目 次
(P.1)
あまりにおかしな判決
(P.2)
津野、中川裁判官の略歴
(P.3)
島田、古田裁判官の略歴
(P.4) 小泉内閣がつくった現最高裁
◆小泉内閣がつくった現最高裁
この2人が判決に加わっていないのは、どうしてなのか、私には分からない。おそらく審理そのものに加わっていないのだろう。島田長官の場合は、長官の仕事で多忙だから、小法廷の審理すべてに参加するということはないのかもしれない。
古田判事は検事出身だから、被告3人を起訴したり、あるいは控訴・上告するときの判断に関与したのかもしれない。そういう場合、弁護側から忌避されることもある。自ら忌避した形で、上告審に加わらなかったのかもしれない。
そこまで考えてみると、判決に参加した今井(裁判長)、津野、中川3判事はいずれも小泉内閣のときに最高裁判事に任命されている。小泉内閣は2001年4月から06年9月まで5年半の長期政権だった。現在の最高裁判事15人(長官を含む)中12人までが、小泉内閣の任命なのである。
ついでだから、現在の最高裁判事全員について、任命の年月日と「選出母体」だけの一覧表にしてみよう。
【小泉内閣任命】
島田 仁郎 平成14年11月 7日 裁判官
横尾 和子 平成13年12月19日 厚生省(社会保険庁長官)
藤田 宙靖 平成14年 9月30日 東北大教授
甲斐中辰夫 平成14年10月 7日 検察庁(東京高検検事長)
泉 徳治 平成14年11月 6日 裁判官
才口 千晴 平成16年 1月 6日 弁護士
津野 修 平成16年 2月26日 内閣法制局(長官)
今井 功 平成16年12月27日 裁判官
中川 了滋 平成17年 1月19日 弁護士
堀籠 幸男 平成17年 5月17日 裁判官
古田 佑紀 平成17年 8月 2日 検察庁(最高検次長検事)
那須 弘平 平成18年 5月25日 弁護士
【安倍内閣任命】
涌井 紀夫 平成18年10月16日 裁判官
田原 睦夫 平成18年11月 1日 弁護士
近藤 崇晴 平成19年 5月23日 裁判官
要するに現在の最高裁は、小泉内閣人事によってつくられたのである。
◆「栄光のポスト」最高裁判事
法曹の世界に入る人たちは、日本で最難関と言われる司法試験をパスしなければならない。その難関をくぐったというエリート意識と密着した強烈な仲間意識がある。裁判官、検事、弁護士と道は分かれるが、それを超越した仲間意識である。そして誰もが、最後の「栄光のポスト」を最高裁判事と考えている。
今回の第2小法廷判決をまとめた3判事に限らず、現職最高裁判事の大半は、小泉内閣によってこの「栄光のポスト」を手中にしたのである。小泉内閣の政策批判など「とんでもない」という雰囲気ではないだろうか?
自衛隊のイラク派兵は、小泉内閣の政策だった。それを強烈に批判・非難していたのが、ビラ配布住居侵入事件の被告3人だったのである。こういう脈絡の中であまりにも非常識な憲法原則無視の判決が少数意見なしで出てきたのではないか?
◆「李下に冠を正さず」ではないか?
以上は私の推測にすぎないが、最高裁HPのデータに基づく合理的な推測である。小法廷判決を出した3人の裁判官に「栄光のポストに任命してくれた小泉内閣批判なんかとんでもない、という心情にもとづく判決でしょう」という言葉を投げつけたなら(現実には不可能なことだが)「げすの勘ぐり」などと言い返されるのがオチだろう。
しかし「李下に冠を正さず」という言葉もある。(「好きな言葉」で、これをあげた裁判官はいなかったが。)「私は小泉内閣によって最高裁判事に任命されたのです。小泉内閣批判のビラにからむ事件を担当すると、<先入観による不当判決>と批判されそうです。だから審理に加わりません」という意思表示をする判事が1人ぐらいいても良かったのではないかと考えるがどうだろうか。
いずれにせよ、この原稿を書くため、最高裁判事はどういう人かという、普段あまり意識しない問題に注目することができた。
◆デタラメの社保庁長官から「法と正義の番人」へ
全員で15人。裁判官、弁護士、学識経験者から各5人ずつを起用するということを基礎知識として知っていた。学識経験者枠といえば、誰もが学者・研究者だと考えるだろうが、大学教授らが起用されていたのは田中耕太郎(長官在任1950年3月〜60年10月)▼横田喜三郎(同60年10月〜66年8月=ともに東大教授から任命)と2代続いた学者長官の時代まで。その後、検察庁、外務省(条約の専門家という口実)、内閣法制局などがOBを押し込もうとし、さいきんでは女性官僚OBまで起用しているため、いまや学者出身の判事は藤田宙靖氏ただ1人になっている。
現職の横尾和子判事は、厚生省OBで、94(平成6)年9月から96(平成8)年8月まで、あの社会保険庁長官だった。あのデタラメさを見過ごしてきた人が、「法と正義の番人」であるポストに就いて平気でいられるという神経に敬服する。
なお最高裁HPの各判事欄からは、関与した判決なども参照できる。ご興味のある方は一覧の値打ちがあることを申し添えよう。