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更新 2008.4.6
学災連の行事・被害者の裁判・文部科学省などとの交渉や、お知らせを
掲載します。
情報内容
※ 学校災害 電話相談日の日程
2008年4月〜08年10月
・ 29回学災連総会 アピール
・ 29回学災連総会とシンポジウム 終了
10月13・14日 福島県郡山市で
・ K君の「一時保護」解除を求める
学災訴訟での,、「お礼とご報告」
・ 「いじめ自殺」で学災連の要求が実現
07年7月6日
・最高裁が差し戻し判決 06年3月13日
高松高裁で再審理となる
高知・北村光寿さん落雷事故訴訟で
学校災害 電話相談
08.4月〜08.10月の相談日程
〇 08年4月から、08年9月までの、学校災害相談日です。
学校(幼稚園・保育所から大学まで)での災害・事故について、
お困りのこと、ご相談がありましたら、どうぞご遠慮なく電話して
ください。
◎電話番号 03−3230−1870
〔「学校災害の相談」と言ってください〕
◎FAX 03−3230−1870
〔前日までに、相談内容をFAXで送信
してくだされば、準備しやすくなります。〕
◎時間 11時〜15時 (弁護士は、14時より待機します)
○ 相談日
2008年
4月 8(火) ・15(火) ・25(金)
5月 6(火) ・15(木) ・27(火)
6月 5 (木) ・ 1 7 (火) ・ 2 5 (水)
7月 8 (火) ・ 1 5 (火) ・ 2 5 (金)
8月 5 (火) ・ 1 5 (金) ・ 2 5 (火)
9月 5 (金) ・ 1 6 (火) ・ 2 5 (木)
29回学災連総会 アピール
社会の未来を担う子どもたちの健やかな成長のために力を注ぐ
ことは、社会全体が負うべき責任です。学校災害に関しても、そ
のことを願う人々によって、さまざまな角度から改善の努力が払
われてきました。それにもかかわらず、平成18(2006)年
度日本スポーツ振興センターの災害共済給付件数は216万件に
もおよびます。死亡は74件、後遺障害は506件で、依然とし
て深刻な状況が続いています。
子どもと直接接する学校現場の状況も、深刻な矛盾を抱えてい
ます。管理教育が進む中で、教職員が報告文書や資料の作成など
に追われ、子どもたちと向き合う時間を大きく制約されていると
いう悩みが、どこでも共通して出されています。
また、「構造改革」の名で弱肉強食のルールが浸透する社会の
中で、貧困と格差の広がりが子どもたちにも深い影を落としてい
ます。いじめや校内暴力などに対して、これを教育的に対処・解
決するのでなく、警察権力を導入し犯罪として押さえ込もうとす
る動きや、虐待防止のためとの理由で児童相談所の権限強化によ
る行きすぎた「一時保護」が新たな問題を引き起こすなど、教育
への行政の強権的な介入も強まっています。
学校災害が発生した場合、学校や教育委員会の対応に被災者が
不満や不信感を抱くことも多く、訴訟事件に発展するケースも少
なくありません。その最大の理由が、学校・教育委員会の責任回
避と隠蔽体質によることが共通して指摘されていますが、このこ
とが事故対応の不十分さを生み、原因究明と再発防止策の徹底を
妨げる最大のネックとなっています。
こうした状況の下でも、医療給付期間を7年から10年に延長さ
せたのに引き続き、学災連が強く求めてきた「学校外での自殺」
に対する死亡共済見舞金給付について、文部科学省が今年7月、
「いじめ・体罰」による自殺に関し、「学校管理下(校舎および
校地内)以外でも適用する」旨の改正を行い、大きな前進を見ま
した。
私たちは、学校災害への対処を抜本的に改善するためには、次
の重点施策の実現が不可欠だと考えます。
○ 学校の安全対策を「通達行政」にとどめず、安全基準を
「学校安全法」「学校安全条例」「学校安全指針」のような
かたちで法的に整備すること
○ 無過失責任制による学校災害補償制度の充実と、航空・
