原油先物価格が最高値を更新するニューヨーク商業取引所=ロイター。穀物高騰にも投機資金の影響が指摘されている
経済産業省は15日、08年版通商白書を公表した。高騰が続く原油、銅、小麦、トウモロコシの4品目の市場価格について、「実需」と、投機マネーや生産国の輸出規制など「それ以外」の要因に分解。5月時点の価格のうち、25〜48%までが「実需以外」の押し上げ効果と分析した。
白書によると、資源や食糧価格の高騰が始まったのは00年前後から。00年4月から08年4月までの間に原油が4.4倍、銅が5.2倍、小麦は3.4倍、トウモロコシは2.6倍に跳ね上がった。
その要因として、(1)中国・インドなど新興国の需要急増(2)巨額の投機マネーの商品市場への流入――など「様々な要因がある」と指摘。近年の急激な高騰は「投機マネーの流入が大きな役割を果たしていると考えられる」とした。
原油については、08年5月時点の1バレル=125.5ドルのうち74.7ドル(60%)が「需給バランスで説明できる部分」と分析。残りの50.8ドルは「需給で説明できない要因」と切り分けた。銅も同様に1トン=8400ドルのうち需給は6300ドル(75%)、残りは2100ドルとした。
一方、小麦1ブッシェル=7.8ドルのうち5.1ドル(65%)が「(需給に直結する)在庫変動のみで説明できる部分」。2.7ドル分は「天候変動や生産国の輸出規制、投機マネーなど複合的な要因」とみた。トウモロコシも1ブッシェル=6ドルのうち前者が3.1ドル(52%)、後者2.9ドルと分析した。
需給面では、原油は世界の需要増加量のほとんどが中印など新興国が占めた。食糧も新興国の需要増の影響があるが、新興国の所得増に伴って飼料穀物を大量に使う肉類の消費が増え、トウモロコシを原料とするバイオ燃料生産の増加などもある、とした。
白書は投機資金流入の背景についても分析し、(1)00年以降の世界的な低金利が続くなか、ハイリスクの株式・債券と値動きが異なる一次産品が「保険」となった(2)米サブプライム問題以降、中長期的な需給切迫が見込まれる資源・食糧が有望な投資先として注目された――ことを挙げた。
一方、世界経済の現状について、中国、インドなど40億人の新興国が10億人の先進国と一体化を強め、「50億人の新市場が成立した」と分析。世界経済の「新たな原動力」と位置づけた。(村山祐介)