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芥川の遺志はどっち?遺書と全集収録の文面に相違あり

7月19日3時5分配信 読売新聞


 芥川龍之介が最期の推敲(すいこう)をした遺書の存在が明らかになったが、その遺書と岩波書店版全集に収録された文面の一部が違っていることが18日、新たに分かった。

 違いがあったのは、「僕の作品の出版権は(若(も)し出版するものありとせん乎)岩波茂雄氏に譲与すべし」との文で始まる妻あての1通。「岩波茂雄氏」とは、岩波書店の創業者で、遺書は、「(若し岩波氏の承諾を得ざる時は既に本となれるものの外は如何(いか)なる書肆(しょし)よりも出すべからず。)」で終わっている。しかし、遺書を初収録した1955年8月刊の全集の19巻では、その末尾に「勿論(もちろん)出版する期限等は全部岩波氏に一任すべし。この問題も谷口氏の意力に待つこと多かるべし」と、岩波氏の権限を念押しするくだりが加わっている。

 日本近代文学が専門の関口安義・都留文科大名誉教授によると、「谷口氏」とは、「芥川の好物のもなかを作っていた和菓子屋『うさぎや』の主人、谷口喜作氏だと考えられる」という。

 遺書を寄贈された日本近代文学館の安部秀次郎・事務局長代行は「誰かが何かの意図で加筆したのか。もしかしたら寄贈された遺書は実は下書きで、全集通りの遺書が別にあり、『直ちに焼棄せよ』という芥川の遺言に従って処分された可能性もある。様々なケースが考えられ、よくわからない」と話している。

 同文学館ではきょう19日から遺書の複製を一般に公開する。

最終更新:7月19日3時5分

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