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「ビラ配布有罪」判決を下した最高裁判事たち

田中良太2008/04/15
ビラを集合住宅で配ると住居侵入罪で有罪というバカバカしすぎる判決が最高裁で言い渡された。この3人の裁判官を初め、現在の最高裁は小泉内閣人事によってつくられている。「栄光のポストに任命してくれた小泉内閣批判のビラなど、とんでもない、という心情にもとづく判決だ」と批判して、「げすの勘ぐり」と否定しきれるだろうか。
日本 裁判 NA_テーマ2

目 次
 (P.1) あまりにおかしな判決
 (P.2) 津野、中川裁判官の略歴
 (P.3) 島田、古田裁判官の略歴
 (P.4) 小泉内閣がつくった現最高裁


◆あまりにおかしな判決
 集合住宅でビラを配布すれば住居侵入罪(刑法130条)に問われ有罪というバカバカしすぎる判決が11日、最高裁第2小法廷によって言い渡された。

 東京都立川市の自衛隊官舎で自衛隊イラク派遣に反対するビラを配った3人が住居侵入罪に問われた事件で、警察・検察による逮捕・起訴は、憲法で保障された表現の自由を侵害するものだと主張していた被告3人の上告を棄却したのである。

 第2小法廷の判決によると「官舎の管理者の意思に反して立ち入れば、住民の私生活の平穏を侵害する」のだそうだ。また集合住宅でのビラ配りを住居侵入罪に問うことは、「表現の自由」に反しない、というのである。

◆一審無罪判決の論理
 一審の東京地裁八王子支部判決は、3人が官舎の敷地内に入ったことは、住居侵入罪の構成要件に該当すると判断した。しかしビラを投函する行為について、「憲法21条1項が保障する政治的表現活動の一態様であり、民主主義社会の根幹を成すもの」と認定。被告と同様、官舎内に無断で立ち入る商業的宣伝ビラの投函が放置されている事実も指摘して、被告に刑事責任を問うのは「同条の趣旨に照らして疑問の余地が残る」などと述べた。

 これに対して二審東京高裁判決は、官舎の住民たちが受けた「被害」は無視できないなどと主張。「表現の自由」を軽視した形で有罪判決を下した。

 最高裁第2小法廷判決も、それを是認した。そのこと自体おかしいのだが、このような「問題判決」の場合、これまでの例では少数意見がついていたと記憶する。今回の場合、判決文の最後に付されている裁判官名は3人だけとはいえ、少数意見なしの全員一致となっている。こんな判決で一致した裁判官の「素性」が知りたくなった。

◆最高裁ホームページに判事の人物紹介
 最高裁のホームページにアクセスすると、今回の判決全文もダウンロード可能だし、判事の人物像も出てくる。

 とりあえず今回の判決を下した第2小法廷の3判事の略歴を引っ張り出してみた。

[裁判長]今井 功(いまい いさお=昭和14年12月26日生)
  略歴
昭和37年 京都大学法学部卒業
昭和37年 司法修習生
昭和39年 判事補任官
その後、東京地・家裁、最高裁総務局、函館地・家裁で勤務
昭和48年 最高裁調査官
昭和51年 最高裁民事局第二課長
昭和55年 同局第一課長兼第三課長
昭和57年 東京地裁判事
昭和59年 東京地裁判事部総括
昭和62年 東京高裁事務局長
平成 2年 最高裁民事局長兼行政局長
平成 6年 前橋地裁所長
平成 8年 東京高裁判事部総括
平成10年 最高裁首席調査官
平成14年 仙台高裁長官
平成14年 東京高裁長官
平成16年12月27日 最高裁判所判事

(信条、趣味など)

◇裁判官としての心構え
 裁判所の使命は、裁判所に提起された事件を適正かつ迅速に解決することにつきるのでありますが、1件1件の事件を大切にし、当事者の訴えに虚心に耳を傾け、これに真正面から立ち向かうことを心掛けています。特に最高裁判所の判断は、事件についての最終的な判断であり、その影響も大きいので、その職責の重要性を自覚しつつ、最善の解決が図れるよう全力を尽くしたいと考えております。