鉄道事故におけるような事故の原因究明のための第三者機
関を設置すること
これらの制度の実現は、学校災害に直接かかわる被災者、教職
員、教育行政が、対立するのではなく、子どもの人権―学ぶ権利
と健やかな成長を保障するという同じ方向で協力し、取り組んで
いく前提条件となるでしょう。
同じ思いの人たちとの輪を広げ、この大切な願いを実現するた
め、学校災害から子どもを守る運動を大きく前進させましょう。
2007年10月14日
学校災害から子どもを守る全国連絡会29回総会
第29回 学災連総会と シンポジウム
10月13(土)・14(日) 福島県郡山市で開催・終了
今年度の学災連総会と、総会記念シンポジウムは、多くの皆さんのご参加・
ご協力により、充実した二日間の議論などを終えることができました。
◆ シンポジウム 10.13(土)
「子どもの目線から学校の安全を問い直す」
◆ 交流懇親会 13日(土)
◆ 全国学災連 第29回 総会 10.14(日)
◎ 学災相談 13時〜15時
K君の「一時保護」解除を
求める学災訴訟
ご理解・ご協力と署名、
「支援する会・準備会」参加のお願い
お礼とご報告
朝夕に季節の風を感じるこのごろ、みなさまお元気でお過ごしの
ことと存じます。
猛残暑のなか、緊急のお願い「K君の『一時保護』処分
取消の公正判決を求める要請」署名にご協力くださいましてありが
とうございました。おかげさまにて、短期間にもかかわらず、当日ま
でに全国から639名の方々の署名が寄せられました。
頂いた署名は八月三十一日の東京地裁での第二回公判の始ま
る前に無事手渡すことができました。みなさまのご支援・ご協力に
心から感謝申し上げます。
しかし、事態は進展せず、K君を取り戻すことはできません
でした。次回公判は九月二十五日、非公開で「裁判の進行協議」
ということになりました。
すでにK君が一方的に「一時保護」されて五ヶ月が経とうと
しています。K君が、今、どこにどうしているのか、無事・元気
なのか、親である浩之さんにも、おじいさん・おばあさんにも、代理
人である弁護士にもだれにも分かりません。一番大切な当事者で
あるK君がなにをどう思い考え、なにを願っているのか、一切
分からないのです。「子どもの人権」を無視し、こんな理不尽、非常
識なことが、この世の中にあっていいのでしょうか。
公判終了後、参加者の話し合いのなかで九月二十五日まで手を
拱いているわけにはいかない、みんなで「足立児童相談所に交渉
に行きましょう」と決まりました。早速九月六日に行ってまいります。
私たちは、父親の訴えに応え、みなさんとともにK
君を取り戻すための、さらに一回り大きなたたかいが必要と考え、
「K君の『一時保護』処分取消の公正判決を求める会・準
備会」を結成いたします。
みなさんのお力をお貸しください。ご支援・ご協力を心からお願い
いたします。
1. ひきつづき裁判所に対する「要請署名」にとりくみます。一
枚でも、一人でも多くの署名を集めてください。
次回公判9月25日提出――23日までにお送りください。
2. 「K君の『一時保護』処分取消の公正判決を求
める会・準備会」にご参加ください。
2007.9.5
K君の『一時保護』処分取消の
公正判決を求める会・準備会
10年来の要求がついに実現
全国学災連 鈴木加津美
いじめによる自殺の問題で、全国学災連が10年来要求してきた要
求が、実現することになりました。
いじめ自殺など教育活動に起因するものは、『学校管理下』以外
でも死亡見舞金をを給付せよ、という要求が、ついに実現、一定の
前進をさせることができました。
文科省との交渉では、「自殺するのであれば、せめて親孝行のた
めに、学校で死ねよ、と教えろとでもいうのか」と、厳しく追及してき
たところです。
高校生には適用しないとか、いじめの存在を認めた場合に限ると
か、2年間だけ逆のぼっての適用という制限付きです。
まだ不十分な点は残されていますが、大きな前進だといえます。
