土用に入って一段と暑くなった。夏の土用は立秋(今年は八月七日)前の十八日間をいうが、十九日のこともある。今年もそうだ。
古代中国の陰陽五行説では森羅万象は木、火、金、水と土から成る。前四つをそれぞれ春、夏、秋、冬に当て、土は各季節の終わりに振り分けたとの説が土用の起源として有名だ。だから土用は季節ごとにあるものの、今は通常夏だけに用いられる。
暑さに負けないよう、ウナギやもちを食す。気象エッセイスト倉嶋厚さんの著書「季節さわやか事典」には、中国の内陸部では七月が一番暑いとある。中国にも精をつける食習慣があるのだろうか。
同書によれば、英語で暑さが続く時期をドッグ・デイズ(犬の日々)という。夏は全天で最も明るい恒星シリウスを含む大犬座が昼間の空にあり、太陽を加勢して暑さを強めると考えられたそうだ。
子どものころの夏は、時にやさしさを返してくれたように思う。照りつけた日の暮れ方、急にかき曇った空から大粒の雨。しかし夕立はさっと上がり、東の空に虹が映える。ほっとさせられたものだ。
近年、そんな夏の風情を味わう機会が減ったのではと感じる。ただひたすら暑い。容赦のない夏への変化は人間のせい、温暖化の影響かもしれないと思うと、酷暑に恐ろしさが加わる。