福田康夫首相が今年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)で提唱した「クールアース・パートナーシップ」に基づいた気候変動対策援助の第1弾として、インドネシアに3億ドルの有償資金協力(円借款)が供与されることになった。福田首相が北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の拡大会合出席のため来日したユドヨノ大統領に表明した。09年度、10年度も同額の供与が行われる見込みだ。
インドネシアは温室効果ガス排出では世界11位だが、森林減少や森林火災などの要因を含めれば同3位となっている。
こうした状況にインドネシア政府は危機感を抱いており、北海道洞爺湖サミットの主要経済国会合首脳会合では50年の世界全体の排出量半減目標にも支持を表明した。今回の円借款供与は同国の「気候変動国家行動計画」が対象だ。
昨年夏以来、日本とインドネシアが協議を重ね、計画作りが行われてきた。同計画は三つの柱からなっている。インドネシアの二酸化炭素排出の約8割を占める森林セクター対策や、省エネルギーの推進、代替エネルギー導入など温暖化を緩和するための対策が第一の柱だ。
第二は温暖化の進行で被害を受ける農業への対策や、治水、利水のみならず、安全な水の確保も含めた水資源管理などの施策だ。
この計画で特徴的なのは、気候変動対策の企画・立案や都市計画改善、クリーン開発メカニズム(CDM)案件の増加策など政策段階への支援を盛り込んだ第三の柱だ。全体として、温暖化対策と成長を両立させることが目指される。
これまでも、温暖化対策を目的とした援助は行われてきた。エジプトのザファラーナ風力発電所はCDM案件にも認定されている。こうした取り組みも引き続き積極的に行うべきだ。同時に、インドネシアのような大排出国に対しては構造的な取り組みへの支援が欠かせない。
高い成長を遂げている東アジアは、経済規模が確実に拡大している。これまでの成長パターンを続けていけば、二酸化炭素の排出量が急増し、気候変動に重大な影響を及ぼすことは間違いない。
温暖化を未然に食い止める有効な施策を広範に講じ、新しい発展のスタイルを築くことは被援助国の利益のみならず、地球益にもなる。こうした包括的な気候変動対策への援助はODA(政府開発援助)の新しいモデルにもなる。事実、欧米も関心を持っており、今回のインドネシアでの計画には国際機関や欧米の開発金融機関も参加する見通しだ。
このところ、日本の援助国としての地位低下は著しい。が、温暖化対策ODAで主導権を発揮できれば、日本の援助の評価を引き上げることにもつながる。
毎日新聞 2008年7月19日 東京朝刊