愛知県で発生したバスジャック事件で、逮捕された山口県宇部市の少年(14)が通う中学校の生徒の母親たちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が表れていることがNPO法人「山口カウンセリング協会」の調べで分かった。母親らは車が行き交う音におびえたり、不眠症になるなどの症状を訴えているほか、「我が子とのかかわり方が分からない」などの相談も事件前から倍増しているという。
同協会は宇部市を拠点に活動しているNPO法人で、うつや引きこもり、不登校などに悩む児童・生徒や親たちの心のケアを行っている。電話相談も受け付けているが、1日平均3、4件だった相談件数は16日の事件後、倍増しているという。
同協会の園田俊司理事長によると、17~21日の5日間に29人から相談があり、このうち27人が少年と同じ中学校に我が子を通わせている母親だった。うち5人は「車が行き来する音や救急車のサイレン、扉が閉まる音がするたびに震えが出て止まらない」「夜中に突然目が覚める」などのPTSDとみられる症状を訴えた。「子どもとどうかかわればいいのか分からない」「キレない子にするにはどうすればいいのか」などと尋ねる母親も多かった。
母親以外の2人は少年と同学年の男女生徒で、同じ中学かどうかは分からないが、「車が行き交う音が怖い」「周りに(少年と)同じような生徒がいないか不安」などと話したという。
園田理事長は事件について「両親や学校側が少年の心理・精神状態を見抜けなかったのではないか」と指摘。「再発防止には『よい子』という表の顔に隠された裏の心理・精神状態の把握が不可欠」として、学校単位での心理テストの早期実施を県教委や市教委に近く要請する。【脇山隆俊】
毎日新聞 2008年7月22日 2時30分