・<「センター省令の一部改正について」を引用します。>
「センター奨励第24条第3号を改正」
「これまで、学校の管理下でのいじめ等に起因する小中学生の自
殺の場合には、自殺が学校の管理下で発生した案件については死
亡見舞金を支給してきたところです。
今回の省令改正は、このような場合について、自殺の発生が学校
の管理下か否かにかかわらず、災害共済給付を支給することができ
るようにするため、所要の規定の整備を行うものです」
『施行期日 平成19年7月9日
(平成17年7月9日まで遡及して適用)』
最高裁が差し戻し判決 06年3月13日
北村さんサッカー落雷事故裁判で
一審・二審の原告敗訴の後を受けて、最高裁は原告の主張をほぼ全面的
に認め、高松高裁へ差し戻すという、画期的な判決を出しました。
裁判は、あらためて高松高裁での審理に入ります。
最高裁への6400通を超える上申書も、北村さんを支える大きな力になり
ました。
高裁へも、さらに多くの公正判決を求める要望書と、署名を集めて送るこ
とが大切です。
今後も、できるだけ新たな情報をお伝えしたいと思います。
… … … … … … … … … … … …
・北村みずほさん(光寿さんの母親)と、津田玄児弁護士の、この事故と裁判に
ついての想いと、二審判決の矛盾・問題点の指摘、二審判決後の新聞記事は、こ
のページの下部に載せています。
文部科学省と交渉 06年3月23日
最高裁判決を受けて、切実な要求で話し合い
要 請 書
謹啓 日ごろ教育行政にご尽力なされていることに敬意を表します。
今日、学校災害発生件数は毎年120万件を超え、共済給付件数は、つい
に児童・生徒の減少化の中で200万件時代に突入しました。(205万件余)
学校災害の発生率の上昇しており、小・中学校の学校災害給付率が右肩
上がりの増加傾向は止まりません。抜本的な再発防止策が緊急に求められて
います。再発防止として安全対策の要となる学校安全基準とその法制化です。
しかし、国の学校安全政策は、「通達行政」「手引き行政」の域を出ず、本
格的な学校災害防止のための学校安全基準とその法制の整備に向かっては
いません。学校安全最低基準の国に対する義務付けの必要性、総合的な学校
災害救済機関としての法定化の必要性、その具体的姿など解明する検討が必
要と思います。
子どもたちのいのちと人権、安全など教育環境を守る運動を続けてきている
私たちとしては、大きな責任を感じるとともに、国・地方自治体の教育行政への
真摯な対応を心から求めるものです。
その原点ともなるべき根本原則・根本的視点が、この3月13日、高知・北村
サッカー落雷事件への最高裁判所判決として示されました。
雷雨の中、サッカーの公式戦で落雷にあって全盲、両下肢機能の全廃、両
上肢機能の著しい障害、言語障害等の後遺障害をおいながら、九死に一生を
得た元土佐高校生・北村光寿君に、「教育活動の一環として行われる学校の課
外のクラブ活動においては、生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するの
であるから、担当教諭は、できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を
具体的に予見し、その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置
を執り、クラブ活動中の生徒を保護すべき注意義務を負うものというべきであ
る」「黒く固まった暗雲、雷鳴、放電が目撃されていたのだから、国見教諭として
は、落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であ
ったというべきであり、また、予見すべき注意義務を怠ったものというべきであ
る。」
「なぜなら、平成8年までに多く存在していた落雷事故を予防するための注意
に関する文献上の記載等の内容と相容れないものであり、当時の科学的知見に
