保護したのちに警察、婦人相談所、NGO、入管など各機関の間での被害者支援の連携が機能していないことが問題として明らかになった。多くの場合はNGOに保護の実施が資金面を含めて丸投げされており、協力関係が形成されているとは言い難い。連携を実現するために必要な改善策の検討が必要である。
帰国後の統合に向けた国境を越えた連携の構築】また、前述の調査では、被害者が帰国後に精神疾患を患ったり、出身コミュニティから排除されるといった問題も浮上した。日本側の支援と出身国の支援機関のいかなる連携があれば、帰国後にも及ぶ被害を防ぐことができるかを検討する必要がある。タイ、フィリピンなど、おもな被害者の出身国と日本の間で、支援機関の国境を越えた連携のあり方を考察することが求められる。
報告書は残部僅少ですが、希望者に頒布いたします。問い合わせはJNATIP東京事務所（〒104-8238中央区銀座5-15-1 SP520、e-mail: info@jnatip.org)までご連絡ください。
2005年には改正刑法に人身売買の処罰も盛り込まれた。しかしこれはあくまで刑法の一部改定にとどまっており、被害者の保護の視点を欠いている。被害女性の救済の必要を訴えるための実態調査は、今後の制度の具体化に欠かすことができない。本調査は、現場の実態から必要な制度を明らかにする試みであった。
この「調査プロジェクト」チームは、2003年11月から05年3月に、国内のNGOと婦人相談所、シェルターを利用した被害者の女性に対する聞き取り調査、およびフィリピンとタイのNGOの協力で帰国後の追跡調査を行った。それにより人身売買は刑法の観点から取り締まる法律だけでは解決されず、被害者の人権擁護を目的とし、予防策ともなりうる対応を見据えた裾野の広い法律でなければ、被害の回復はありえないことを明らかにし、また、地方都市においてはとくに、公的支援機関と民間支援組織の連携がないがゆえに、救援を求められても必要な支援が行われない事実も明らかになった。こうした問題点の解決に向けた提言を、調査の成果として2005年3月に公刊した「日本における人身売買の被害に関する調査研究」報告書のなかで述べた。
報告書では、フィリピン、タイ、コロンビアの、90年代末以降の状況を扱っている。人身売買による被害とはどのようなものか、さらには人身売買の被害者支援の鎖の連鎖がどこで途切れ、被害が回復されないのかを明らかにした。
たとえば、近年の日本では、年間に7千から8千人の女性が、「ホステス等接客業」に資格外で就労したことで入管法違反を問われて強制退去処分を受けている。「人身売買」の被害者の多くが、この「ホステス等接客業」に仕事を斡旋されている。「女性の家HELP」は97年から05年現在までに人身売買の被害にあった98人のタイ人女性を保護しているが、全員が性産業に就労していた。強制退去処分を受けた女性の数からも、被害者としてシェルターに保護される女性が、全体のわずか一部にすぎないことがわかる。その他多くの女性は、人身売買の被害者であっても、適切な被害者支援の連携がないため、入管法違反者として強制退去処分を受けている。支援を求めたにもかかわらず、警察が保護してくれなかったという例や、保護されたのに通訳が同国人男性であったために警戒して証言ができなかったという例など、被害者支援が制度化されていないがゆえに生じる多くの問題が明らかになった。
また、シェルターのスタッフや女性たちの話から、フィリピンやタイの場合、女性たちに仕事を斡旋する「人身売買組織」は、「国際犯罪組織」のイメージから遠いことが多いこともわかった。日本行きを勧誘する人は、多くが職場の同僚や友人、近所の人、親戚などであり、こうした身近な人が女性を送り出し業者に紹介していた。そのため、女性たちは犯罪組織の被害にあったという認識を持ちにくい。本人の認識はあくまでも家計を支えたり、借金を返すための出稼ぎである。しかし平均して400万にもなる渡航費用を返済するまでは、女性たちは厳しい管理下で買春を強制される。一日2〜3時間の睡眠で働かされ、客の入りが悪ければ路上で客引きをさせられた女性もいた。そうまでして働いても、たとえば興行の資格で働きにくるフィリピン人女性の場合だと、月額3万円から5万円しか本人の収入にならない。
知人や親戚といった身近な人がブローカーのことも多いタイ人やフィリピン人は、身元を知られているだけに被害を訴えにくい。コロンビア人の場合、店から逃げて帰国したあとに家族ともに殺害された女性もおり、被害を訴えることをためらう。
