中国は5月に四川大地震に襲われたが、今年上半期の国内総生産(GDP)は何とか2ケタ成長を維持した。一方でインフレ圧力はむしろ強まっている。株価も昨年10月のピーク時の半分以下の水準で推移している。8月の北京五輪を挟んで下半期も高成長が続くのか。中国経済の先行きは必ずしも楽観できない。
中国国家統計局は17日、1―6月期のGDPが実質で前年同期比10.4%増になったと発表した。中国の成長率は2007年が11.9%と、5年連続で2ケタを記録してきた。だが、今年は1―3月期が10.6%、4―6月期が10.1%と徐々に減速してきている。
米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題による米経済の低迷で輸出が鈍り、外需が落ち込んだのが響いた。1―6月期の貿易黒字は前年同期比11.8%減の990億ドル強にとどまるなど、外需頼みの成長路線に限界があることも鮮明になってきた。
インフレの懸念はさらに強まっている。1―6月期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比7.9%の上昇となった。今年の政府目標「4.8%以内」の達成は絶望的だ。
中国人民銀行が05年7月21日に人民元を対ドルレートで2%切り上げてから3年になる。今年4月に初めて1ドル=6元台に上昇、切り上げ後の対ドル上昇率は約18%に達し、今週も最高値を更新した。
当局はインフレ対策の一環で人民元の上昇を容認している。だが、元高は「熱銭(ホットマネー)」と呼ばれる投機資金の大量流入につながり、過剰流動性がインフレを加速させる悪循環になる恐れもある。
中国政府はインフレ抑制に向け金融引き締め策を続けているが、引き締めすぎれば、景気の後退を招きかねない。世界的な景気減速と元高による輸出環境の悪化から脱するには外需だけに頼らない成長戦略として個人消費など内需を拡大する構造改革こそ急がなければならない。
中国は今年、GDPでドイツを抜いて米国、日本に次ぐ世界3位の経済大国に浮上するだろう。中国政府は内需振興、インフレ抑制、株安対策など多元方程式を解くような難しい経済運営を迫られてもいる。