2005年03月20日

【書籍】紫電改の六機/碇 義朗

【本】紫電改の六機昭和54年(1979)7月14日、愛媛県城辺町の湾から、一機の完全な形を残した紫電改が引き上げられました・・・。三十三年ぶりに引き上げられた、この紫電改(写真参照)は、どこの部隊で、誰の搭乗機なのか?全てはそこから始まる・・・。大東亜戦争のランク順位
紫電改の六機―若き撃墜王と列機の生涯

【文庫版】紫電改の六機―若き撃墜王と列機の生涯

本土防空を任務とする紫電改部隊として名高い、第三四三海軍航空隊の伝記です。終戦間際の昭和20年7月24日、敵機約200機を邀撃した戦いで、同航空隊は勝利を勝ち得たが、戦闘七○一飛行隊長の鴛淵孝大尉(戦死後少佐)や、空の宮本武蔵の異名を持つ一騎当千の搭乗員、武藤金義少尉(戦死後中尉)など、六機が未帰還となった。武藤金義少尉を軸に、この激烈なる戦いで未帰還となるまでの、六名の歩んだ人生や人となりが記されており、実に興味深い内容であった。

この本を書き上げるのには、おそらく膨大な資料を参照し、大勢の方にインタビューしたことは想像に難くない。各個人の人格、技量、戦闘記録など、細部に渡って記述されており、読者を唸らせる。また文章も初心者にも読みやすく、読む者に感動を与えるものでした。文才のない私にとっては、真に素晴らしいの一言に尽きます。

内容は詳細を極め、伝記の域を超えて戦闘記録資料としても貴重である。

武藤少尉はこの六名の中で唯一の妻帯者である。奥様へ宛てた手紙も多数紹介されているが、その優しい心根が伝わり、涙せずにはいられない。

また、海兵出身でありながらも下士官、兵へ愛情を注いだ飛行隊長、鴛淵大尉の人格、技量の素晴らしさに感動した。下士官、兵に愛されたのには、彼自身の人間性もさることながら、おそらく台南空時代、海兵1期先輩で「ラバウルのリヒトホーヘン」こと笹井醇一中尉の影響も少なからず受けているのではないかと思う。空戦の技量に関しても台南空で坂井三郎氏に薫陶を受けており、折り紙つきだ。言わば台南空が育てた指揮官といえるだろう。同期生で同じ台南空に所属していた大野竹好中尉も彼のような優れた飛行隊長に育ったのではと悔やまれる。

六人の少年時代から、海軍入隊、実施部隊での活躍などを描きながら、刻々とXデー(昭和20年7月24日)に近づいてゆく・・・。いつまでも最終章に到達しないで欲しいと願わずにはいられなかった・・・。

Xデーを向かえて、この六人が未帰還となってしまうわけだが、不思議な事に全員消息不明で誰も最後を見届けていないのである。そして33年後に奇跡的に発見され、無言で姿を現した紫電改・・・。これはもうドラマである。

いったい誰の乗機なのか・・・。

本書は本当にお薦めの一冊です。是非読んで下さい。

【光人社NF文庫 N−283】
【おすすめ度 ★★★★★】


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昭和54年(1979)7月14日、愛媛県城辺町の湾から、引き上げられる紫電改。
33年間もの眠りから覚めた紫電改・・・完全な形を残していますね。
写真を見ているだけで、興奮してしまいました。

引き上げられる紫電改

Posted by nakataka829 at 00:34 │Comments(10)
この記事へのトラックバック
これも貴重な手記です。 宮崎勇氏と言えば、紫電改・剣部隊で有名な三四三空の搭乗員として活躍された方です。三四三空と言えば、大戦末期に源田大佐が司令を務めた最後の精鋭部隊として有名ですよね。3飛行隊の隊長を務めた人もそれぞれ名の通った人で、戦闘三〇一(新撰組
【書籍】還って来た紫電改/宮崎 勇  光人社【REAL LIFE】at 2005年04月17日 14:45
この記事へのコメント
こんにちは、いつも拝見しております。

