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【健康】

子宮頸がんの最新治療(下) 化学・放射線療法

2008年7月18日

 千葉県内の主婦(50)は約一カ月半、東京都内の病院で放射線治療に抗がん剤を併用する化学・放射線療法を受けた。「がんとわかったとき、最初は手術で取り除きたいと思ったが、放射線治療も治療成績が同等で、体力を落とさずに治療できると聞いて興味を持った」

 週に五日、下腹部に放射線照射を受け、週一回、膣(ちつ)から子宮頸(けい)部に器具を入れ病巣に放射線を当てる膣内照射を併用し、その効果を高める抗がん剤の点滴も受けた。痛みはなく、抗がん剤の副作用も起こらず、「楽な気持ちで治療に臨めた」。

 子宮頸がんは進行度によって治療法が変わる。初期は子宮頸部の一部を切除する子宮頸部円錐(えんすい)切除術、がんが進んだ段階では化学・放射線療法が第一選択肢になる。見解が分かれるのがその中間期にあたる1期と2期だ。日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会の治療ガイドライン(二〇〇七年)では、放射線療法より子宮摘出手術を優先している。

 東京大医学部付属病院(東京都文京区)の山下英臣助教(放射線科)によると、放射線療法を受けるために転院してきた患者を除くと、子宮摘出手術を受ける患者は、放射線療法を選択する患者の約五倍という。だが、欧米では放射線療法が選択されることが多い。

 治療成績は同等だ。山下助教は「施設間格差はあるが、手術でも放射線療法でも五年生存率は1期で約九割、2期で約七、八割と全く変わらない」と説明する。同院で一九九一年から二〇〇四年に治療を受けた、この病期の患者百五十二人(手術百十五人、放射線療法三十七人)の追跡調査でも、五年生存率はいずれも約八割と差はつかなかった。

 放射線療法で最近注目されているのが、前出の主婦が受けたような抗がん剤の併用(化学・放射線療法)だ。海外の比較試験では、併用した方が放射線単独療法より予後が良くなるという結果が発表されている。同病院の中川恵一准教授は「放射線単独療法と手術の治療成績が同等であることをふまえると、化学・放射線療法は手術より予後が良くなるといえる」と説明する。

 ただ、手術も放射線療法も妊娠・出産は困難になる。手術のメリットは「病変を摘出して病理検査を行うので予後が予想できる。再発する可能性が高いと考えられる場合は、術後に予防的に放射線療法を加える場合もある」と山下助教。ただし「結果として放射線療法を追加するのなら、手術は不要と考えることもできる」とも付け加える。脚のむくみなどリンパ浮腫も起こりやすくなる。

 放射線療法ではリンパ浮腫は起こらず、治療後のQOL(生活の質)が保たれやすい。だが放射線の影響で数年後にも直腸出血や膀胱(ぼうこう)炎などが起こり得るため、「長期間にわたって副作用の心配をしないといけない」(山下助教)。

 いずれの治療にも健康保険が適用されるため、費用に大きな違いはない。山下助教は「手術の説明を受けたらセカンドオピニオンで化学・放射線療法の情報も得た上で納得のいく治療法を選んでほしい」とアドバイスする。 (杉戸祐子)

 

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