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「ビラ配布有罪」判決を下した最高裁判事たち

田中良太2008/04/15
日本 裁判 NA_テーマ2

目 次
 (P.1) あまりにおかしな判決
 (P.2) 津野、中川裁判官の略歴
 (P.3) 島田、古田裁判官の略歴
 (P.4) 小泉内閣がつくった現最高裁


◆小泉内閣がつくった現最高裁
 この2人が判決に加わっていないのは、どうしてなのか、私には分からない。おそらく審理そのものに加わっていないのだろう。島田長官の場合は、長官の仕事で多忙だから、小法廷の審理すべてに参加するということはないのかもしれない。

 古田判事は検事出身だから、被告3人を起訴したり、あるいは控訴・上告するときの判断に関与したのかもしれない。そういう場合、弁護側から忌避されることもある。自ら忌避した形で、上告審に加わらなかったのかもしれない。

 そこまで考えてみると、判決に参加した今井(裁判長)、津野、中川3判事はいずれも小泉内閣のときに最高裁判事に任命されている。小泉内閣は2001年4月から06年9月まで5年半の長期政権だった。現在の最高裁判事15人(長官を含む)中12人までが、小泉内閣の任命なのである。

 ついでだから、現在の最高裁判事全員について、任命の年月日と「選出母体」だけの一覧表にしてみよう。
 【小泉内閣任命】
  島田 仁郎  平成14年11月 7日 裁判官
  横尾 和子  平成13年12月19日 厚生省(社会保険庁長官)
  藤田 宙靖  平成14年 9月30日 東北大教授
  甲斐中辰夫  平成14年10月 7日 検察庁(東京高検検事長)
  泉  徳治  平成14年11月 6日 裁判官
  才口 千晴  平成16年 1月 6日 弁護士
  津野  修  平成16年 2月26日 内閣法制局(長官)
  今井  功  平成16年12月27日 裁判官
  中川 了滋  平成17年 1月19日 弁護士
  堀籠 幸男  平成17年 5月17日 裁判官
  古田 佑紀  平成17年 8月 2日 検察庁(最高検次長検事)
  那須 弘平  平成18年 5月25日 弁護士
 【安倍内閣任命】
  涌井 紀夫  平成18年10月16日 裁判官
  田原 睦夫  平成18年11月 1日 弁護士
  近藤 崇晴  平成19年 5月23日 裁判官

 要するに現在の最高裁は、小泉内閣人事によってつくられたのである。

 ◆「栄光のポスト」最高裁判事
 法曹の世界に入る人たちは、日本で最難関と言われる司法試験をパスしなければならない。その難関をくぐったというエリート意識と密着した強烈な仲間意識がある。裁判官、検事、弁護士と道は分かれるが、それを超越した仲間意識である。そして誰もが、最後の「栄光のポスト」を最高裁判事と考えている。

 今回の第2小法廷判決をまとめた3判事に限らず、現職最高裁判事の大半は、小泉内閣によってこの「栄光のポスト」を手中にしたのである。小泉内閣の政策批判など「とんでもない」という雰囲気ではないだろうか?

 自衛隊のイラク派兵は、小泉内閣の政策だった。それを強烈に批判・非難していたのが、ビラ配布住居侵入事件の被告3人だったのである。こういう脈絡の中であまりにも非常識な憲法原則無視の判決が少数意見なしで出てきたのではないか?

 ◆「李下に冠を正さず」ではないか?
 以上は私の推測にすぎないが、最高裁HPのデータに基づく合理的な推測である。小法廷判決を出した3人の裁判官に「栄光のポストに任命してくれた小泉内閣批判なんかとんでもない、という心情にもとづく判決でしょう」という言葉を投げつけたなら(現実には不可能なことだが)「げすの勘ぐり」などと言い返されるのがオチだろう。

