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マレーシア:当局、アンワル元副首相逮捕 国民から反発も

 【マニラ矢野純一】マレーシアの野党・人民正義党(PKR)は16日、指導者のアンワル元副首相が、不正性行為(買春や同性との性行為)容疑で連邦警察に逮捕されたと発表した。アブドラ政権は、政権奪還を表明し国民に支持を広げるアンワル氏を恐れ、逮捕で政治生命を断つ狙いと見られる。しかし逆に野党や国民の反発が強まり、国政の混乱が深まる可能性もある。

 アンワル氏の男性助手(23)が6月28日、同性愛を強要されたとして警察に被害届を提出。PKRによると、アンワル氏は警察へ自主的に出頭しようとしたところ、途中で身柄拘束されたという。アンワル氏は「政敵を追い落とすための政府のでっち上げだ」として、容疑を否認している。

 イスラム教を国教とするマレーシアでは、同性愛行為は刑法で禁じられ、有罪の場合最長で懲役20年の刑となる。アンワル氏は93年に副首相に就任し、マハティール首相(当時)の後継者と目されたが、98年、首相との確執から副首相を解任され、今回と同じ不正性行為罪で起訴された。04年に無罪となっている。国民の間には、政権の2度にわたる同じ手法での政敵追い落としに疑念も強い。

 アブドラ首相は大幅に議席を失った3月の下院総選挙の責任を与党内からも問われており、マハティール首相が権勢を誇った98年当時より、国民の支持を得ていない。これに対しアンワル氏は、マレー系を優遇するブミプトラ政策の廃止を訴え、昨年以降、少数派のインド系や中国系国民だけでなく、物価上昇で政府に批判的な中流階級のマレー系国民にも急速に浸透している。逮捕が支持者による大規模な抗議行動に発展する恐れもある。

 国民の間には政府の言論弾圧に対する恐怖感も根強い。逮捕を恐れ匿名を条件に毎日新聞の取材に応じた政治評論家は、「(アンワル氏が逮捕されても)妻のワンアジザ氏が長くPKR党首を務めており、野党の結束はそのまま続く」と予測。アンワル氏逮捕で、さらに野党が勢いづく可能性があると指摘した。

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 ◆アンワル元副首相をめぐる動き◆

98年9月 マハティール首相(当時)と対立して副首相を解任される。不正性行為(買春、同性との性行為)などの容疑で逮捕

99年4月 捜査に介入した権力乱用罪などで禁固6年の実刑判決

02年7月 権力乱用罪の有罪が確定

04年9月 不正性行為を審理する上告審で逆転無罪判決

07年4月 「解任は不当」と訴えた裁判で裁判所が解任合憲と判断

08年3月 下院選で野党躍進。与党が39年ぶりに3分の2下回る

   4月 公民権の停止解除

   7月 不正性行為容疑で再び逮捕

毎日新聞 2008年7月17日 東京朝刊

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