◇好きな言葉
 好きな言葉は、「眼は高く、手は低く」です。常に高い理想を目指しつつ、日常の仕事を一つ一つ着実に行うことが大切であると、高校時代の恩師に教えられました。

◇印象に残った本
 いろいろな分野の先人の伝記を読むことが好きですが、かなり前に読んだ阿川弘之著「井上成美」などが心に残っています。

◇趣味
 水泳(自己流のクロール)、囲碁、街を散歩すること。

◇その他
 21世紀にふさわしい司法制度の構築を目指した司法制度の改革が着実に実行されておりますが、司法が国民に身近で、より頼り甲斐のあるものとなるよう自分なりに努めたいと思っています。

 ●田中評=判事補のころの函館勤務と、地裁所長の前橋、高裁長官の仙台以外、地方勤務はなく、ずっと東京に居座っている。巨大な官僚組織・最高裁のエリートなんだろう。「当事者の訴えに虚心に耳を傾け」とは、聞いてあきれる。「法律の専門家である検察官の言い分は信用できるが、その他の人間はウソばかり言うのだから信用できない。雑音には耳を貸さず」と書くべきだ。そういう姿勢でなければエリートコースをばく進することはできない。

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[33887] 妄想も大概に
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 14:53
>だから立入禁止の場所から出ていかない人が住居侵入罪で逮捕されたんですね。<


忍野さんがお暮らしの妄想の国の事はよくわかりませんが、少なくとも日本国の立川ビラ事件判決では、そもそも不退去行為は一切認定されておらず、問題になっていません。


判決は、住居侵入行為と不退去行為を共に認定した上で住居侵入罪を認めたのではなく、単に共有部分への進入行為のみを問題にして住居侵入罪を認定しています。不退去行為については、判決は一切認定していません。当然、住居侵入罪における前提行為になっていません。


判決すら読まずに(読めずに?)、何を言っているのですか?


再度訂正するしかないと思いますが、ここまでひどいと、訂正しようがないでしょうね。恥の感覚をお持ちなら、ですが。
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[33881] 訂正
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/22 09:32
『以前に「出て行け」に従わなかったから、次に進入したとき住居侵入罪で即逮捕したんじゃないの。』は間違いでした。
住居侵入罪と不退去罪を連続で犯した場合は住居侵入罪だけが成立するんですね。だから立入禁止の場所から出ていかない人が住居侵入罪で逮捕されたんですね。
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[33880] 何度話しても、議論にならない
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 08:27
なんか、何とかに念仏になってますね。


>以前に「出て行け」に従わなかったから、次に進入したときに住居侵入罪で即逮捕したんじゃないの。そしたら今度は即逮捕を問題としている。<


自分で何を言っているかわかってないでしょ。


これでは、以前拾ったものを着服したからといって、今度はしてもいない窃盗の罪で逮捕したというような話ですよ?不退去罪を問題にすべきなのに、より広い射程を持つ別の罪での別件逮捕じゃないですか。こんな認識で警備してましたなんて、ほんとうに困ったものだ。


あと、全体主義というのは、究極の利己主義ですよ?今日、全体主義の代表人物の一人は、まぎれもなく金正日ですが、まさに自己の欲望により他人を不当に支配しています。事実、本件も、本来処罰に値しない単なる不快感を理由に、国家の力を使って処罰まで与えようというのですから、究極の利己主義者じゃないですか。まさに自由主義の敵以外のなにものでもありません。


