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AFTER ROUND 第139回芥川賞・直木賞受賞作発表を聞いて
7月15日の夜、東京・築地の「新喜楽」で選考会が開かれ、第139回芥川賞直木賞受賞作が決まった。
発表を受けて、大森望、豊崎由美のメッタ斬りコンビから緊急コメントが届きましたのでご紹介。
第139回芥川賞 楊逸『時が滲む朝』 |
当落予想 ◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴 |
作品評価 A〜D |
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大森 | 豊崎 | 大森 | 豊崎 | |
◎ | ◎ | C- | B- |
受賞予想対談はこちら
第139回直木賞 井上荒野『切羽へ』 |
当落予想 ◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴 |
作品評価 A〜D |
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大森 | 豊崎 | 大森 | 豊崎 | |
○ | ▲ | C | B |
受賞予想対談はこちら
そうか、オレがCをつけると受賞するのか!……と気づいてもすでに手遅れですが、どっちみち大勢に影響なし。前回の興奮度にくらべたら、今回は一回休みも同然で、子供と西葛西のラーメン屋「八兵衛」で冷やしざるつけめんを食べているうちに芥川賞が決まり、家に帰って子供を風呂に入れているうちに直木賞が決まってました。ふうん。
しかし、下馬評どおりだろうがなんだろうが、芥川賞に楊逸さんを選んだのは正解。毀誉褒貶、賛否両論が渦を巻き、たぶんたいへんにぎやかなことになり、単行本もばんばん売れることでしょう。このさい、北京オリンピックにあやかって大々的に……じゃなくて、文壇からも北京オリンピックを盛り立てようではありませんか! そして2016年には東京でオリンピックを! 我愛中国!! 我要民主!! I Love You!!!
一方、直木賞は井上荒野さん(アライユキコさんいわく、"熟女祭り"だって)。私が本命に予想した荻原浩さんは残念なことになりましたが、作風としては『切羽へ』のほうが直木賞ど真ん中なので、これまた順当と言えば順当。全身小説家・井上光晴の娘という話題性もあるし(ちなみに「切羽」はお姉さんの名前でもあるとか)、既婚者には切実な小説なので、こっちも売れそう。伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』が抜けた穴をおなじ新潮社の『切羽へ』が埋めたと思えば、納得の授賞でした。
●あくたがわしょうについて(かんじなんかつかってやらねえよ。つかうかちねえよ)
盗んだバイクで走り出し、行く先を文藝春秋に定めて、金属バットでもって社屋の窓という窓を叩き割ってもいいですか。だめですか。そうですか。
尾崎豊と青木さやかと北京オリンピックが大喜び。トヨザキ、がっかり。予想が当たって、超がっかり。ナッキー(池澤夏樹)に、がっかり。よーこたん(小川洋子)に、がっかり。ろみろみ(川上弘美)に、がっかり。
……身を挺して授賞を阻止してほしかったのにぃ。
この銀河級のがっかりに責任を取って、今日から1週間、日本全国の中華料理店は全品半額にしてほしい。あと、ユニクロは作中に出てくる例のTシャツを作って販売してほしい。したら、がっかりしつつも、買う。
●直木賞について
大変よくできました!
相手関係に恵まれたとはいえ、これは納得。運も実力のうち、です。大森さんの「なんだよ、やっぱり文藝春秋本かよ。ちぇ」という負け犬の遠吠えを聞けないのは残念ですが、素直に祝福できるまっとうな結果と申せましょう。
つまり、物語ではなく“文体”を取ったんですな。う〜ん、見識(ニッコニコ)。前回の『私の男』といい、この『切羽へ』といい、あのダメェな直木賞が一体どうなっちゃったんでしょうか。選評読むのがすっげえ楽しみだよっ。