すばらしいレビュー記事で、本書を読む前にウルウルしかかっています(~_~;)。
この本の購入の際にはこちら経由で購入させていただきます。
Posted by めんぼう at 2005年03月20日 13:11
めんぼうさん、はじめまして。
うれしいコメントありがとうございます。このような励ましを頂きますと本当にうれしいものですね。これからもレビューを続けたいと思え、元気になりました。頑張ります。今後ともよろしくお願い致します。
Posted by Panic > めんぼうさん at 2005年03月20日 14:10
こんばんは〜。またまたコメント書きます。
ほんと、良く書けた記事を毎回毎回大したものです。
私のような簡単な紹介とは雲泥の差がありますよ、ホント。
碇義朗さんの本も、毎度よく調べた内容で素晴らしいと思います。
さて、この紫電改の引き上げの写真ですが、
拙ブログで取り上げた「日本軍用機集・海軍編」では、
映像として見る事ができます。(知っていたら失礼!)
もしも興味あったら、ご覧になってみてください。
Posted by REALLIFE at 2005年03月20日 23:59
コメントありがとうございます。一応メインコンテンツである書籍紹介でコメント頂けると本当にうれしいです。最近書籍の紹介が長文になりがちなので、読んでもらえないのではを心配しています。記事を書いているうちに感情が盛り上がり、あれも伝えなきゃ、こんなエピソードも紹介したいなどと、ついダラダラと書いてしまって申し訳ないです。悩みは、ブログ記事を1件書くのに、本も読破してから、紹介文を書くので、時間がかかり、なかなか更新出来ない事ですねぇ。ついつい模型カテゴリに頼りがちになってしまいます(笑)

紫電改の件、情報ありがとうございました!もちろん知りませんでした。是非見たいですね〜。でもコレッてVHSですね。DVDで欲しいなぁ。発売されているのか探ってみます。
Posted by Panic > REALLIFEさん at 2005年03月21日 08:37
はじめまして。時々拝見させていただいています。
私は、この時代の事はあまり良く知りませんでしたが、当ブログを拝見する様になってから、とても詳しく、わかりやすく書かれていますのでこの時代のことをもっと知りたくなってきました。
この紫電改の写真も凄いですね。この本は、是非読みたいと思いますのでこちら経由で購入させていただきたいと思っています。これからもすばらしいレビューを続けてください。
Posted by ソナタ at 2005年03月21日 09:27
ソナタさん。はじめまして。
コメントありがとうございました。興味を持って頂けるとは、とっても嬉しいです!ブログを立ち上げた甲斐があったというものです。本書は、ほんとにオススメですよ!今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by Panic > ソナタさん at 2005年03月21日 10:26
こんばんは。レスしに来ました!
紫電改の映像の件ですが、確かDVD出ていると思いますよ。
私が購入した時は、DVDが無かった時でしたので、VHSなんですよ。
でも今買うお金が無いので、VHSをPCに取りこんで、
自作DVDにして鑑賞してます♪
Posted by REALLIFE at 2005年03月23日 00:13
ありがとうございます。DVD出てますか。
私はREALさん以上にお金がないので、DVD−RすらありませんT_T
いいなぁ自作DVD・・・。良し買うぞ!
Posted by Panic > REALLIFEさん at 2005年03月23日 02:55
初めまして。私は本書の著者である碇義朗の長男です。紫電改に関する調べものをしていて、偶然にこの素晴らしい論評に行き当たりました。「紫電改の六機」は、私自身としましても、父の書いた多くの大戦機関連の著書の中でも最も好きな一冊です。論評にもありますとおり、執筆のための資料収集と取材は半端な仕事量ではありません。たいへんに的を得た素晴らしい論評に対しまして、父に代わり、心よりお礼申し上げます。さて、愛媛で引き上げられた紫電改に関してですが、現在は立派な展示館に展示・慰霊されています。一昨年に展示館を訪れ、かなりの数の写真を撮影してきています。ご興味があれば、何点かメール添付にてお送り致します。それでは、今後ともよろしくお願い致します。
Posted by ikariyo1 at 2005年07月12日 14:53
ikariyo1さん、いや碇様、初めまして。光栄なるコメントを頂戴して驚きましたし、大変嬉しく思いました。本書には、父上様の彼らに対する情熱を強く感じ、感動致しました。紫電改はいつか見に行こうと心に誓っておりますが、遠隔地の為なかなかそうもいきません。メールでお見せ頂けるならば、是非ともお願い致します。楽しみにお待ちしております。お忙しいところ、わざわざ拙ブログごときに、コメント頂きましてありがとう御座いました。今後とも宜しくお願い致します。
Posted by Panic > ikariyo1さん at 2005年07月13日 15:51