さらに、新たに策定された刑法では人身売買者の取り締まりは定められたが、被害の回復の方法は具体的に定めていない。女性たちの被害は賃金不払いという金銭的被害に集約されない。心身に受けた被害を100％回復することは不可能であるが、本人が望むなら日本で治療や訴訟を続けることを可能にするべきである。
【今後に向けて】
2004年12月に政府は人身取引行動計画を発表、また改正刑法は2005年7月から施行された。行動計画の被害者の保護については、帰国前提の一時保護にとどまっており回復までの支援には至っていない。指針にとどまっており具体的な対応のあり方が示されていない。報告書では、今後の政策に向けて、被害者支援の運用を帰国後までを見据え、地域社会の支援機関が有機的に連携した支援の構築を目指すべく、以下にあげる提言を行った。
【政府の掲げる行動計画の適正な運用に向けて】
これまでは入管法違反者としての国外退去が、被害者の女性に提示される唯一の選択肢であったが、行動計画と法律策定以降、日本で一定程度まで被害を回復する道が開かれた。支援の現場に法律と行動計画が周知され、被害者保護と健康の回復の支援の実施を優先として適用されているかを研究者を含む市民社会がウオッチする。
【支援機関の連携構築】
また、前述の調査では、被害者を保護したのちに警察、婦人相談所、NGO、入管など各機関の間での被害者支援の連携が機能していないことが問題として明らかになった。多くの場合はNGOに保護の実施が資金面を含めて丸投げされており、協力関係が形成されているとは言い難い。連携を実現するために必要な改善策の検討が必要である。
帰国後の統合に向けた国境を越えた連携の構築】また、前述の調査では、被害者が帰国後に精神疾患を患ったり、出身コミュニティから排除されるといった問題も浮上した。日本側の支援と出身国の支援機関のいかなる連携があれば、帰国後にも及ぶ被害を防ぐことができるかを検討する必要がある。タイ、フィリピンなど、おもな被害者の出身国と日本の間で、支援機関の国境を越えた連携のあり方を考察することが求められる。
報告書は残部僅少ですが、希望者に頒布いたします。問い合わせはJNATIP東京事務所（〒104-8238中央区銀座5-15-1 SP520、e-mail: info@jnatip.org)までご連絡ください。
2008-01-30-Wed-16:34
【 What's New 】 京都および神戸でのシンポジウム開催（米田眞澄）
2006年7月3日（月）と7月4日（火）に京都と神戸で人身売買に関するシンポジウムが開催された。この2つのシンポジウムは、フィリピンで人身売買被害者を含む移住女性の支援活動を行っているBatis Center for womenのスタッフ2人が来日するのを受けて、それぞれ地元で活動するNGOが企画したものであり、JNATIPは協力団体として名を連ねた。
共催団体の一つであるアジア財団のスタッフ、玉井桂子さんがビデオを使って人身売買とは何かをわかりやすく説明した後、Batis のAndreaさんが報告した。Batisは、日本から帰国したフィリピン人女性移住労働者に対して支援しているNGOで、1988年に設立された。これまで1,000人以上の女性とその家族の具体的なニーズに応えて、その尊厳の回復を援助してきた。日本での人身売買の被害者の帰国にあたっては、IOMとの協力関係によって、空港への出迎えをはじめ帰国後のケアを行っている。
報告では、人身売買の被害者が受けた心理的ダメージが多岐に及ぶことについて詳細な報告があった。彼女たちの多くは、まとまったお金をもって帰国できなかったことで敗北感や自責の念を抱いており、家族から受入れてもらえないこともある。自助グループでの話し合いや演劇活動を通して自分に起こったことを客観的に見る、あるいは伝えることによって、奪われた自尊心が回復していくのを支えているのがBatisである。Andreaさんは、それをエンパワーメントという言葉で表した。
Batisの報告の後、JNATIPの共同代表である元HELPのディレクター、大津恵子さんが、シェルター活動の中から見える人身売買被害者の状況と民間シェルターの意義について経験を踏まえた報告を行った。また、京都シンポでは京都YWCA・APTとパグアサコミュニティがそれぞれ活動報告を行い、神戸シンポではアジア女性自立プロジェクが活動報告を行った。
どちらのシンポも100人以上の人々が参加し、質疑応答も活発に行われた。人身売買の問題に関心をもつ学生や新聞の開催記事を見てこのようなシンポに初めて参加したという人たちも多くいた。
