第1日目 3月8日(土曜) 成田エアポートの搭乗ラウンジからふと滑走路を見るとやがて消えて行く運命のJALの鶴のマークが見えた。その向こうには雪を被った富士の姿がくっきりと こんなに遠くから見えるなんて。とっても幸先がいいのだ。
 1月の終わりの頃、バーダーに紹介されていた『ロタ島の野鳥たち』とその記事を書いた
『小島さんと行くロタ島の探鳥ツアー』に申し込もうと阪急旅行へ電話をしたらキャンセル3人待ちですっかり忘れて 小笠原への日程を調整していたところ参加OK!の連絡が来たのであった。
 
“ロタ島”・・・・なにか 落語の与太郎を思わせるいい響きじゃございませんか?都会で疲れたこの心を癒しに参りましょ。(本当に疲れているかどうかはまあこの際気にしない!気にしない!)
 成田で今回の参加者他に8人と顔を合わせて(恐ろしい事に函館からの女性参加者が2名いるのだ。さらに恐ろしい事にワシが最年少者なのであった。) まあともかく ノースウェスト航空でロタへレッツゴー!なのだ。
 およそ3時間半のフライトでサイパン国際空港へ到着。
ロタを含むここは
“北マリアナ連邦”に属していてサイパンはその中心的な島なのであった。 アメリカ合衆国の委任統治のような形になっていて入国はU.S.Immigrationの管轄でちょっとドキッとしたけど何事もなく簡単に通過してしまった。
 不思議なのは日暮里でスカイライナーに乗った辺りから頭の中の英語の部分が少しづつ目ざめ初めてイミグレイション通過の辺りではかなり活発に働き始めてきたのだった。英語を話さない生活が長くなっていたので少し心配だったのにちょっと安心。
 ここで関西空港から参加の2名と合流して
小島さんを含めて総勢12名右上のアニメのように“苺一絵”なのである。(エッ! 字が違う?・・・・・・。)
 サイパンはともかく暑かった。蒸し風呂そのままなのだ。何しろ空港前の椰子の木にメジロのような鳥を見つけて双眼鏡を取り出したら アッと言う間に曇ってしまってしばらくまったく使い物にならなかったほどなのだ。
 
↑の 小型(30人乗り、ハコフグのような形)のプロペラ機に乗り換えてさらにロタ島を目指す我々であった。
 サイパン〜ロタへ ワタクシが御幼少の頃に読んだ“紫電改のタカ”や“ゼロ戦ハヤト”の主な舞台はこの辺りではなかったのだろうか? 雲の合間に見える島々を見ながらいやでも心の琴線に触れてくるものがある。 広島・長崎に原爆を投下したB−29(エノラゲイ号)が離陸した島が今真下に見えるテニアン島であったりもする。
 この辺りの制空権を握ったアメリカ軍はその後 硫黄島を艦砲射撃で島の形までを変えてさらに小笠原諸島を通って本土空襲、別のルートは沖縄の悲劇・神風特攻隊へと繋がっていくワケである。
 そんなスペイン時代からの歴史を秘めていながら
眼下の島々・太平洋は午後の陽射しをいっぱいに受けてキラキラと輝いているのです。
 そんなことが頭の中を巡りながらの30分のフライトでアッサリ ロタ空港に到着。
迎えに来てくれていた車に乗り込んで
“ココナッツ・ヴィレッジ ホテル”で荷を解きます。狭い道を挟んで海に近いコテージ風の素敵なホテルなのだ。海には近いけどそこには短いながらも南国のブッシュが横たわっているので直接海に出るのは大変そうである。
 部屋は2人部屋で1棟に2部屋なのだ。ワシと同宿はOぎ原さん。悠々自適、退職してから野鳥写真に目ざめられたそうで キャノンの大砲レンズにジッツォの頑丈な三脚で臨んでいる。恐るべしなのだ。お隣さんは函館のお嬢さんたち。こちらも遠くからの参加でリキが入っているのだ。
 本日の所は食事をして自由に、ホテルの周りには
“カラスモドキ(本名)”が飛び回り狙ってはみるものの椰子の木の上の方に留まっていて上手くいかない。夕暮れに連れてドンドン蚊が増えてくる。
 ← ホテルの前で見た太平洋に沈む夕陽。
 支配人の稲葉さんは日本人、日本語のHPにも星のページを載せていて夕食の後天体望遠鏡をのぞかせてもらった。 母島ではやっと見えることもあると言う“カノーブス”がここではバッチリ! “ニセ十字”と呼ばれる星座も昇ったけど十字星はまだ後で見られなかった。 その代わりと言うか望遠鏡で木星や土星の輪、スバルも美しく見られた。
 TVにもラジオにも電話にも煩わされる事もなく(だって無いんだもん・・・。) 
潮騒の音を聞きながら日本向けにハガキを書き 静かにまどろんで行くのだ。
 
