ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン埼玉> 記事

《追う》

県警幹部を横領容疑で告発 理由は

2008年02月11日

写真

田中三郎さん

◇◇田中三郎元警察学校長に聞く

 県警察学校の元校長田中三郎さん(60)が昨年12月、かつての上司や同僚だった県警の現役幹部ら3人を業務上横領容疑でさいたま地検に刑事告発した。約40年勤めた古巣への「反乱」ともとれる行動に至った理由は何だったのか。田中さんに告発の経緯や県警への思いを聞いた。

◇「迷ったがこのまま死ねぬ」「過ち根絶へ真相究明必要」

−−告発以外に方法はなかったのか

 「県警、県監査委員の調査では真相は明らかにされず、関係者の処分も不十分だったと感じた。県公安委員会への直訴も無駄だった。県警が自浄機能を発揮することをあきらめたわけでないが、現状では司直(検察)の手にゆだねるしかない状況になってしまった」

−−告発にためらいは

 「幹部だったものとして、不祥事を公にせず、そっとしておきたいという気持ちや、後輩の心を痛めることになるのではという迷いもあった。だが自分が常々、部下に言っていた『妻や孫たちに恥ずかしくないような行動を』という言葉が頭を離れなかった。このままでは死ねないと思った」

◇県警に失望

−−警察学校長就任後、自ら使途不明金を調査する過程で内部から圧力があったと証言した

 「ある幹部から『このまま調査を続けると(裏金問題に揺れた)道警のようになってしまうが、いいのか』と詰め寄られたり、『マスコミの取材には問題ないと答えるように』と指示されたりした」

 「次第に、自分のところに情報が入らなくなり、県警はうやむやにしようとしているのではと感じた。失望した」

−−県警の内部調査は「違法な使途はなかった」と結論づけている。犯罪の疑いがあるとする根拠は

 「県警はそう説明するだけで、125万円の具体的な支出先を明らかにしてない。学校長在任時、職員への聞き取りや領収書などで、125万円の考えられる、あらゆる使途を調査したが、出所不明の支出はほとんど確認できなかった。当時の校長か副校長が私的流用したか、着服したと考えざるを得なかった」

◇批判も承知

−−告発する一方、県警在職中、自ら裏金作りをしていたと公表した

 「警察署や本部で勤務していた頃、裏金作りに手を染め、旅費や捜査費から、職員の飲食代や慰労費を捻出した。『裏金作りをしていた人間に告発する資格があるのか』という批判も承知しているが、県警で同様の過ちが起きないようするためにも、真相を究明する必要があると思っている」

◇恩返しにと

−−元上司や同僚、後輩を敵に回すことになった。告発を後悔していないか

 「告発したことで、一緒に働いた仲間を失ったことはつらいし、県警が紹介してくれた退職後の職場を断り、生活も楽ではない。ただ、後悔はしてないし、同僚や後輩を敵に回したとも思っていない。不祥事の真実が明らかになり、県警が少しでも変われば、在職中、お世話になった先輩や後輩への恩返しになると信じている」

(県警察学校の助成金問題)

 県警察学校の学生らでつくる校友会が97年度から04年度まで、校内で売店を経営する業者から「助成金」名目で売上金の一部、計約530万円を受け取っていたことが06年、発覚した。04年度分(125万円)は、当時の警察学校副校長(校友会会長)が自ら管理し、領収書などの書類は異動の際に破棄したとし、使途が明らかになっていない。
 05年度に校長を務めた田中さんは昨年12月、当時の校長(退職)、副校長、庶務担当職員が共謀し横領した疑いがあるとして刑事告発した。

◇田中三郎さん

1947年、栃木県藤岡町生まれ。高校卒業後、民間会社勤務を経て67年、県警に就職。交通規制課長、西入間署長、越谷署長などを経て05年3月から1年間、県警察学校長を務める。07年9月、本人の希望で定年を半年早めて退職した。

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり