自殺未遂後のケア「不十分」が7割―東京都
自殺未遂患者への精神的ケア体制が十分でないと考えている救急医療機関が、全体の7割を超えることが、東京都の「救急医療機関における自殺企図患者等に関する調査」の結果から明らかになった。医療機関による連携強化などケア体制の充実を求める声も多く、都では「支援のための仕組みづくりを進めたい」と話している。
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調査は、昨年12月1日から31日の救急外来患者が対象。都内の救急告示医療機関338施設に調査用紙を配布し、206施設から回答があった。
調査結果によると、自殺企図患者を受け入れた医療機関は、29.1%にあたる60か所。自殺企図患者は422人で、そのうち自殺未遂患者(企図患者のうち救命された人)は373人だった。
自殺未遂患者のうち、精神疾患の合併が確認されたのは214人(57.4%)。ただ、精神科を標榜していない医療機関の6割近くが精神疾患の合併を「不明(または無回答)」としており、自殺未遂患者の7割以上が精神疾患を合併していると都はみている。
回答した施設のうち、精神科を標榜する医療機関は58か所(28.2%)。このうち常勤の精神科医がいない施設が14か所(24.1%)と最も多く、次いで「1人」が10か所(17.2%)だった。精神科医の当直がある施設は16か所で、回答した206施設の7.8%にとどまっている。都は、「昼夜を問わず搬送された自殺企図患者が精神科医の治療を要する場合、対応が困難な場合が多い」としている。
自殺未遂患者への精神的ケア体制については、回答施設の73.8%に当たる152か所が「不十分」か「どちらかといえば不十分」と回答した。
ケア体制が十分でない理由としては、「精神科医師の不足」や「休日夜間の精神科医師の配置がない」、「迅速なベッドコントロールが求められる救急医療の現場で掛けられる時間に制約がある」などが挙がった。
こうした現状を受けて、118施設(57.3%)が精神的ケア体制を充実させる必要性を指摘。そのために必要な対策として、▽救急医療機関と精神科医療機関のネットワーク作り▽自殺未遂患者に対応できる精神科医療機関のリスト整備▽自殺未遂患者支援のための相談援助活動の充実―などを挙げている。
調査結果を受けて東京都では、「救急医療機関と精神科医療機関とのネットワーク作りと、自殺未遂患者の地域での生活支援の両面で対策を進めたい」としている。
このほか、精神科への受診を指示された自殺未遂患者192人(51.5%)だった。自殺未遂患者373人の81.0%に当たる302人は通院状況が「不明(または無回答)」という。
更新:2008/07/17 21:57 キャリアブレイン
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