あ、そうそう。前回のコメントですが、ここに一番重要な真実が露呈しています。


>そもそもビラの内容が全然違うし。 <


この一言でわかるように、忍野さんは、実際は、住居侵入の態様という行為形式ではなく、ビラの内容という表現内容により、住居侵入罪の適用の可否を決めている訳です。


勿論警察・検察・最高裁は、さすがにこんなことは表向き口が裂けても言いませんが、これこそまさに今回の摘発・判決のホンネが出ていると言っていいでしょう。


先に伊藤さんが、「ビラ配りそのものが罰せられたわけではなく、住居侵入が罰せられた事件です。判決をよく読まれるべきだと思います。 」と言っていますが、ま、そんなものを文字通り信じる馬鹿は、実際には殆どいません。

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[33879] 利己主義者よりまし
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/22 03:44
以前に「出て行け」に従わなかったから、次に進入したときに住居侵入罪で即逮捕したんじゃないの。そしたら今度は即逮捕を問題としている。

で、重要なビラ配りをするのに敷地外や立入可・投函可の建物だけじゃ満足できないのは何故なの?

子どもの家猫探しのビラ配りの立ち入りを許したら全てのビラ配りの立ち入りを認めなくちゃいけないのか・・・。
逆に、歓迎しないビラ配りの立ち入りを禁止したら子どもの家猫探しのビラ配りの立ち入りまで禁止しなくちゃいけないのか・・・。
住民の相手によっての可否の判断を自治・管理に活かすと全体主義者にされるのなら不本意だけどその称号を受け入れます。住民の迷惑を無視して進入する側の都合しか尊重しない利己主義者よりましだもの。
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[33878] 補足
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 02:09
「但し、刑事未成年は、原則的には、責任阻却されることで刑事責任は問われないことが多いというだけです。」


は、


「但し、未成年の場合、年齢に応じ、原則的に責任が阻却されることで、刑事責任が軽減されることが多いというだけです。」


にします。
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[33877] 無知と全体主義 鶏か卵か
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/22 01:54
>「敷地内から出て行けという管理者の指示には従わない!」と居直る。 <


やれやれ、「出て行け」というのは不退去罪の話で、住居侵入罪とは全く別の話ですよ?不退去罪の問題を、住居侵入罪で解決しようとするのは、言うまでもなく完全に不当な拡大適用で全くの間違いです。


それにしても、忍野さんは、いつもながら、法というものが全くわかってないですね。


子どもが人を殺しても、殺人は殺人です。殺人罪も住居侵入罪も、基本的には年齢に関係なく既遂となります。但し、刑事未成年は、原則的には、責任阻却されることで刑事責任は問われないことが多いというだけです。


しかも、言うまでもなく犯罪行為を知っていて見逃すというのは、法治国家では原則的に許されません。大人げないなどというのは、全く関係ない論外な話です。


忍野さんの言っているのは、要するに、「法の網を広くとって、あとは恣意的に適用すべきだ」という、近代国家にあるまじきものなんですよ。


要するに、そもそも実質的な共有空間に平穏に進入することは、こどもだろうが大人だろうが、基本的に犯罪ではないのです。それだけのことです。それを無理に犯罪にしようとするから、こどもなら見逃せという、トンデモを言うしかなくなる。


それが「こどものビラ貼り」という事例が出されると簡単に露呈してしまうわけです。


***


ビラ配りが重要なのは、政治的表現を目指す相手に伝える行為だからですよ。そしてこれは、近代社会では、人権中でも最重要なもの一つとされています。じゃなきゃ、アムネスティが良心の囚人などに認定する筈もないのです。


要するに、忍野さんのお考えは、いつもながら、まともな近代社会・近代法とは完全に相反するものだということです。


****


つまるところ、恣意的な法の適用を礼賛し、反政府的政治表現だけを取り締まっている実態には目をつぶる。


ほんとうに筋金入りの全体主義者だとつくづくよくわかります。
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[33876] Re:[33860] 自由主義の危機
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/22 01:11
家猫を探していますと子どもがビラを配ったら管理者の意志次第で立派な犯罪者になり得るとしても、子どもに対してはそういう意志決定しないでしょう。
子どもを犯罪者にしなかった管理者の決定に対して「私たちは逮捕されたんだからあの子どもも同じように逮捕しろ。」って抗議しますか?怖ろしい人ですね。
逆に「あの子を逮捕しないなら私たちも同じ扱いにしろ。」って抗議しますか?子どもの行為を引き合いに出して大人も同じに扱えっていうのも大人気無いですね。そもそもビラの内容が全然違うし。