反するもので、生徒を保護すべきクラブ活動の担当教諭の注意義務を免れさせ
る事情とはなり得ないからである。」と、高知地裁、高松高裁の「被上告学校の損
害賠償責任を否定した」「原審の判断は破棄を免れない」と学校の責任を全面的
に認めたものでした。これは、雷だけでなく、すべての野外活動の指導者に対し
て、児童・生徒・学生の生命こそ第一、安全こそ第一を当たり前ながら「絶対命
令」した判決といえます。
文科省におかれましては、この最高裁判決の根本原則・精神を子どもたちの
指導の中心にすえ、子どもたちも教職員も安心して教育活動ができるよう教育行
政をなされるようご配慮をお願いするものです。
私たちの切実な願いが政治に反映され具体化されることを心から願い、さまざ
まな課題があるなかで、とくに下記項目について誠意をもって具体化されますよう
要請いたします。
要請事項
1、「日本スポーツ振興センター法」の改善を求めながら、究極において無過失
責任制による「学校災害補償法」制定と学校安全基準の法制・条例化を図る
よう、「学校安全法」「学校安全条例」の制定を関係方面にはたらきかけること。
2、独立行政法人化による日本スポーツ振興センターになっても、学校災害の防
止、救済などの機能を低下させないよう、「センター法」の改善・拡充について
関係諸省庁にはたらきかけること。
(1) 給付期間・内容を改善すること。とくに医療給付を10割に戻すこと。
(2) 給付期間内では救済できない法の不備を特例で救済すること。
たとえば、眼球、角膜移植等の問題、前歯3本折り18歳前後近くでない
と根本治療ができない問題など
(3)明らかに、教育活動が原因と推定できる「学校管理下」以外の自殺につ
いても、給付対象にすること。
3、子どもの安全、人命尊重第一の立場にたって、熱中症事故、プール事故(給
排水口、飛び込み事故など)、落雷事故、山岳事故等について再発防止の手
立てを早急に講じること。そのため野外活動に関する「通達」を発出すること。
4、学校災害において、人命救助を最優先して救急車を呼ぶよう関係部署を指
導すること。
5、子どもの成長段階という特殊性を考慮して、傷害年金の適用を受けられるよ
う関係機関に働きかけること。
2006年3月23日
文部科学大臣 小坂 憲次 様
学校災害から子どもを守る全国連絡会
代表委員代表 浜野 博
……………………………………………………………………………
最高裁に向けて
大切な子供の命を守らなければ・・・
北村みずほ(光寿の母)
事故から8年が過ぎた今も、光寿は目が見えず車椅子での不自由な生活をし
ています。視覚障害者学校の先生方に助けられて、自分で出来ることを1つまた
1つと獲得して、障害のあるからだと共に、必死で生きようとしています。
高裁の判決は、生徒の安全や人権を軽視したものでした。クラブ活動中の事
故なのに、その責任がどこにもないということには、到底納得することができませ
ん。もし、この判決が確定すれば、毎日学校に通う子供たちの命は、いったい誰
が守るのでしょうか。子供は家庭の、社会の宝です。明日を担う大切な子供たち
の未来が輝くような世の中でなければいけないと思います。
私たちは家族で話し合い、一大決心をして、昨年11月10日最高裁へ上告受
理申し立てをしました。高裁の判決を認め、裁判を途中で断念したら、光寿は一
生納得できない人生を送らなければなりません。困難・苦難が降りかかっても逃
げることなく向き合い、納得 できるまで遣り通さなければなりません。
光寿の将来のことも、裁判のことも一条の光を求めて親子でともに歩み続け
たいと思います。光寿の将来のことを考えて不安になってしまう母と、将来のこと
を考えると不安でたまらなく今しか考えられない光寿とで、時にはけんかをしなが
ら、納得できるまで「あきらめない!やりとおす!」という目標に向かって歩み続け
ようと思います。それが私が光寿に残してやれる一番大切な宝物と思っています。
自己矛盾を多数かかえる
