芥川龍之介が子供たちへ書き残した直筆の遺書(東京・目黒区の日本近代文学館で)=上甲鉄撮影 |
「将来に対する唯(ただ)ぼんやりした不安」という言葉を残して自殺した作家、芥川龍之介が妻や子らにあてた遺書4通が、東京都内の遺族宅から見つかった。
東京・駒場の日本近代文学館で研究者らを対象に初公開される。
「わが子等(ら)に」と題した遺書では、「一 人生は戦ひなることを忘るべからず」と記した後に、「死に至る」という言葉を「戦ひ」の前に挿入するなど、生涯最後の推敲(すいこう)の跡がありありとわかる。
遺書は、紺色の線で縁取りがされた愛用の松屋製の200字詰め原稿用紙に、黒色のインクで書かれていた。同文学館の中村稔理事長は「肉筆からは、芥川さんが死に向かっていく気迫をつくづく感じた。一見書き流しているようだが、書体はきちっとして乱れがない。死ぬということの覚悟は、これほど強いかと思う」と話している。
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