「米軍・自衛隊はイラクから出て行け〜!」とビラを配り「敷地内から出て行けという管理者の指示には従わない!」と居直る。
???わからん・・・敷地外や立入可・投函可の建物でのビラ配りだけじゃ満足できませんか。何で立入禁止の敷地内への進入にこだわるんでしょうか。
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[33861] 現行犯逮捕
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/21 06:43
なお、逮捕権に関しては、現行犯であれば一般人でも逮捕できます。


しかし、猫を探しているとビラを配っているだけの子どもを、住民が逮捕できる社会でいいんですか?


その方がずっと怖い社会であることは、明々白々ではないですか。
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[33860] 自由主義の危機
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/21 06:37
繰り返しますが、実質的に出入り自由の場所に平穏に入った場合、そもそもそれは犯罪ではありません。


客観的には住居者の平穏はなんら侵されておらず、ビラを受け取ることで感じる管理者の不快感などは、刑事罰での保護に値する法益とはとても考えられないからです。


それは、家猫を探していますと子どもがビラを配っても、この判決では、管理者の意思次第でその子は立派な犯罪者になりえることからも明らかでしょう。


単なる文書を受け取る不快感が、刑事的保護に値しないのは、ダイレクトメール、スパムメールを受け取った不快感が、刑事的保護に値しないと考えられていることと一緒です。


従って、集合住宅の自治などというものとは全く関係ありません。


**


しかも、恣意的な運用により、政治的表現の自由、特に政府批判表現への恣意的な摘発となっているのも、明々白々であり、実質的に権力による恣意的な政治活動への弾圧となっています。これは、自由主義国家では到底認められることではありません。


それは、逮捕・取り調べを行ったのが刑事部門ではなく公安部門であったことからも、これを強く裏付けています。


まともな知性があれば、これは明白という以外ないことです。だからこそ、アムネスティにより、言論や思想を理由に不当に逮捕された良心の囚人として認定されたのです。これは非常に重いことです。


彼らは思想・言論を理由に罪なくして弾圧されたのであり、まさに不当そのもので、この国の自由主義は危機に瀕しているという以外ありません。
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[33858] 警察OBって何ですか?
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/21 03:19
“住居侵入で逮捕”に批判的な人達って対警察の一環として批判してたんですか?お門違いも甚だしい。
自治組合・管理組合の指示に従わないから逮捕されることもあると説明しているんです。
住人・管理人には逮捕権がないので警察に通報して、最終的に警察に逮捕を依頼しているだけです。
市民(住人)で構成されている自治・管理組合相手にやり合う覚悟があるんですか?

『共有部分』を勘違いして公道と同一視している人もいるようですね。
集合住宅の『共有部分』は住民にとっての『共有部分』です。部屋の前の廊下でも私物の物置や駐輪などの私的占有はできない住民共有の空間だということです。そのかわり『共有部分』の管理や修繕は個人に負担させることなく管理費等で賄いますということです。
住民以外は『共有部分』だろうが敷地内に自由に出入りできる権利は基本的にありません。後はそれぞれの集合住宅の自治・管理組合の判断です。それぞれの組合の指示に従ってもらうしかありません。
それぞれの組合の判断にばらつきがあるグレーゾーンを問題視するならどうすれば良いんですか?
しかるべき権限のある団体の指示に合わせて全国統一の判断基準を各自治・管理組合に押し付けるんですか。
その方が自治権を侵害する全体主義だと思いますけど。

警察・司法を批判するなら住居侵入罪での逮捕は認めたうえで「だが、それを理由に2ヶ月近くの拘留は不当ではないのか」でしょう。
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