妻がプール仲間のご婦人方とヒルトンホテルで食事をして来たそうです。その日の私の昼食は、リッチに吉野家のうな丼(580円)でした。
小田原から少し走った根府川という集落の山の上に 『ヒルトン小田原リゾート&スパ』があります。妻が利用したのは、スパとスポーツ施設が利用できてランチ付きで3000円というコースでした。 右端から斜面の下の方へと、立派なスポーツ施設があります。裏手は、緑豊かな自然の遊歩道になっています(撮影:大村賢三) その組織とは厚生労働省所轄の独立行政法人で、雇用・能力開発機構といいます。そして、その施設の名前は「スパウザ小田原」と言います。 グリーンピアの売却総額は、わずか約48億円だったと言われています。 そして、400億円を越す巨費が投じられた「スパウザ小田原」も同じく20分の1程度の価格で小田原市に売却されたのが気になるところです。そして現在はヒルトンホテルに貸し出されています。 そして、「スパウザ小田原」の結末を考えると、どうしてもグリーンピアの結末を切り離して考えることが出来ません。 ヒルトンホテルにとっては、その名に恥じない施設を、安価で借りて営業をしているわけですが、小田原市にとっても黒字の収入源となっています。 ヒルトンホテルも小田原市も、両者ともに黒字なので万々歳ではないかと言いたいところですが、釈然としないものがあります。 以下の例を考えてみて下さい。 ◇ A社が4億円の資金を借りてワンルームマンションを建てました。資金を回収するためには、1部屋で月に20万円の家賃を取らなければ採算があいません。世間の相場が7万円だったために借り手が付かず、家賃を7万円にして貸し続けました。 赤字続きのために負債が膨らみ、とうとう倒産してしまいました。一任された管財人がこのアパートをB社に800万円で売却しました。出資者の手元には、2%のお金が戻ってきました。 B社は世間の相場より2万円安い5万円で貸し出しましたが、元手が知れているので大もうけです。アパートの住民も安価で借りられて大喜びです。 ◇ 私の妻が、3000円でヒルトンの昼食とスパを楽しめた理由はこのようなところにあります。 グリーンピアは、「被保険者、年金受給者などのための保養施設」というお題目でスタートしました。「スパウザ小田原」は、雇用・能力開発機構が、当時、オレンジの自由化で所得が減るであろうみかん農家の事業転換模索という理由をつけて造られました。 初めの一軒がスタートした段階で大概は先が読めるものです。 関係者が経験から学んだのは、「この金づるは大きい。多少食いつぶしても、誰も罪びとにはならないだろう」という理屈だったのでしょうか。 国民から預かったお金を計画性なく、無駄に資金として投入し、元来不安定な年金システムに打撃を与えたことは大きな罪だと言えましょうが、困ったことに犯罪者がいません。 「運用失敗」という手口で、また新たに税金を徴収して穴埋めをする手法に対して、国民はどうすることもできません。 このやり方は何も年金資金に限ったことではありません。いわゆる箱物行政全般にしても、多くの国民にはことの行く末が見えていました。それでも政官は、「かえるの面に何とやら」でたくさんの事業を進めてきました。国民のお金をどぶに捨て、一部に利を移しても法の下で行えば誰も犯罪者にはなりません。 これが、罪が問われぬ泥棒の手口なのです。 この例に加え、社会保険庁の職員などによるネコババ、管理のずさんさなどで、年金資金は虫食い状態です。「1匹のゴキブリを見たら30匹はいると思え」と言われるように、ネコババにおいては公表されている数字をそのまま信じている人はいないのではないでしょうか。 それでいて、「年金行政を健全なものに保つ」というお題目で、消費税のアップ、タバコ税のアップなどが議論されています。 「泥棒に追い銭」という言葉が脳裏を過(よ)ぎります。 いっそのこと、年金制度を解体して掛け金を国民に返してみてはどうでしょうか。私の本望ではありませんが1つの手段だと思います。私のこれまでの掛け金の内、6割が戻るようでしたら文句は言いません。果たして、それだけのものが残っているのか疑問に感じております。 日本の政治家の言葉には、裏に潜むものが見えていてもそれを押し切ってしまうような力があるので、われわれ市民は無力感を抱きます。そして、むなしさの中にやるせなさが生まれ、無気力となっていきます。 日本人から活力がそぎ取られ、将来を想像しない短絡的な犯罪が増加しているのは、政治が未来のお金を食いつぶしていることと無関係ではないとの思いが、日々大きくなっています。 実際に行ってみると素晴らしいホテルだったので、その分、やるせなさも大きいものとなりました。 【編集部注】記者からの依頼にもとづき、一部訂正いたしました。(2008/7/14 18:44)
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