 しかし「李下に冠を正さず」という言葉もある。(「好きな言葉」で、これをあげた裁判官はいなかったが。)「私は小泉内閣によって最高裁判事に任命されたのです。小泉内閣批判のビラにからむ事件を担当すると、<先入観による不当判決>と批判されそうです。だから審理に加わりません」という意思表示をする判事が1人ぐらいいても良かったのではないかと考えるがどうだろうか。

 いずれにせよ、この原稿を書くため、最高裁判事はどういう人かという、普段あまり意識しない問題に注目することができた。

 ◆デタラメの社保庁長官から「法と正義の番人」へ
 全員で15人。裁判官、弁護士、学識経験者から各5人ずつを起用するということを基礎知識として知っていた。学識経験者枠といえば、誰もが学者・研究者だと考えるだろうが、大学教授らが起用されていたのは田中耕太郎(長官在任1950年3月〜60年10月)▼横田喜三郎(同60年10月〜66年8月=ともに東大教授から任命)と2代続いた学者長官の時代まで。その後、検察庁、外務省(条約の専門家という口実)、内閣法制局などがOBを押し込もうとし、さいきんでは女性官僚OBまで起用しているため、いまや学者出身の判事は藤田宙靖氏ただ1人になっている。

 現職の横尾和子判事は、厚生省OBで、94(平成6)年9月から96(平成8)年8月まで、あの社会保険庁長官だった。あのデタラメさを見過ごしてきた人が、「法と正義の番人」であるポストに就いて平気でいられるという神経に敬服する。

 なお最高裁HPの各判事欄からは、関与した判決なども参照できる。ご興味のある方は一覧の値打ちがあることを申し添えよう。

ご意見板

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[33887] 妄想も大概に
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 14:53
>だから立入禁止の場所から出ていかない人が住居侵入罪で逮捕されたんですね。<


忍野さんがお暮らしの妄想の国の事はよくわかりませんが、少なくとも日本国の立川ビラ事件判決では、そもそも不退去行為は一切認定されておらず、問題になっていません。


判決は、住居侵入行為と不退去行為を共に認定した上で住居侵入罪を認めたのではなく、単に共有部分への進入行為のみを問題にして住居侵入罪を認定しています。不退去行為については、判決は一切認定していません。当然、住居侵入罪における前提行為になっていません。


判決すら読まずに(読めずに?)、何を言っているのですか?


再度訂正するしかないと思いますが、ここまでひどいと、訂正しようがないでしょうね。恥の感覚をお持ちなら、ですが。
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[33881] 訂正
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/22 09:32
『以前に「出て行け」に従わなかったから、次に進入したとき住居侵入罪で即逮捕したんじゃないの。』は間違いでした。
住居侵入罪と不退去罪を連続で犯した場合は住居侵入罪だけが成立するんですね。だから立入禁止の場所から出ていかない人が住居侵入罪で逮捕されたんですね。
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[33880] 何度話しても、議論にならない
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 08:27
なんか、何とかに念仏になってますね。


>以前に「出て行け」に従わなかったから、次に進入したときに住居侵入罪で即逮捕したんじゃないの。そしたら今度は即逮捕を問題としている。<


自分で何を言っているかわかってないでしょ。


これでは、以前拾ったものを着服したからといって、今度はしてもいない窃盗の罪で逮捕したというような話ですよ?不退去罪を問題にすべきなのに、より広い射程を持つ別の罪での別件逮捕じゃないですか。こんな認識で警備してましたなんて、ほんとうに困ったものだ。


あと、全体主義というのは、究極の利己主義ですよ?今日、全体主義の代表人物の一人は、まぎれもなく金正日ですが、まさに自己の欲望により他人を不当に支配しています。事実、本件も、本来処罰に値しない単なる不快感を理由に、国家の力を使って処罰まで与えようというのですから、究極の利己主義者じゃないですか。まさに自由主義の敵以外のなにものでもありません。