ずさんな北村裁判控訴審判決
弁護士 津田玄児
平成16年10月29日高松高裁は再び北村さんの請求を退けました。判決は、
西南の方向に黒く固まった暗雲が立ちこめ、雷鳴が聞こえ、雲の間に放電が起
きるのが目撃される中で試合が開始されたことを認め、市民図書館にある多くの
書籍や、事故事例の報道などを引き、雷雲が発生し微かにでも雷鳴が聞こえる
場合には直ちに安全地帯に退避し、それがおさまってからも20分は退避を続け
なければならないという科学的な知見に従って、直ちに試合を止め退避しなけれ
ばならない場合にあたると認定しました。
しかし、判決はこれに続いて、前の試合で、頭上に暗雲が立ち込め豪雨が降
っていたのに、この試合の開始時には雨が止んでいた。雨がやみ、空が明るくな
り、雷鳴が遠のくにつれ、落雷の危険性は減弱するとの認識は一般的なので危
険は予見できないとし、学校等の責任を認めず、北村さんの請求を退けたので
す。
判決は、常識に反する奇妙な認定をいくつもしています。
第一に、判決は、当日北村君たちは、雷雲・雷鳴を見聞し、落雷防止のため、
首にしていたペンダントを外したりしていることを認定しています。引率の教師が
危険を予見するのは無理だというのに、生徒たちは危険を予見していたという矛
盾した認定です。
第二に、判決は、危険を予見すべきかどうかについて、引率にあたった教師
ではなく、平均的なスポーツ指導者の認識を論じています。成長途上にある未熟
な子どもを預かる教師と、それぞれが責任を持てる人を相手にするスポーツ指導
者では、責任の度合いが違います。摩り替えて誤魔化したのです。
第三に、判決は雨が止み、明るくなり、雷鳴が遠のくにつれ、落雷の危険性は
減弱するとの認識が一般的だと認定しています。しかし同じ判決は、これと矛盾す
る多くの図書館に収蔵され誰もが読める、「雷の放電の長さは,平均すれば6km
であるが,長いのは15 kmもとぶ。ごろごろと雷鳴が聞こえるのは、10kmぐらい
とされている。15kmといえば、個々の積乱雲より大きいくらいである。」という記述
も引用しています。本来ならこの記述を一般的認識として良いはずなのに、しない
理由には触れていません。
第四に、判決は、直前の状況について、暗雲が立ち込め、遠雷が聞こえていた
としか認定していませんが、同じ状況について、当日のこのグランドの責任者が「真
っ黒けな雲が向こうからずーっとこっちにくる」と、生徒の引率者も、「どんよりした雲
が現れて、また一雨あろうかな」と思われると述べている証拠は無視しています。な
ぜこれらの証拠を無視したかについての説明は全くありません。判決は、主催者や
グランドの提供者についても同じような奇妙な論旨で請求を退けていますが、紙数
がありません。
都合の悪いものには目を瞑り、都合の良いものだけをつなぎ合わせ請求を退け
た、学校にわが子を預ける親にとって黙ってはいられない杜撰な判決です。上告受
理を認めさせるため、ご一緒に全力を尽くしたいと思います。
雷が一瞬にして
ティーンエイジャー(10代の少年)の人生を変える
1996年夏。台風が大阪府高槻市に接近しており、雷注意報が出されていた。
そのような状況の中で、高校サッカー大会が開始された。北村光寿さん(高知
県高知市から参加)がフィールドに出ていたその時、事故が起きた。雷が彼を直
撃したのだ。この一瞬で、北村さんの人生は変わった。脈拍、呼吸が止まり、30
分間心肺停止状態となった。心肺蘇生に成功し、心臓は再び動き出したが、意識
は戻らなかった。医者は、北村光寿さんの母みずほさんに「死を覚悟していてくだ
さい。」と告げ脳死についての説明をした。
奇跡的に、光寿さんは昏睡状態から徐々にめざめ、2ヵ月後意識を回復した。
しかし、事故は深刻な障害を彼に背負わせた。明るさと暗さはわかるが、ほとんど
の視力を失い、手足が自由に動かせず、言語障害が残った。車椅子の生活となっ
た。
18ヶ月間にも及ぶ苦しいリハビリが続いた。