共催団体の一つであるアジア財団のスタッフ、玉井桂子さんがビデオを使って人身売買とは何かをわかりやすく説明した後、Batis のAndreaさんが報告した。Batisは、日本から帰国したフィリピン人女性移住労働者に対して支援しているNGOで、1988年に設立された。これまで1,000人以上の女性とその家族の具体的なニーズに応えて、その尊厳の回復を援助してきた。日本での人身売買の被害者の帰国にあたっては、IOMとの協力関係によって、空港への出迎えをはじめ帰国後のケアを行っている。
報告では、人身売買の被害者が受けた心理的ダメージが多岐に及ぶことについて詳細な報告があった。彼女たちの多くは、まとまったお金をもって帰国できなかったことで敗北感や自責の念を抱いており、家族から受入れてもらえないこともある。自助グループでの話し合いや演劇活動を通して自分に起こったことを客観的に見る、あるいは伝えることによって、奪われた自尊心が回復していくのを支えているのがBatisである。Andreaさんは、それをエンパワーメントという言葉で表した。
Batisの報告の後、JNATIPの共同代表である元HELPのディレクター、大津恵子さんが、シェルター活動の中から見える人身売買被害者の状況と民間シェルターの意義について経験を踏まえた報告を行った。また、京都シンポでは京都YWCA・APTとパグアサコミュニティがそれぞれ活動報告を行い、神戸シンポではアジア女性自立プロジェクが活動報告を行った。
どちらのシンポも100人以上の人々が参加し、質疑応答も活発に行われた。人身売買の問題に関心をもつ学生や新聞の開催記事を見てこのようなシンポに初めて参加したという人たちも多くいた。
2008-01-30-Wed-16:32
【 What's New 】 JNATIPがトヨタ財団助成プログラムに採用されました。(2006/3/30)
助成番号 D05-L-246
テーマ 人身売買被害者支援の連携の構築−地域・国境を越えた支援に向けて
代表者氏名 齋藤百合子
代表者所属 人身売買禁止ネットワーク（JNATIP）
助成金額 2500000円
助成概要（助成決定時の概要。年次報告書に収録） 各地域で移住女性の支援に関わる組織と個人が構成する人身売買禁止ネットワーク（JNATIP）が提言した人身売買被害者保護のあり方が、政府の行動 計画に盛り込まれた。
人身売買被害者の支援と保護にあたって、この行動計画を実施するためには、公的機関と民間支援機関が連携する体制の確立が不可欠で あるが、現状では個別のばらばらな対応に終わっており、結果として被害者に不必要な負担を強いている。本プロジェクトでは行動計画に基づいた保護の現状 をモニタリングする。
モニタリングを通じて、公的機関と民間支援組織の連携体制を構築する。 人身売買被害者が必要とする支援の内容は現時点では、出国手続きの終了まで入管収容所ではなくシェルターに滞在するという保護にとどまっており、地域社会に根ざした支援活動をしている組織の能力の活用がなされていない。
プロジェクト・メンバーが支援の現場で80年以来活動してきた経験から、再発防止を見据えた裾野の広い保護の内容を明らかにし、そうした保護 と支援を提供する体制を、地域間、さらには国境を越えて実現するために、オルタナティブを提示して関係機関に働きかける。
トヨタ財団地域社会プログラムのページへ1. ページ下部のプルダウンメニューから「2005年度」を選択します。
2.「広域ネットワークの3番目」にJNATIPが載っています。
3.「詳細」ボタンをクリックすると、詳しい内容が表示されます。（少し時間がかかる場合があります。)
テーマ 人身売買被害者支援の連携の構築−地域・国境を越えた支援に向けて
代表者氏名 齋藤百合子
代表者所属 人身売買禁止ネットワーク（JNATIP）
助成金額 2500000円
助成概要（助成決定時の概要。年次報告書に収録） 各地域で移住女性の支援に関わる組織と個人が構成する人身売買禁止ネットワーク（JNATIP）が提言した人身売買被害者保護のあり方が、政府の行動 計画に盛り込まれた。
人身売買被害者の支援と保護にあたって、この行動計画を実施するためには、公的機関と民間支援機関が連携する体制の確立が不可欠で あるが、現状では個別のばらばらな対応に終わっており、結果として被害者に不必要な負担を強いている。本プロジェクトでは行動計画に基づいた保護の現状 をモニタリングする。
モニタリングを通じて、公的機関と民間支援組織の連携体制を構築する。 人身売買被害者が必要とする支援の内容は現時点では、出国手続きの終了まで入管収容所ではなくシェルターに滞在するという保護にとどまっており、地域社会に根ざした支援活動をしている組織の能力の活用がなされていない。
