トヨタ自動車が北米での生産を小型車シフトに再編すると発表した。米ビッグスリーも大型車が売れず苦戦している。景気減速の中でガソリン高に耐えるためにも自動車業界は体質改善が必要だ。
トヨタ自動車の北米での大型車生産の下方修正と車種再編は、燃料高騰と地球温暖化対策という世界の流れに沿った判断であり、むしろ遅すぎたくらいである。
一リットル=百八十円を超すガソリン価格の高騰で世界中のドライバーが悲鳴を上げている。特にガソリン消費量の多い大型車中心の北米ではさらに深刻だ。低所得者向けのサブプライムローン問題で金融機関や住宅金融公社が経営不安に陥っている。
低所得者層は自分の住宅さえ追われている状態で、自動車の買い替えどころではなくなっている。米国景気の長期低迷は必至だ。
このため米国の大手自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーの三社(ビッグスリー)の経営は苦戦を強いられている。GMは人件費削減に加え、大型車生産の四工場を閉鎖し、中小型車の増産に切り替えている。フォード、クライスラーもさらに大掛かりなリストラに迫られている。
トヨタは北米でピックアップトラックや多目的スポーツ車など大型車の増産でシェア拡大を目指していたが、売れ行きの悪化で方向転換せざるを得なくなった。
今後は燃費効率がよく、人気のあるハイブリッド車プリウスや、カローラ、カムリなどの中小型車に生産をシフトする。日産自動車も同様の再編は避けられない。
当初から小型車中心の生産体制をとってきたホンダは、従来通りの計画を進めていくもようだ。
環境対策で先行する欧州では二〇一二年までに、一キロ走行当たりの二酸化炭素排出量を平均百三十グラム以下に抑える規制を計画している。これは現在のプリウスで何とか合格できる厳しい水準である。
北海道洞爺湖サミットで二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量半減の方向が出たので、世界のどの国も車の排ガス規制をさらに強化していくことは間違いない。
世界の各自動車メーカーも低燃費、低公害、低価格を実現するためクリーンなエコ小型車の開発競争に躍起となっている。インドのタタ自動車が価格二十八万円の小型車を発表して話題になった。
世界はいよいよ小型自動車時代に突入していくと思われる。
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