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矢印は先進国に

2008年7月17日

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 洞爺湖サミットでは「投機資金」の抑制については自由経済主義にそぐわないと米国の反対で触れられなかったという。しかし、それで良かったかといえば疑問だろう。

 投機資金のスケールは世界的に格段に大きくなっている。その行動原理は徹底した自利の追求であり、システムとして様々に綻(ほころ)びが出てきた米国の経済や金融にとっても、投機資金のもつ脅威は他人ごとではない。また原油や資源の価格上昇が続く限り、資源国への所得シフトは膨大なものとなる。

 それを蓄積した新興国の政府系ファンドなどは今後どのような行動原則をとるのだろうか。これまではそうした政府系ファンドの運用にも米国の投資銀行などが関与していたが、今後はそれぞれの国がより主体的に投資や運用の判断をしてゆくことを考えると、やはり何らかの歯止めが必要となろう。しかし、先進国の「ファンド」なら規制を要しないほど節度がある、という主張をしても説得力はない。だとすれば今回のサミットではやはり投機資金の「節度」にも取り組むべきだったのではないか。

 「節度」は経済成長についても必要である。米国の高成長の持続は止まる気配だが、新興国の高成長意欲はなお強い。CO2削減問題でも新興国はもっと成長した上で足並みをそろえたいという先入観に固着している。

 しかし、物の豊かさだけでは経済の奉仕対象である国民一人ひとりの本当の幸せにはつながらない。これに対する納得のゆく答えや新たな目標を先進国が示すことによってこそ、新興国も成長の節度を選ぶ筋道が見える。その意味でもサミットの矢印は新興国の方にではなく、先進国の方に向いていたのではないか。(瞬)

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