「アメリカの裏庭」と言われた中南米、ラテンアメリカでいま続々と左派政権が誕生し、アメリカが主導する南北アメリカの政治・経済の統合にノーを突きつけ始めた。
アメリカはこれまで軍事力でラテンアメリカの政権を転覆し、IMF(世界通貨基金)や世界銀行などを通じて経済の構造改革を求めてきた。しかし、そうしたアメリカの対策が、独裁政権を生みだし、貧困と格差をもたらしたことに民衆が目覚め、当のアメリカに対して異議申し立てを始めたのである。
ベネズエラのチャベス大統領は石油の莫大な収入を背景に社会主義革命を進め、ブラジルのルラ大統領はサトウキビから石油の代替エネルギー・エタノールを生産し、貧困の撲滅をめざし、チリ初の女性大統領バチェレはピノチェト軍事政権下の負の遺産から脱却し、「成長と平等」を実現しようとしている。
新しいリーダーたちは互いに連携しながら、発展めざましい中国・インド・EUなどと急接近し、21世紀の「潮流」の担い手として表舞台にせり上がってきた。こうした動きに警戒感を強めるアメリカは、ラテンアメリカをイラク後の不安定地域と位置づけ、その対策に本腰を入れはじめた。共存か衝突か、いま世界の熱い視線がラテンアメリカに注がれている。
≫第2回「格差からの脱出 〜ブラジル・チリ〜」