◎地方の財源確保 短絡的過ぎる消費税引き上げ
全国知事会が自治体の財源不足を解消するため、地方消費税を拡充させる必要があると
し、実質的に消費税率の引き上げを求める提言を採択した。自治体の財政基盤を強化し、社会保障などの行政サービスを確実に提供するため、現行の消費税5%のうち1%を占める地方消費税の割合を増やしてほしいという要求は理解できる。それでも、財源不足のため消費税全体を増やす必要があるというのはいささか短絡的に過ぎ、国民の理解を得られないのではないか。
自治体の財政は、いわゆる三位一体改革による地方交付税の大幅削減などで厳しさを増
している。このため知事会など地方六団体はかねてより、税源移譲による財政強化策の一つとして地方消費税の充実を主張してきた。六団体が二〇〇六年に提出した「地方分権の推進に関する意見書」の中で、国庫に入る消費税と地方消費税の割合を現在の四対一から二・五ずつに改めるよう求めている。
そのこと自体に異論をはさむ消費者は少なかろう。だからといって、財源の穴埋めのた
めに消費税率のアップまで求めるのは安易と言わざるを得ない。消費税増税は景気をさらに冷え込ませる恐れもあり、知事会の中にも慎重論があるのは当然である。
地方六団体は分権推進の意見書で、地方財政自立のための提言を幾つも行っている。例
えば「国と地方の関係の総点検による財政再建」がその一つである。国と地方の役割分担の明確化▽国と地方の二重行政の解消▽権限移譲に対応した国の出先機関の廃止・縮小などを進めるべきというのである。地方の税財源のあり方は、まさにそうした取り組みと一体的に考える必要がある。
知事会によると、自治体は一九九九年度から職員数を約二十八万人削減し、約一兆五千
億円の給与カットなどの行財政改革を続けてきたという。その努力は大いに評価したいが、行財政改革が「もはや限界に来た」と言い切れるだろうか。地域産業活性化による税収増の努力も含め、消費税率引き上げを求める前に、なお改革を進める余地はあると思われる。
◎首都圏から店舗誘致 官民で強力なスクラムを
金沢市と金沢商業活性化センターが中心商店街の空き店舗対策として、首都圏からの店
舗誘致活動を本格化させるのを機に、商業集積へ官民が一体となって強力なスクラムを組むことを望みたい。
空き店舗は地権者やビル所有者などの個々の問題として扱われがちだが、くしの歯が欠
けた状態が広がれば商圏全体の活力やイメージにもかかわる。退店後の入れ替えに際しても、官民でテナント情報を共有して紹介し合う仕組みがあっていい。店舗誘致の組織的な取り組みは、富山市など中心商店街再生を目指す自治体に共通する課題といえ、都心居住を促す点でも大事である。
商店街と競合する郊外の大型ショッピングセンターやファッションビルではテナント情
報を一元管理し、空き店舗を発生させず、消費者ニーズに合わせて店の入れ替えや配置を柔軟に進めている。都心の重要な機能である小売りの集積が無計画に行われていては郊外店との競争にも不利である。
金沢市などが今月下旬から展開する店舗誘致活動は、首都圏で人気のアパレル、生活雑
貨などの物販店や飲食店など千社にアンケートを送り、進出意欲や金沢への関心度を探る。反応がよい店舗には職員が直接、出店交渉する。
地方への店舗拡大を目指す会社にとっては、言うまでもなく採算性が進出判断の第一条
件である。商業地の魅力や将来性などを厳密に見極めながら出店計画を練っている。消費低迷で大手アパレルなどの進出意欲は下がっており、行政や商業団体が前面に出て店舗誘致に取り組むのは当然といえる。
千社規模の働きかけは意欲的だが、「数うちゃ当たる」の発想で空き店舗をただ埋める
だけでは十分ではない。商店街にどんな機能が不足し、どんな店があれば全体の求心力が高まるのか。行政と商店街が認識を共有し、綿密な戦略のもとで誘致策を進めてほしい。
集客力の高い商業地には自然と店舗が集まるものである。首都圏からのテナント誘致は
、既存店の魅力づくりが問われていることも認識しなければなるまい。