ここで簡単に“ロタ島”の説明をしちゃいましょ。
 北緯14度辺り 北極星も南十字星も見えると言うところ。 人口は3500人ぐらいで ネイティブはチャモロ人、その他フィリピンからの人たちも多く日本人ももちろんいる。 観光で訪れるのは日本人の割合は相当なもんだと(80%以上)みた。
 島は四国の右側を右手で掴んでちょっと引っ張り上に斜めに置いた感じ。
大きさは山手線の内側とほぼ同じと言うことらしい。ついでに言うと 山手線に京浜東北線の大井町を延長した感じ。 島一番の繁華街・ソンソン村は品川駅の辺り、空港は護国寺から千石の辺り、ココナッツヴィレッジは新宿辺りだと言ったら分かるでしょうか?(極めて 東京の人限定です。)

 第二日目
 朝、爽やかな目覚め 6時に起きて6時30分集合。
バーダーの朝は早い。(とは言っても軟弱カメラマンを自負する私、鳥見と言っても大体朝は遅いのだ。)
 2台に分乗してまずは
“サガガガ・バードサンクチュアリ”を目指すのだ。 位置はと言うと新宿から護国寺経由、田端の辺りなのです。
 途中の牧場には牛は遊び、その周りには移入種ながら比較的原種に近いタイプの
ニワトリが走りまわっているのだ。
 道すがらよく見かけるのは カラスモドキ・オウチュウ(移入種)この2種は黒いが目立つほど多い。特に
カラスモドキはかなり多くの鳴き声を出してうるさい時もあるけど惚れ惚れするほど美しく鳴くこともある。

 サンクチュアリに車を停めて ナンヨウショウビンの鳴く木立を抜けると突然前方が空になり足元に狭い階段が始まった。 手摺の向こうは空と海、その手前目の下にジャングルが広がっているのだ。
 その木々のテッペンや枝の上に点々とかなりの数の白い鳥が見える。ここの主役、アカアシカツオドリなのだ。 『まだヒナはいないでしょうかね?』とは後ろにいた稲葉支配人。 『ヒナ 見〜〜っけ!』 ワシがヒナ発見者になりました。 
実は12月の巨大台風(最大風速70〜80mだったらしい)でヒナや卵は巣もろとも落下、全滅してしまったのだそうであった。
 ↑ 見下ろすように見えるアカアシカツオドリの営巣、右にヒナが見える。
 もう一方の主役、クロアジサシ。
左手の崖に営巣しているように見える。が崖を真横から見るポジションに位置するし距離もかなりある(70〜100m以上)ので巣の状態や卵・ヒナなどがあるのかどうかは分からないのだ。
 さらに朝は太陽が正面から高度を上げて行くので撮影は厳しい。

← 崖から飛び立つクロアジサシ 顔をアップをアップしてみましたキツイ顔なのだ。 ⇒
 そうこうしていると『オオグンカンですよ〜〜!』と小島さんの声。
 ひときわ巨大な黒い鳥がドンドン近づいて来る。
 1羽が通過するとかたまって来ることが多くなった。
最初はかなり上空のオオグンカンを撮っていたけど・・・。

↑頭の真上数mをかすめて行くオオグンカンドリ
 さらにさらに 小島さんの声は続くのだ。『アカオネッタイチョウですよ〜〜〜!』『シラオネッタイチョウですよ〜〜〜!』『こりゃまた シロアジサシが左から来ますよ〜〜〜!』『下の方にカツオドリが飛んでいますね〜〜〜!』『海岸近くにクロサギが逆立ちして歩いていますね〜〜〜!』と中々忙しいのである。
その度に まったくはじめて見る鳥たちに『オオウォ〜〜ッ!』とか『キャ〜〜ッ!』とか『ウ〜 キャキャッキャ〜!』とか歓声が上がったりするのである。(最後の歓声はナンヨウショウビンの鳴き声でした。)
 ここサガガガ・サンクチュアリは崖にへばりつくように観察路が150mほど降りていて高低差は20mぐらい各自好きな所に陣取って観察したり写真を撮ったりしているのだ。
 『アッ クバリ−ガラスだ!』上の方から稲葉さんの声、下の方にいた我々もはるか彼方の2羽をスコープで観察できたのだ。小島さんにしてこんなにノンビリ観察できたのは初めてですと言うほどなのだ。
 クバリーガラスは“絶滅危惧種にして保護鳥”姿を見ることもままならない。ロタとグァムにしかいない希少種。

