騒音や安全に配慮し、外に音が漏れないよう実験を重ねた結果、ハンドル付近にスピーカーを取り付けたホンダの「フォルツァ」=ホンダ提供
ホンダのビッグスクーター「フォルツァ」=ホンダ提供
オートバイにオーディオを取り付け、音楽を流しながら街を軽快に走る人たちが増えている。車体を改造して車のスピーカーなどを取り付ける人が多かったが、人気ぶりに製造段階から装着するバイクメーカーもある。一方で、大音量で走るマナー違反が目立ち始め、危険だからと道交法の関連規定を改正するなどして規制する動きも出ている。
人気のきっかけは、通称「ビッグスクーター」と呼ばれるオートマチック(AT)二輪の大流行だ。250cc以下なら車検が不要といった利点で、02年ごろから若者に人気が出た。05年6月のオートバイのAT車限定免許導入も追い風になり、年間販売・出荷台数は01年の1万2千台から05年には6万1千台まで急増した。
業界関係者によると、座席下などの収納スペースが大きいため、音楽プレーヤーを入れやすく、車検がないので改造してスピーカーを取り付ける人が相次いだ。当初はカーオーディオの転用がほとんどだったが、人気に目を付けたバイク部品製造会社などが専用品を売り出した。
一方で、市街地や住宅街で深夜に大音響を流しながら走るケースも目立ち始めた。バイク雑誌「トランスクーター」(東京都)の編集部によると「3年ほど前からうるさいと問題視され始めた。二輪愛好家のなかでも批判がある」と指摘する。
メーカー側も騒音問題に配慮し、3月からバイクの製造段階での取り付けを始めたホンダは、減速時は音量が自動的に下がったり、周囲に音が広がりにくいハンドル付近にスピーカーを付けるなどの工夫をしている。ヤマハの子会社も速度が下がると音量が下がる商品を発売した。
警察庁によると、従来の道交法でも、周囲の交通や他人に危害を及ぼすような運転をすれば「安全運転義務違反」に問えるが、音楽の音量で危害を及ぼしているかどうかの判断が難しく、適用例は少ないという。滋賀県や高知県は、県道交法施行細則でラジオなどを大音量で聞きながら運転してはならないと定めているが、同様の規定がない地域も多い。
兵庫県では7月から同様に細則を改正し、オートバイ、車、自転車などの運転時に、安全運転に必要な音声を聞き取ることが難しい音量で音楽を聴くことを禁じた。「警察官の呼びかけに無反応」「クラクションが聞こえない」といったケースに適用し、5万円以下の罰金を科す。
県警交通企画課は「大音量で音楽を聴きながら運転するのは本人と周囲にとって危ないと判断した」としている。(野上英文)