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【社説】

日雇い派遣禁止 『非正規』削減に弾みを

2008年7月21日

 「究極の使い捨て労働」と批判の強い日雇い派遣労働者を原則禁止する方針が固まった。政府は労働者派遣法改正案を秋の臨時国会に提出する。これを機に非正規労働者の削減に弾みをつけたい。

 低賃金と割高な手数料、契約と違う職場派遣など日雇い派遣労働者はひどい扱いを受けてきた。グッドウィルやフルキャストなどの違法行為をきっかけにようやく是正対策が動きだす。原則禁止は当然である。

 自民・公明両党が舛添要一厚生労働相へ提出した労働者派遣法改正の基本方針は(1)一部業務を除き日雇い派遣を原則禁止する(2)派遣会社が受け取る手数料(マージン)の開示を義務付ける(3)グループ企業内への「専ら派遣」は規制を強化する−などが柱である。

 一部業務とは通訳や翻訳、添乗、ソフトウエア開発など専門性の高い仕事を指す。現在も二十六の専門業務がある。限定する際にはあらためて精査すべきだろう。

 また非公開だった手数料の公開は派遣会社による多額のピンハネ防止が狙いだ。派遣労働者にとっては契約の透明化がはかれる。

 「専ら派遣」規制は意図的な正社員減らしに歯止めをかけることが目的だ。正社員を含めた全体の労働条件の低下防止に役立つ。

 厚労省は今月末に労働政策審議会を開き派遣法の改正案づくりに取り掛かる。舛添厚労相は「日雇い派遣は厳しく規制すべきだ」と発言しているから与党方針に沿った内容になろう。野党・労働側も真剣に対応してもらいたい。

 派遣業界や産業界の一部からは「日雇い派遣は企業・労働者双方にニーズがあり、原則禁止は影響が大きい」と反対するが、本当にそうなのかは大いに疑問だ。

 第一に、日雇い派遣労働者は一時五万人を超えていたが大手の廃業などで現在では半減している。仕事探しはハローワークや民間職業紹介会社などで行えば済む。

 また産業界でも引っ越し会社や流通企業などは直接雇用に切り替え始めている。法律施行までに準備すれば混乱しないはずだ。

 日雇い派遣の原則禁止は労働規制の緩和政策を転換するものだ。遅すぎたが政府の姿勢は妥当である。

 非正規労働者の急増は所得や結婚、教育などさまざまな分野で格差を広げた。少子化対策や持続的成長の困難さなどの課題も浮き彫りにした。今は労働者保護に立ち返る時期だ。これ以上、労働者の使い捨てを許してはならない。

 

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