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【神奈川】

JIS規格外の生コン使用 確認追われる自治体

2008年7月9日

 横浜市のマンションと藤沢市の事務所の二カ所で八日、JIS(日本工業規格)では認められていない溶融スラグ入り生コンクリートが、JIS製品と偽って使われていたことが発覚した。JIS規格外の生コンを使った建物本体は建築基準法違反となり、建設中の二カ所とも工事の中断を余儀なくされた。納入した藤沢市亀井野の六会(むつあい)コンクリート(小金井弘昭社長)は、この一年間に県内で三百件以上の工事現場に出荷しており、各自治体は“偽装生コン”の確認作業に追われている。 (加藤木信夫、松平徳裕、中山高志、西尾玄司)

■横浜市

 鎌倉市との市境のJR大船駅前で、三井住友建設(本店東京都)が建設するマンション「(仮称)大船駅前計画」をめぐり、規格外の生コンの使用が判明。市は建築基準法違反に当たるとして国土交通省に報告した。

 市まちづくり調整局によると、マンションは三棟で地上六階建て。昨年五月に着工したが、問題発覚を受けて仕上げの段階で工事を中止。七十三戸のうち半数近くは売買契約が済み、十月に引き渡す予定だった。

 コンクリ壁が直径数センチにわたりはがれた個所が約五百カ所あり、溶融スラグ混入の影響とみられる。ただ、市は耐震性に影響はないとみており、今後の対応を国交省と協議して検討する。

 市内にはこのほか、六会コンクリートが納入した溶融スラグ入り生コンを使用した可能性のある建築物が約三十件あり、市が今後調査する。

 三井住友建設広報室は「納入されたコンクリートは当社が承認した配合ではなく、甚だ遺憾。建物の健全性について詳細な調査を実施するよう準備している」とコメントした。

■藤沢市

 藤沢市内では「いすゞ自動車藤沢工場」=同市土棚八=の事務棟新築工事で規格外生コンが使われていた。鉄骨造り九階建ての事務棟工事は、屋根部分にコンクリを流し込む最終段階で中断している。

 国交省の指示で、三日から検査に入った藤沢市建築指導課によると、地下部分のコンクリートが七、八カ所、十円玉ほどの大きさではがれていた。耐震強度に問題はなく、表面をモルタルで再塗装すれば使用可能という。

 同課によると、「建築確認の際などで生コンの組成がJIS規格に基づく形で申請されていれば違反を見抜くことはできない」といい、コンクリの不適切な材料使用までチェックできるシステムになっていないことを強調する。

 同課は今後について「国交省から六会コンクリートがかかわった公共建築物のリストが届きしだい調査し、判明した状況を市民に伝えたい」と話している。

 いすゞ自動車藤沢工場は「コメントする者がいない」とした。

■県

 県によると、六会コンクリートが溶融スラグ入り生コンを出荷した時期は、昨年七月から今年六月まで。県発注工事では、この時期に同社から出荷された生コンを七件で使用していた。このうち、大仏トンネル(鎌倉市長谷)の壁の吹き付けと、船揚げ場のスロープ(藤沢市江の島一)の二件について、県職員が目視で確認したが、はく離などの異常は認められなかった。

 七件とも、建築基準法に該当しない土木構造物。県発注の土木工事では、JIS規格に該当しない生コンを使う場合、現場に立ち会う県職員の確認を得る必要があるが、いずれも確認はなかった。

 今後、県発注の七件と、県所管区域内にある民間の造成工事二件で使われた生コンについて、溶融スラグが含まれているかを、二−三週間かけて調べる。

 

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