現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 社会
  4. その他・話題
  5. 記事

ルポにっぽん 下請けドライバー、車中泊連続2週間(1/3ページ)

2008年7月21日3時1分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真倉庫に到着後、翌朝の荷下ろしまで精神安定剤を飲んで車内で仮眠した=千葉県内、金成写す

地図

 真夜中の中国道を、熊本ナンバーの大型冷凍車が西へ急ぐ。カーブが続き、バックミラーに下げたお守りが激しく揺れる。

 午前0時10分、運転手の40歳代の男性は、岡山県のパーキングエリアに寄った。3分100円のシャワーを浴びるためだ。運転中、ずっと目が充血していた。

 前日の朝6時から働きっぱなし。福岡から千葉へ運んだ5千箱計15万本のアイスキャンディーを1人で下ろした後、埼玉で冷凍食品3千箱を積んで夕方に出発。それからずっとハンドルを握っている。

 「最後に家に帰ったとは……、記憶になかねえ」。シャワーから戻り、苦笑した。数えてみると熊本の自宅を出て13日目、ずっと車中泊だ。

 暗い一本道をヘッドライトが照らす。運転席の後ろから前方を見つめていると、眠気に襲われる。

 男性の携帯電話が鳴った。仲間の運転手からだ。「帰りの荷物が見つからない」「社長がケチって下道(したみち)を走らされた」。愚痴をこぼし合う。

 男性の車は「傭車(ようしゃ)」と呼ばれる。季節で物流量は大きく変わり、運送会社は運べない荷物を同業者に流す。車両が足りないと、2次下請けに回り、これが4次、5次……と続く。もっぱら、これら下請け荷物を運ぶのが傭車だ。

 男性は前日に勤務先からの携帯連絡で、仕事の有無と積み荷を初めて知る。九州から東京、大阪へ主に魚や野菜など生鮮食料品を積み、帰りは家具や電化製品、雑誌など何でも運ぶ。まさに「物流の調整弁」、仕事の決まり方は日雇い派遣のようだ。

 午前2時、広島県内を走行中に突然蛇行し、車体がきしんだ。男性がしきりに目をしばたかせる。最寄りのサービスエリアに入り、運転席後部の1畳ほどのスペースに倒れ込んだ。「運転中の記憶がない。危なかった。寝るわ、1時間だけ」。すぐに寝息をたてた。車内で12泊目だ。

前ページ

  1. 1
  2. 2
  3. 3

次ページ

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内