看護師のレベルを向上させるには、基礎教育課程の大学化や臨床研修の義務化、准看護師の新規養成の停止などが欠かせない。養成した質の高い看護師の離職防止を図ることも忘れてはならない。
看護師養成の教育年数は、一九五一年以来、半世紀以上も正看護師三年、准看護師二年に据え置かれたままである。ところが医療の高度化に伴い、看護師が学ぶべき専門知識・技術は増え、求められる役割が大きくなっている。
これにこたえるには看護師養成の教育年数の延長が欠かせない。アジアでは既にフィリピンやタイが養成教育をすべて四年制(大学)にしている。
ところが、厚生労働省の「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」の報告書は「質の高い看護師」の養成を掲げながら、看護教育の大学化の主張とともに、反対意見も併記している。はっきりと将来の大学化を目指すべきだ。
新人看護師の臨床能力を向上させることも必要で、それには医師・歯科医師と同様に、卒業後の臨床研修の義務化が欠かせないが、報告書は全く触れていない。
医療の効率性や質を高めるために「チーム医療・役割分担」の推進を強調しているが、それならば、簡単な医療行為は一定の資格を持つ看護師に任せるなど裁量権の拡大にも言及すべきだろう。医師不足を補うことにもなる。
時代にそぐわない准看護師の新規養成の廃止も打ち出すべきだ。
厚労省に求められるのは、目指す看護師の将来像を明確にしたうえ、その実現のための環境整備に計画的に取り組むことだ。
質の高い看護師を養成しても、離職が相次げば元も子もない。
日本看護協会によると、新人看護師に限れば、一割近くが就職後一年以内に離職している。離職理由として、新人の場合には配置先での専門的な知識や技術の不足などがあげられるが、ベテラン看護師では三交代や夜勤、超過勤務など勤務医と同じような厳しい労働条件が指摘されている。
欧米諸国と同様に、短時間正規職員制度などを大幅に取り入れることで、結婚や出産などによる離職を減らすべきだ。
最も効果的な看護師の確保対策は、質の高い看護師を養成し、その離職を防ぐことである。単に養成定員を増やすことではない。
わが国は来月には経済連携協定に基づきインドネシアから看護師候補者を受け入れるが、目先の看護師確保対策にしてはならない。
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