ある日、北村光寿さんは引率教師に「僕の体がこうなったのは、先生の責任で
す。僕の体を元に戻してください。」とはっきり抗議した。母が訴訟を起こす決心をし
たのは、この時であった。「親として、学校が安全保護義務を無視したことを訴えな
ければならない」とみずほさんは決意した。
みずほさんとご主人は、落雷の危険を予見し、試合を中止しなかったことで、学
校と高槻市、同市体育協会を相手取り、約3億円の損害賠償を求めた。しかし、2
003年の高知地裁に続き、高松高等裁判所におらない。」というものだった。
「教師らは雷が落ちると思わなかったからというのは、棄却理由にならない。」と
母は言う。
昨年11月10日、北村さんらは最高裁に上告した。
警察庁の調べによると、2002年の落雷事故は84件。内1人死亡、16人負傷。
2001年には64件。その内4人死亡、13人負傷。
大阪大学工学部通信工学科、河崎善一郎教授は次のように語った。「事故件数
が比較的少ないため、人々はあまり雷に注意しないのでしょう。人々は雷の恐ろしさ
と避難方法を学ばなければなりません。しかし、人はすぐ忘れるのです。日本では、
特に都会ではビルに逃げ込めば落雷からは簡単に身を守ることができます。それで
も100パーセント安全だとは言い切れません。一生箱の中で生活することはできま
せんからね。
身を守るためには、大人や子供に落雷の危険性を教育することが大切です。
雷鳴が聞こえるということは、雷雲の下に立っているということです。雷雲の下に
立っているということは、落雷の危険性が常にあります。」25年間雷研究をし、日本
大気電気学会会長でもある河崎教授は続ける「雷鳴が聞こえたら、ビルや車の中に
避難しなければなりません。雷が落ちると、平均して30,000〜40,000アンペア
の電流が流れます。これは2,000件の家が一度に使う電気量に相当します。」
また、「人体への避雷」を長年研究開拓し、30年この分野での第一人者である
北川信一郎氏は次のように述べた。「雷はたいてい人の頭部を直撃します。電流は
脳を破壊し、一瞬にして心臓を停止させます。雷は北村君の身に着けていた、金属
のお守りのペンダントに落ちたと言われましたが、それは間違いです。電流が体を
通る時、金属のアクセサリーの部分から電流は放出され、皮膚は焼け焦げます。落
雷にあった人の約80パーセントは死亡します。」
北村光寿さん(現在24歳)は今、視覚障害者の学校に通い、コンピューターの勉
強をしている。友人らのように、将来大学への進学を希望している。
「息子とともに、この裁判を闘っていきたいと思います。これは息子だけの問題で
はありません。学校での安全や命の大切さを人々に訴えていきたいと思います。二
度とこのような事故が起こらないよう、この裁判が警鐘になると信じています。」と、
母みずほさんは語った。
2004.12.31
ジャパンタイムズ〔日本最大の英字新聞〕より
第26回 学災連シンポジウム
ふえる学校災害 安全基準の制定を
2005年11月27日、神奈川県横浜市で「子どもが安心して生き、育つ環境を
―地域に根ざす学校と安全・防犯」をテーマに、学校災害から子どもを守る全国
連絡会(全国学災連)のシンポジウムがひらかれました。
児童・生徒の減少に反比例して増えつづける学校災害、昨年度の日本スポー
ツ振興センターの共済給付件数がついに196万件にも達しました。
「開かれた学校づくり」と「管理強化」のはざまで、学校における子どもたちや教
職員の生命・健康を真に守る目的で「学校安全法」要綱案が提案されました。こ
の要綱案を作成した、日本教育法学会・ 学校事故問題研究特別委員会委員長の
喜多明人さん(早稲田大学教授)は、日常の安全を学校だけでは守りきれない、
子どもの人権として、安全に教育を受ける権利の保障や、学校安全最低基準の制
定など国や自治体の責務、また学校や地域の役割など要項の内容を報告、「学校
安全法の制定に向けて社会的に広めていくのは、市民や運動体です」と強調され
