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【ゆうゆうLife】医療 勤務医が辞める理由(下)大学頼りから住民協力へ (1/3ページ)
■大学頼りから住民協力へ
勤務医が病院から去り、地域の拠点病院が閉鎖の危機に直面しています。こうした状況のなかで、市民が病院と協力して、医師を呼び込む活動が始まっています。病院だけでなく、地域医療全体に良い影響をもたらす活動もあるようです。(北村理)
「これまで、お医者さんは、病院があればいても当たり前の、空気のような存在だと思ってました」。大阪府阪南市の連合婦人会会長、吉岡宏子さん(65)は振り返る。今は毎日のように病院を訪れ、「外来や入院の患者が増えているかどうか、心配するほどになった」という。
阪南市立病院は昨年7月、内科の常勤医5人が退職し、内科診療が休止。一時は閉院の危機も取りざたされた。これまでは隣接する和歌山県の県立医大から医師が派遣されていたが、同県も「和歌山市以外は全国平均を下回る医師不足。医師を大阪府に派遣する必要があるのかという声が高まった」(同県)という。
以降、「病院がつぶれると、高齢化している市民の生活崩壊につながる」と危機感を持った吉岡さんらが、病院職員らと医療を考える公開討論会を開いたり、ビラを配ったりし、市民に理解と協力を呼びかけた。
こうした動きに「熱意を感じた」という医師らが集まり、今年4月に全診療科で休止していた新規の入院を一部再開。9月からは内科も常勤医を迎え、再出発が決まった。常勤医となった松岡徳浩医師は少ない医師でも対応できるよう、内科も外科も幅広く患者を受け入れる「総合診療」の導入を提案した。
同市は医師招聘(しょうへい)のため、報酬を年額1000万円程度から2000万円へ倍増したが、松岡医師は「総合診療を設けるなどの現場の提案を、経営母体である阪南市は受け入れ、市民も理解してくれた。報酬も大事だが、行政や市民の理解があれば、医師は取り組む動機を持ちやすい」と評価する。