 ↑ 台風の後などに稀に日本にも現れることがあるアカオネッタイチョウ。
尾が赤いからこの名前があるはずなのにこの個体は尾が白く見えるのだ。








←エ〜〜イこれでもかのオオグンカンドリ
ただしこの個体は成長♂、ノドに繁殖期の名残の赤い部分が見える。♂は今回この1回だけ。
 ↑は参考画像、’02年“多摩湖”に現れた コグンカンドリ
 飛んでいる鳥は難しい、さらに逆光がそれに輪をかけ しかも背景が崖になるのか森になるのか空になるのかはたまた海か?それによって・・・・。いやいや泣き言は言うまい・・・。
とは言っても 我々大いに満足しつつ ホテルに戻り美味しくブレークファストなんぞをいただいてしまうのである。
 ン? きのうはいなかった若い娘っ子が3名、それに若い男、それだけなら別にどうってこともないのだけど・・・。ビビビッと来るものがあったのだ。
思った通り数時間後、我々のコテージの前のベランダに大型ライトと反射板が置いてある。それが室内に向かって光線を発している。 ムムッ ヤッパリ!
 しかしワシもナチュラリストの端くれ、全然羨ましくなんかないもんね!
鳥見をパスしてこっちの撮影に紛れ込んじゃおうかな〜なんてまったく一度も思わなかったもんね!
(スイマセン ワタクシ嘘をついてしまいました。) だってベランダに水着なんかが干してあるんだもの・・・。

 さぁ お昼の探鳥もがんばりましょう!
 今度はココナッツヴィレッジから海岸沿いに車と歩きで鳥を探します。
御馴染みになった山手線でいくと・・・新宿から池袋を目指すのだった。。
 いきなり
ミクロネシアミツスイが現れた。真っ赤な体を翻して長い時間ではなかったけどこれぞ南の島の鳥、やはり見られた人からは歓声が上がる。

 ← ナンヨウショウビンの親子、真ん中の幼鳥がバッタのようなエサをもらって嬉しそう。だけど両脇の2羽がどう言う関係なのかは不明。
 さらに進んで他の人たちはオウギビタキを見るがワシはダメだった。
そして小さな美しい海岸に出た。柔らかい青い水をたたえたまるで人工的なプールのような所なのだ。ここがスウィミング・ホールと言う場所だと思うのだけどよく分からない。
 ここでは
ミツスイ・コバシヒメアオバト・クロサギ・ムナグロなどと逢った。
 少し昼寝をして午後の探鳥もがんばっちゃうもんね!
  午後は朝の光線の難しさを考慮しまして 再度サンクチュアリに挑戦しましょう。  こちらは南国特有の突然のスコールがあるから大変なのだ!
 ← サンクチュアリへの道すがら出逢ったシロアジサシともかく目が可愛い!
 突然 目の前(2m)の柵に飛び上がってきたナンヨウショウビン 近すぎて誰も撮れない。

シラオネッタイチョウ
アカオネッタイチョウに比べたらかなりスマート
背面のストライプがオッシャレー!

思いもかけずに飛んでる姿をGETしちゃった
マリアナオオコオモリ(ファニヒ)
食用になるせいもあって数が減った。
 さあ 今夜も美味しく夕食を食べましょ。
昨夜のニューヨークステーキが美味しかったので今日も期待して“ショートリブ・チャモロ風”をオーダーしました。
ちょっと不思議な甘酸っぱいソースででもそんなにしつこくなく美味かった。
 稲葉さんが隣に来て野鳥や島の自然の話、戦争の傷跡や台風の話をしたのでワインもガンガン進んでしまった。
 今夜も潮騒の音をBGMにカノーブスに見守られて眠りの世界に引きずり込まれてゆく私であった。
 浮間ヶ池にカモたちが1羽もいなくなっている夢を見た。
ロタ島レポート 2へつづくのだ!