世界の自由貿易の新たな枠組みを作る多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の大筋合意を目指し、世界貿易機関(WTO)が21日から閣僚会合を開く。日本は農産物市場の保護ばかりを主張する逃げ腰の姿勢を取ってはならない。
閣僚会合は難航が予想される。各国の利害対立が解ける見通しは立っていない。決着の可能性は五分五分である。日本政府・与党は「悪い合意ならしない方がいい」(自民党幹部)との消極的な立場だ。
日本にとって「悪い合意」とは何か。改めて考える必要がある。農産物市場の開放が「悪い」という意味ならば、それは誤りだ。農業分野の輸入品に課す高率関税のために日本国内の食品価格は、世界的に高い。消費者の立場から見れば、高率関税を貫く現状の政策を続ける方が「悪い」ともいえる。
日本を含めて先進国の農業保護の削減は、避けられない流れだ。むしろ合意を前提に、日本は国内農業の生産性を高める改革を進めるべきである。世界各国との厳しい交渉を、構造改革の好機と考えたい。
日本政府は、すべての農産物の関税を一定水準以下に一律に削減する「上限関税」の導入に反対し、関税削減の例外となる「重要品目」の数を増やす方針で交渉に臨む。だが、これらの目標が達成できなければ決裂もやむなしという交渉姿勢は、日本の国民全体の利益に反する。
農業改革は、昨年の参院選で与党が大敗するまで、それなりに前進していた。民主党がバラマキとも呼べる農業補助金の制度を掲げて選挙戦で勝利した結果、政府・与党内の改革のエネルギーは大きく衰えてしまった。だが企業の農業への参入や農地利用をめぐる規制緩和など、取り組むべき課題は山積している。
今回、新ラウンドの大筋合意ができなければ、交渉は来年以降にもつれ込む。米国の政権交代で、貿易保護主義の色彩が濃い民主党政権が誕生すると、合意は一段と難しくなる。
実質国内総生産(GDP)でみた世界経済に占める貿易の比率は2006年時点で約25%。経済のグローバル化で、世界の貿易額は5年間で2倍に拡大した。世界の経済成長をけん引する貿易の勢いを、ここで止めてはならない。金融分野が不安定な今こそ、実体経済の屋台骨を支える自由貿易体制を強化すべきだ。
待ったなしの閣僚会合である。大筋合意を導くのは、交渉の中心にいる米国や欧州連合(EU)、ブラジルだけの仕事ではない。貿易の恩恵を被っている日本の責任も重い。