プロジェクト・メンバーが支援の現場で80年以来活動してきた経験から、再発防止を見据えた裾野の広い保護の内容を明らかにし、そうした保護 と支援を提供する体制を、地域間、さらには国境を越えて実現するために、オルタナティブを提示して関係機関に働きかける。
トヨタ財団地域社会プログラムのページへ1. ページ下部のプルダウンメニューから「2005年度」を選択します。
2.「広域ネットワークの3番目」にJNATIPが載っています。
3.「詳細」ボタンをクリックすると、詳しい内容が表示されます。（少し時間がかかる場合があります。)
2008-01-30-Wed-16:05
【 お問い合わせ 】 お問い合わせフォーム
2008-01-30-Wed-16:03
【 お問い合わせ 】 会員登録
団体登録には会費5000円、個人登録は会費3000円をいただいています。
2008-01-30-Wed-16:02
【 お問い合わせ 】 連絡先
JNATIP（人身売買禁止ネットワーク）事務局
〒110-0015
東京都台東区東上野1-20-6 丸幸（まるこう）ビル3Ｆ
*郵送の際の宛名は「JNATIP」でお願いいたします。
TEL＆FAX： 03-3835-7849
＊尚、取材・問い合わせにつきましては、
０９０−１４３９−６１４９ （事務局：ヤハギへ）
Email: info@jnatip.org
〒110-0015
東京都台東区東上野1-20-6 丸幸（まるこう）ビル3Ｆ
*郵送の際の宛名は「JNATIP」でお願いいたします。
TEL＆FAX： 03-3835-7849
＊尚、取材・問い合わせにつきましては、
０９０−１４３９−６１４９ （事務局：ヤハギへ）
Email: info@jnatip.org
2008-01-30-Wed-16:00
【 加盟団体 】 JNATIP加盟団体（五十音順）
1. I女性会議
2. 会津マスクワイア
3. アジア・ファンデーション日本事務所
4. アジア女性資料センター
5. アジア女性自立プロジェクト
6. アジア女性センター
7. FAHこすもす
8. 社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
9. 移住労働者と連帯する全国ネットワーク
10. ACE(Action against Child Exploitation)
11. （特活）ADP委員会
12. エクパット・ジャパン・関西
13. CAPP 人間の安全保障と搾取的移住労働研究会
14. 京都YWCA・APT
15. くろーばー（外国人DV被害者支援ネットワーク大阪）
16. 国際子ども権利センター
17. 子どもの性と命の教育コミッティ／CESA
18. コングレガシオン・ド・ノートルダム
19. 女性エンパワーメントセンター福岡
20. 女性の家サーラー
21. SWASH(Sex Work and Sexual Health)
22. 世界女性会議 岡山連絡会
23. タイ女性の友
24. てのひら〜人身売買に立ち向かう会
25. 東京YWCA
26. 反差別国際運動日本委員会（IMADR-JC)
27. 北京JAC
28. ポラリスプロジェクト
29. アジアの女性と子どもネットワーク
(2005年12月現在)
(上記は掲載許可を得た団体です）
2. 会津マスクワイア
3. アジア・ファンデーション日本事務所
4. アジア女性資料センター
5. アジア女性自立プロジェクト
6. アジア女性センター
7. FAHこすもす
8. 社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
9. 移住労働者と連帯する全国ネットワーク
10. ACE(Action against Child Exploitation)
11. （特活）ADP委員会
12. エクパット・ジャパン・関西
13. CAPP 人間の安全保障と搾取的移住労働研究会
14. 京都YWCA・APT
15. くろーばー（外国人DV被害者支援ネットワーク大阪）
16. 国際子ども権利センター
17. 子どもの性と命の教育コミッティ／CESA
18. コングレガシオン・ド・ノートルダム
19. 女性エンパワーメントセンター福岡
20. 女性の家サーラー
21. SWASH(Sex Work and Sexual Health)
22. 世界女性会議 岡山連絡会
23. タイ女性の友
24. てのひら〜人身売買に立ち向かう会
25. 東京YWCA
26. 反差別国際運動日本委員会（IMADR-JC)
27. 北京JAC
28. ポラリスプロジェクト
29. アジアの女性と子どもネットワーク