あ、そうそう。前回のコメントですが、ここに一番重要な真実が露呈しています。


>そもそもビラの内容が全然違うし。 <


この一言でわかるように、忍野さんは、実際は、住居侵入の態様という行為形式ではなく、ビラの内容という表現内容により、住居侵入罪の適用の可否を決めている訳です。


勿論警察・検察・最高裁は、さすがにこんなことは表向き口が裂けても言いませんが、これこそまさに今回の摘発・判決のホンネが出ていると言っていいでしょう。


先に伊藤さんが、「ビラ配りそのものが罰せられたわけではなく、住居侵入が罰せられた事件です。判決をよく読まれるべきだと思います。 」と言っていますが、ま、そんなものを文字通り信じる馬鹿は、実際には殆どいません。

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[33879] 利己主義者よりまし
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/22 03:44
以前に「出て行け」に従わなかったから、次に進入したときに住居侵入罪で即逮捕したんじゃないの。そしたら今度は即逮捕を問題としている。

で、重要なビラ配りをするのに敷地外や立入可・投函可の建物だけじゃ満足できないのは何故なの?

子どもの家猫探しのビラ配りの立ち入りを許したら全てのビラ配りの立ち入りを認めなくちゃいけないのか・・・。
逆に、歓迎しないビラ配りの立ち入りを禁止したら子どもの家猫探しのビラ配りの立ち入りまで禁止しなくちゃいけないのか・・・。
住民の相手によっての可否の判断を自治・管理に活かすと全体主義者にされるのなら不本意だけどその称号を受け入れます。住民の迷惑を無視して進入する側の都合しか尊重しない利己主義者よりましだもの。
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[33878] 補足
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 02:09
「但し、刑事未成年は、原則的には、責任阻却されることで刑事責任は問われないことが多いというだけです。」


は、


「但し、未成年の場合、年齢に応じ、原則的に責任が阻却されることで、刑事責任が軽減されることが多いというだけです。」


にします。
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[33877] 無知と全体主義 鶏か卵か
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 01:54
>「敷地内から出て行けという管理者の指示には従わない!」と居直る。 <


やれやれ、「出て行け」というのは不退去罪の話で、住居侵入罪とは全く別の話ですよ?不退去罪の問題を、住居侵入罪で解決しようとするのは、言うまでもなく完全に不当な拡大適用で全くの間違いです。


それにしても、忍野さんは、いつもながら、法というものが全くわかってないですね。


子どもが人を殺しても、殺人は殺人です。殺人罪も住居侵入罪も、基本的には年齢に関係なく既遂となります。但し、刑事未成年は、原則的には、責任阻却されることで刑事責任は問われないことが多いというだけです。


しかも、言うまでもなく犯罪行為を知っていて見逃すというのは、法治国家では原則的に許されません。大人げないなどというのは、全く関係ない論外な話です。


忍野さんの言っているのは、要するに、「法の網を広くとって、あとは恣意的に適用すべきだ」という、近代国家にあるまじきものなんですよ。


要するに、そもそも実質的な共有空間に平穏に進入することは、こどもだろうが大人だろうが、基本的に犯罪ではないのです。それだけのことです。それを無理に犯罪にしようとするから、こどもなら見逃せという、トンデモを言うしかなくなる。


それが「こどものビラ貼り」という事例が出されると簡単に露呈してしまうわけです。


***


ビラ配りが重要なのは、政治的表現を目指す相手に伝える行為だからですよ。そしてこれは、近代社会では、人権中でも最重要なもの一つとされています。じゃなきゃ、アムネスティが良心の囚人などに認定する筈もないのです。


要するに、忍野さんのお考えは、いつもながら、まともな近代社会・近代法とは完全に相反するものだということです。


****


つまるところ、恣意的な法の適用を礼賛し、反政府的政治表現だけを取り締まっている実態には目をつぶる。


ほんとうに筋金入りの全体主義者だとつくづくよくわかります。
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[33876] Re:[33860] 自由主義の危機
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/22 01:11
家猫を探していますと子どもがビラを配ったら管理者の意志次第で立派な犯罪者になり得るとしても、子どもに対してはそういう意志決定しないでしょう。
子どもを犯罪者にしなかった管理者の決定に対して「私たちは逮捕されたんだからあの子どもも同じように逮捕しろ。」って抗議しますか?怖ろしい人ですね。
逆に「あの子を逮捕しないなら私たちも同じ扱いにしろ。」って抗議しますか?子どもの行為を引き合いに出して大人も同じに扱えっていうのも大人気無いですね。そもそもビラの内容が全然違うし。