ました。
再発防止をねがい
八年前、サッカーの試合中に落雷事故で失明と下半身に重い障害を負った高
知市の北村光寿さんのお母さんは、これからまだつづく裁判のたたかいと、光寿さ
んが事故後七年半経って「あきらめないでやれることを」と盲学校に通い始めたこ
とを報告しました。
大阪教育大学付属池田小学校事件の被害者の遺族は、事故から学ぶこと、今
後に生かすことの報告のあと「学校の安全を規定する法律はいまの日本にはない。
通達行政のみで、だれが子どもを守るのか、安全対策の確立は一刻の猶予もない。
再発防止のため、第三者機関の設定をふくめた、ひと・もの・かねの充実を」とうっ
たえました。
横浜市立間門小学校の前田さんは、文部科学省の地域ぐるみの学校安全推進
モデル校の事業を、「子どもをまん中に、教職員が労力を惜しまずにつねに地域との
連携、努力を推進している」と報告しました。
兵庫県川西市立中学校ラグビー部の練習中、熱中症で息子さんを亡くされた宮
脇さんは、調査権限を保持し、その結果を意見表明・勧告できる第三者機関が必要
であると強調しました。
被害者や遺族の方がたの話は、二度とわが子と同じ思いをさせてはならないと
の重いメッセージとして、心にずっしりと残りました。
全国学校事務職員制度研究会 木村 伸子
「母親しんぶん」04.12.15
増えつづける学校災害への救済を
文部科学省・日本スポーツ振興センターへ要請
2004.2.19
学校災害から子どもを守る全国連絡会(学災連)は2月19日、14名で文部科学省
および日本スポーツ振興センターと交渉しました。
@ 災害共済給付期間内では救済できない法の整備を、特例で救済するように
A スポーツ振興センターの支部は、統合しないでほしい
B 学校災害が発生した時、すみやかに救急車を呼ぶように
などを要請しました。
児童・生徒の数は減少しているにもかかわらず、学校災害は増加しつづけ、2002
年度は168万0512件にのぼっています。このようななか、これまでの「日本体育・健
康センター」が「独立行政法人 日本スポーツ振興センター」に改称され、センターの支
部が今年4月に再編されて、各都道府県単位でなく、より大きいブロックに一つずつと
なる予定です。そうなれば現在よりもっと不便になり、細かい配慮がされにくくなるおそ
れがあります。事故防止の観点からも、不安があります。
一時間の交渉でしたが、救急車を呼ぶこともせずに放置されて死亡した生徒の親
の悔しさ、体調不良という訴えを無視され熱中症で亡くなった生徒の親の声、プール
事故で寝たきりになった子どもを26年間も介護してきた親たちの思いなどを、それぞ
れの願いを込めてうったえました。
息子を部活中に熱中症で亡くした母親は、大阪・池田小学校での児童殺傷事件も
あってはならない悲惨なものだったけれど、どの子の命もかけがえのないものであり、
どんな事故・災害にも学校や教委は誠意をもって対応し、事故を重い教訓として受け
留め、再発の防止に努めてほしいと求めました。
教育活動が原因で自殺したり事故に遭った場合、その場所を問わず補償金を給付
するよう求めたのに対して、文科省は「学校管理下においてのみ」という返答を繰り返
すだけでした。
熱中症の発生予知計測器を購入し、普及することをも要望しました。事故防止につ
いての通達や広報を学校現場に浸透させる努力と点検強化については、前向きに受
けとめてもらえたと思っています。
災害給付期間の延長や、熱中症予防のためのリーフレット配布など、長年の運動
の成果もあがっています。
今後も、被災者のなまの声を伝え、事故の予防と充分な補償をうったえてゆきたい
と思います。
学校災害から子どもを守る全国連絡会
東京都千代田区二番町12−1 全国教育文化会館内
日本母親大会連絡会気付
TEL: 03-3230-1836 FAX: 03-3230-1870
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