(2005年12月現在)
(上記は掲載許可を得た団体です）
2008-01-01-Tue-09:25
【 設立 】 JNATIP共同代表
大津 恵子
戒能 民江（お茶の水女子大学教員）
吉田 容子（市民共同法律事務所 弁護士）
戒能 民江（お茶の水女子大学教員）
吉田 容子（市民共同法律事務所 弁護士）
2008-01-01-Tue-08:30
【 設立 】 JNATIPの目的・活動
JNATIPの活動目的は、「人身売買を防ぎ、被害を受けた人たちを保護し、被害からの回復を支援する。
そして、人身売買を行った者を処罰する。そのために実効性ある法律を制定すること」です。
この目的を達成するために、
�‘�本における人身売買の被害者調査プロジェクト、
��被害を受けた人たちへの保護支援を含む法律案の提言と立法へ向けてのロビーイング活動、
��人身売買問題への社会的関心を喚起する啓発キャンペーン、を行っています。
そして、人身売買を行った者を処罰する。そのために実効性ある法律を制定すること」です。
この目的を達成するために、
�‘�本における人身売買の被害者調査プロジェクト、
��被害を受けた人たちへの保護支援を含む法律案の提言と立法へ向けてのロビーイング活動、
��人身売買問題への社会的関心を喚起する啓発キャンペーン、を行っています。
2008-01-01-Tue-07:29
【 設立 】 なぜ人身売買被害者保護・支援に関する法制定が必要？
２００３年秋以降、JNATIP設立と同じ頃から人身売買問題がメディアや政府機関の関心事となり、
被害を放置する日本政府に対策を求める海外NGO/GOからの動きも続き、自体は急速に進行しています。
２００４年４月のメディア報道によると、法務省、警察庁、厚生労働省、外務省の局長級による
「人身取引関係省庁連絡会議」が開かれ、「国際組織犯罪防止条約を補完する人身売買議定書」の
早期批准を目指し、組織犯罪に対する処罰などの法改正等の検討を行い、
２００５年通常国会（１月〜）への法案提出を目指すことを確認した、といいます。
加害者処罰は必要ですが、それだけでは人身売買被害はなくなりません。
どのような法制のもとでも、一度生じた被害を完全に回復することは不可能ですから、予防が一番大切な目的となります。
けれども、今すぐに全ての被害を予防することは現実的には困難です。
まずは生じた被害の回復・被害者の保護が急がれる課題となります。
ただ組織犯罪の処罰強化にかたよった法改正にしてはならないと考えます。
人身売買は、国境を越えた犯罪であり、国際社会が協力して根絶する以外に対処の方法がないことは
国際社会の常識となっています。
各国政府は、国際的基準に照らして人身売買の防止と被害者の保護・支援のための法制定を行ってきました。
法制定はヨーロッパ諸国に続き、２０００年にアメリカ、そして同じ時期にタイ、フィリピン、カンボジア、韓国などの
アジア諸国でも行われています。
日本もアジアの隣国と共に法制定を行うことによって
責任をもって人身売買の防止と被害者の保護・支援に関する法制定を行うことが急がれます。
被害を放置する日本政府に対策を求める海外NGO/GOからの動きも続き、自体は急速に進行しています。
２００４年４月のメディア報道によると、法務省、警察庁、厚生労働省、外務省の局長級による
「人身取引関係省庁連絡会議」が開かれ、「国際組織犯罪防止条約を補完する人身売買議定書」の
早期批准を目指し、組織犯罪に対する処罰などの法改正等の検討を行い、
２００５年通常国会（１月〜）への法案提出を目指すことを確認した、といいます。
加害者処罰は必要ですが、それだけでは人身売買被害はなくなりません。
どのような法制のもとでも、一度生じた被害を完全に回復することは不可能ですから、予防が一番大切な目的となります。
けれども、今すぐに全ての被害を予防することは現実的には困難です。
まずは生じた被害の回復・被害者の保護が急がれる課題となります。
ただ組織犯罪の処罰強化にかたよった法改正にしてはならないと考えます。
人身売買は、国境を越えた犯罪であり、国際社会が協力して根絶する以外に対処の方法がないことは
国際社会の常識となっています。
各国政府は、国際的基準に照らして人身売買の防止と被害者の保護・支援のための法制定を行ってきました。
法制定はヨーロッパ諸国に続き、２０００年にアメリカ、そして同じ時期にタイ、フィリピン、カンボジア、韓国などの
アジア諸国でも行われています。
日本もアジアの隣国と共に法制定を行うことによって
責任をもって人身売買の防止と被害者の保護・支援に関する法制定を行うことが急がれます。