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日本経済の行方
【社会】常勤医減る公的病院 新研修制、大学が『引き揚げ』2008年7月18日 朝刊 自治体や日本赤十字社などが運営する公的病院の常勤医師数が二〇〇五年、過去三十年で初めて減少に転じたことが分かった。〇六年には千人以上減少。〇四年四月から始まった医師の新しい研修制度の影響で、各地の大学病院が派遣先の公立病院などから医師を引き揚げる動きを加速させている。専門家らは「新制度が自治体病院の医師不足の大きな原因と裏付けられた」と話している。 新人医師の研修先は従来、大学病院に集中していた。新制度では、研修医が研修先を希望できるようになり、症例数が多く研修内容や待遇などが充実した大都市の民間病院などに集中。大学病院や関連病院が人手不足となり、地方の病院に派遣していた医師を引き揚げるようになった。 厚生労働省が毎年作成する「医療施設調査・病院報告」などを一九七六年から〇六年まで分析した。それによると、医師は毎年三千五百−四千人程度の自然増を続けている。しかし、公的な医療機関の常勤医は新しい医師臨床研修制度導入の翌〇五年十月時点で、初めて七十四人(0・2%)減少。〇六年は千九十人(2・5%)減り、全体で約四万二千四百人になった。 うち市町村立病院は〇五、〇六年の二年間で計八百二十一人(4・1%)減り、計約一万九千百人。都道府県立病院も〇六年に八百三十八人(8・1%)と大きく減少。計約九千五百五十人になった。 各地の病院では非常勤医を増やすなどして穴埋めしているが、非常勤医を合わせた数でも、〇六年に初めて約千七百五十人(3・5%)が減少した。 医師総数は〇六年末で約二十七万八千人。毎年七、八千人の医師国家試験合格者がいる一方、その半数程度が退職や死亡している。 待遇改善も進まず伊関友伸・城西大経営学部准教授(行政学)の話 公的病院の医師の減少は、新臨床研修制度に伴う大学病院の医師引き揚げが影響しているのは間違いない。自治体病院は医師をほぼ大学の医局に頼っていた。今も減少傾向は続いている。役所的な体質で、医師の過重労働や低い待遇に対する対応も遅く、それが拍車をかけた。 <臨床研修制度> 医師免許取得後に、医療現場で2年以上の診療(臨床)経験を積む制度。旧制度では、大学医学部人事や地方病院への医師派遣を掌握していた大学の医局に研修医が集中。専門分野に偏った研修や低賃金、過酷労働といった問題を抱えていた。2004年度からの新制度では研修先が選べるようになり、内科など基本7分野で臨床研修に専念できるよう改善された。
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