◎原油相場急落 背景に投機資金規制の動き
原油先物相場が急落し、一バレル=一三〇ドルを割り込んで一カ月半ぶりの安値を付け
た。市場関係者は米国の原油在庫が増えたことで需給ひっ迫懸念が遠のいたと説明しているが、そんな目先のことより米議会に投機資金を規制する複数の法案が提出された影響が大きいのではないか。原油高のダメージがこれほど大きくなってくると、石油資本の支持を受けるブッシュ大統領も拒否権は発動しにくいだろう。福田康夫首相は規制法案の成立に向け、米国への働き掛けを強めてほしい。
北海道洞爺湖サミットで、G8各国は石油市場に流れ込む投機資金の監視強化に合意し
た。米英両国は価格決定は市場原理に任せるべきという考え方が根強いが、現行の原油先物市場で正常な市場メカニズムが働いているとは考えにくい。ヘッジファンドや年金資金が原油先物市場で運用している資金は、一説には取引額全体の七割に達し、一バレルあたりでは七〇ドル分にもなるという。投機資金が原油価格を異常な高値に押し上げている疑いは否定できないのである。
ニューヨーク原油先物相場の下落はこれで四日連続となり、下落幅は四日間で一七ドル
前後に達した。米議会が投機資金の規制に動き出し、米当局が相場操縦に対する監視を強めたことが大きく影響しているからだろう。
原油の高騰で、実需も減っている。ガソリン価格の高さに悲鳴を上げ、北陸でも遠出を
控えたり、なるべく車に乗らないようにする人が増えている。東京や大阪などでは、幹線道路の渋滞や駐車場不足が解消したという話を聞く。原油高は、原発や太陽光、風力発電などの設備投資を促し、海底油田やオイルサンドの開発を促進する効果もあるが、短期的には経済活動を縮小させ、景気に悪影響を及ぼす。特に途上国の経済を疲弊させ、深刻な社会不安をもたらしてもいる。生産性の向上や技術開発といった努力もなしに、産油国だけが一方的に潤う構図はいびつというほかない。
原油や穀物などの市場で実需とはまったく無関係の異常な取り引きを規制し、商品価格
を落ち着かせる必要がある。
◎学生の地域貢献 軌道に乗った石川の試み
「石の上にも三年」ということわざがある。今年度が発足後三年目になる「大学コンソ
ーシアム石川」が軌道に乗り始めた。コンソーシアムは「協会」を意味し、その名の通り、県内の高等教育機関(大学、短大、高専)が連携して教育交流、高等教育の充実や発展、地域社会の学術、文化、産業の進展に一緒に寄与しようとする組織である。
学生の地域貢献や課題研究、あるいは単位の互換などを行っているが、そのうちの地域
貢献では、地域への奉仕を兼ねた勉学が積極的に展開されており、地域との固いきずなも形成されてきた。
先ごろ、県と同コンソーシアムは今年度の地域貢献型学生プロジェクト事業のモデル事
例として十件(継続四件、新規六件)を採択したが、継続事業では能登半島地震で被災した穴水町の旧家の土蔵から発見された古文書などの歴史資料を調査・整理し、散逸を防ぐ金沢学院大の取り組みや、金沢工大の白山市における「古民家再生による地域おこし」などがある。
新規の事業としては、国指定重要無形民俗文化財である七尾市中島町の秋祭り「お熊甲
(くまかぶと)」をはじめとして地域の伝統行事を応援する県立大の「あぐり学生援農隊」がある。お熊甲のフィナーレでは高さ二十メートル以上もある真紅の枠旗を、祭りに参加した各地が地上すれすれに倒すことを競い合う。祭りを支える若者不足で困っている地域への貢献である。
金城短大の「白山の魅力発見・創造チーム」による白山市白峰地区の「おろしうどん」
のイメージアップもある。おろしうどんは、東北の郷土料理「わんこそば」に似たもので、学生たちがどのようなアイデアをひねり出すか見ものだ。
このほか、金大が加賀市で試みる「地域に即した国際交流・多文化共生のプランニング
提案」や、金沢星稜大による珠洲市での体験型民宿を通して学生の視点から提案する「地域資源の発信」などもある。
学生たちが地域を応援し、同時に地域から伝統を学ぶという双方向性を持った活動とし
て大学コンソーシアムを育てていきたい。