「米軍・自衛隊はイラクから出て行け〜!」とビラを配り「敷地内から出て行けという管理者の指示には従わない!」と居直る。
???わからん・・・敷地外や立入可・投函可の建物でのビラ配りだけじゃ満足できませんか。何で立入禁止の敷地内への進入にこだわるんでしょうか。
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[33861] 現行犯逮捕
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/21 06:43
なお、逮捕権に関しては、現行犯であれば一般人でも逮捕できます。


しかし、猫を探しているとビラを配っているだけの子どもを、住民が逮捕できる社会でいいんですか?


その方がずっと怖い社会であることは、明々白々ではないですか。
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[33860] 自由主義の危機
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/21 06:37
繰り返しますが、実質的に出入り自由の場所に平穏に入った場合、そもそもそれは犯罪ではありません。


客観的には住居者の平穏はなんら侵されておらず、ビラを受け取ることで感じる管理者の不快感などは、刑事罰での保護に値する法益とはとても考えられないからです。


それは、家猫を探していますと子どもがビラを配っても、この判決では、管理者の意思次第でその子は立派な犯罪者になりえることからも明らかでしょう。


単なる文書を受け取る不快感が、刑事的保護に値しないのは、ダイレクトメール、スパムメールを受け取った不快感が、刑事的保護に値しないと考えられていることと一緒です。


従って、集合住宅の自治などというものとは全く関係ありません。


**


しかも、恣意的な運用により、政治的表現の自由、特に政府批判表現への恣意的な摘発となっているのも、明々白々であり、実質的に権力による恣意的な政治活動への弾圧となっています。これは、自由主義国家では到底認められることではありません。


それは、逮捕・取り調べを行ったのが刑事部門ではなく公安部門であったことからも、これを強く裏付けています。


まともな知性があれば、これは明白という以外ないことです。だからこそ、アムネスティにより、言論や思想を理由に不当に逮捕された良心の囚人として認定されたのです。これは非常に重いことです。


彼らは思想・言論を理由に罪なくして弾圧されたのであり、まさに不当そのもので、この国の自由主義は危機に瀕しているという以外ありません。
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[33858] 警察OBって何ですか?
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/21 03:19
“住居侵入で逮捕”に批判的な人達って対警察の一環として批判してたんですか?お門違いも甚だしい。
自治組合・管理組合の指示に従わないから逮捕されることもあると説明しているんです。
住人・管理人には逮捕権がないので警察に通報して、最終的に警察に逮捕を依頼しているだけです。
市民(住人)で構成されている自治・管理組合相手にやり合う覚悟があるんですか?

『共有部分』を勘違いして公道と同一視している人もいるようですね。
集合住宅の『共有部分』は住民にとっての『共有部分』です。部屋の前の廊下でも私物の物置や駐輪などの私的占有はできない住民共有の空間だということです。そのかわり『共有部分』の管理や修繕は個人に負担させることなく管理費等で賄いますということです。
住民以外は『共有部分』だろうが敷地内に自由に出入りできる権利は基本的にありません。後はそれぞれの集合住宅の自治・管理組合の判断です。それぞれの組合の指示に従ってもらうしかありません。
それぞれの組合の判断にばらつきがあるグレーゾーンを問題視するならどうすれば良いんですか?
しかるべき権限のある団体の指示に合わせて全国統一の判断基準を各自治・管理組合に押し付けるんですか。
その方が自治権を侵害する全体主義だと思いますけど。

警察・司法を批判するなら住居侵入罪での逮捕は認めたうえで「だが、それを理由に2ヶ月近くの拘留は不当ではないのか」でしょう。
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