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【社説】

公文書管理 霞が関改革の契機に

2008年7月18日

 公文書管理の抜本改革を求める中間報告が政府の有識者会議でまとまった。国民共有の「財産」が役人の世界でずさんに扱われていいはずはない。直ちに実行し「霞が関」を変える契機としたい。

 公文書とは、政府や地方自治体の公務員が職務遂行の過程で作成する記録などのこと。

 行政にかかわる情報をしっかりと保管し、国民が自由に接触、活用できることが民主社会の鉄則だ。政策決定の経緯を調べることができるし、後世の研究家にとっては歴史を検証する手掛かりになる。

 にもかかわらず、昨年来、私たちは役人のいいかげんな管理の実態を目の当たりにしてきた。年金記録不備、C型肝炎発症者の資料放置…。福田康夫首相は「言語道断」と切り捨て、公文書管理の強化策を求めていた。

 中間報告では、国立公文書館の機能・権限を強化する一方、文書の作成から保存・廃棄までの流れについて、政府内の統一ルールをつくるよう提言している。政府は来年の通常国会に関連法案を提出したい考えだ。

 これまで文書管理の運用は各府省任せ。最長三十年の保存期限が切れた文書を公文書館へ移管するか破棄するかなどは、役所の裁量に事実上委ねられてきた。国民の目に触れると都合の悪そうな資料は、次々と捨てられているのではないか。移管率が年間1%に満たない事実がそうした疑念を抱かせる。倉庫、ロッカーなどへの放置が多いことも看過できない。

 これでは公文書の名が泣こうというものだ。統一ルールをつくるのは当然だが、官僚主導で決めるようでは、情報の透明度が高まることは期待できそうにない。中間報告が指摘する通り、第三者機関の設置は不可欠だろう。

 公文書館強化では、現在独立行政法人である公文書館を国の組織に戻すなど改組し、職員も現在の定員四十二人から数百人規模に拡充させるという。職員数は米国二千五百人、英国五百八十人などと比べると、見劣りしている。スタッフの充実は検討に値する。国民の利便性を高めるため、電子化の促進や公開原則の徹底も大切だ。

 何より求められるのは、公務員が未来にも及ぶ国民への説明責任と真正面から向き合うことだ。官僚が陥りがちな閉鎖的体質を改善する。その自覚なくしては、いくら公文書管理の仕組みを変えても、画竜点睛を欠く。

 

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