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大弦小弦 (2008年7月18日 朝刊 1面)

 日本人女性の平均寿命は男性より七歳長く、この差は戦後拡大してきた。全国一の長寿を誇る北中城村の女性と、最も短い大阪市西成区の男性では実に一六・二歳の開きがある。

 女性が男性より長生きなのは世界的傾向だ。要因の一つに妊娠・出産による死亡率の大幅な改善が挙げられる。出産が命懸けだったその昔、男女の平均寿命は逆転していたという。

 世界十カ国の女性のお産を追った映画「プルミエール 私たちの出産」が桜坂劇場で上映されている。「生命の誕生」に密着したドキュメントは、それぞれの国の文化や女性の置かれた立場が映し出され、引き込まれる。

 医療機関に頼らず自然に産むことを選択した米国人女性は、「出産を味わう」のは女性の権利だと言う。出産のリスクの高いアフリカでは、安産を神に祈り、生まれる命と引き換えにいけにえをささげる。

 乳幼児死亡率など医療水準の違いにはため息をつくしかないが、赤ちゃんが生まれた瞬間、母親が見せる穏やかな笑顔に救われる。共通するのは「生」への感動と感謝。

 お産が日常の一部でなくなり、病院での医者任せの出産に慣れる中、あらためて自然な出産について考えた。自然性とは、人間が本来備え持つ産む力の発揮、生まれてくる力を引き出すことなのだと思う。(森田美奈子)




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