長い間の増税引き延ばしをうけ、財政危機は深刻さを増し、また少子高齢化の下で財政需要への要求も本格的に高まってきた。景気動向の問題からすぐにとはいかないであろうが、これから増税は避けて通れないであろう。
このような状況で、相変わらず増税の先延ばしを画策し、また不要論さえも展開する上げ潮政策を唱えるグループが、自民党で健在である。この主張によれば、高い成長率とともに歳出削減、そしていわゆる埋蔵金に大きく依存すべしという政策パッケージとなる。つまり総選挙も近いことだし、極力増税色を薄め国民の支持を得たいという考えが見え見えである。
私は、この上げ潮政策に基本的に反対である。高い成長率は誰でも歓迎であるが、それをどう実現するかが問題であり、また「上げ潮」があれば必ず「引き潮」もあるのだ。これまで40年もの間、財政再建を目指しながらいつも失敗の繰り返しであった。その最大の理由は、景気が良くなると自然に増加する税収をみて増税の必要性を認めず、景気が後退すると減税などにより財政赤字を増やすといった無責任な政策を採ってきたからである。
たしかに景気が良くなれば、税収増は期待しうる。しかしこの税収は不安定でいつ減少に転ずるか分からない。社会保障のように毎年確実に支出される経費の財源としては、制度的に税率引き上げあるいは控除引き下げのような増税措置によるものでなければならない。
国民に甘い選択肢のみ提示するのが、政治ではあるまい。これからの少子高齢化のもとで財政再建を進めるためには、国民がおのおの広く税を負担するしかないのだ。(安曇野)