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燃料高騰で赤字続きというのに なぜ魚は値上げできないのか

燃料高騰で赤字続きというのに なぜ魚は値上げできないのか
消費者は魚介類に「割高感」を持っている

   全国の主要漁業団体が、全国一斉休漁に踏み切った。燃料価格の高騰で採算割れが続く窮状を全国にアピールし、政府に支援策を求めるのが目的だ。だが、原油高が影響する分野は漁業に限らない。例えば食料品では原油やトウモロコシ、大豆価格が上昇している分が転嫁され、製品価格の値上げが相次いでいる。ところが、漁業では、燃料の値上がり分を魚の値段に転嫁することが困難なのだという。何故なのだろうか。

「小売側の発言力が強すぎます」

   全国漁業協同組合連合会(全漁連、東京都千代田区)など主要17漁業団体は2008年7月15日、全国で一斉休漁を行い、国内の漁船約20万隻のほとんどが参加した。大半は7月15日のみの休漁だが、大阪府では7月16日まで、和歌山県の一部漁協では1週間継続する。漁業者による事実上の「ストライキ」が行われた形だが、全国規模で展開されるのは初めてだ。7月15日には東京・日比谷公園で約3600人が集まって「漁業経営危機突破全国漁民大会」を開き、政府・与党に対して燃料費の補助などの対策を求める決議を採択した。

   全漁連によると、漁船の燃料に使う「A重油」の価格が、この5年間で3倍に高騰。現在では燃料代がコスト全体の3〜4割を占めるという状況で、漁業経営を圧迫している。さらに、「コストアップ分を魚の価格に転嫁しにくい」という事情のため、「採算割れで、漁に出れば出るほど赤字が膨らむ」という状況が続いているという。

   だが、食料品の世界では原料の価格が上がれば、それが製品にも転嫁されて値上がりする、というのが通常だ。例えば大豆の値上がりにともなって、納豆や豆腐の値上げが相次いでいることは幅広く伝えられているところだ。

   価格転嫁ができない理由について、全漁連の漁政・国際部では

「せりでの取引がメインなので、価格は相場で決められてしまう。買う人が値段を決めてしまい、売る側が価格形成に及ぼすことができる力は皆無と言っていい。小売側の発言力が強すぎます」

と訴える。さらに、水揚げされた魚は鮮度が命なだけに、漁業者からすれば「値段が安いので売らない」という選択肢を取りにくい、という事情もある。

消費者は魚介類に対して根強い「割高感」を持っている

   08年5月末には休漁の方針を決めていた遠洋マグロ漁業の業界団体「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」」(日かつ漁協、東京都江東区)も、当時J-CASTニュースの取材に

「量販店からすれば『値上げ凍結宣言!』といったキャッチフレーズでの売り方はあり得るのでしょうが、『採算割れでも価格を下げろ』というのでは、もう漁業者は生活できません」

と、小売側の一方的な価格形成力の強さを嘆いていた。

   もっとも、今回の休漁措置で、消費者を刺激することは避けたい様子だ。この背景には、消費者が魚介類に対して根強い「割高感」を持っていることがある。農林水産省が07年8月から9月にかけて、約1000人を対象に行ったモニター調査では「日頃の食事で魚介料理を食べる機会を増やすために、生産・加工・流通現場において必要だと思う取組」を複数回答で聞いたところ、「魚介類の価格が安くなる」と答えたのが66%で最も多かった。さらに、「魚介類に関して感じること」を聞いた設問(複数回答)では、最も多い回答は「価格が高い」(55%)で、やはり価格に消費者の関心が集まっている様子だ。

   全漁連でもその点は気にしているようで、

「消費者に対して価格を吊り上げるですとか、需給バランスを動かそうといった意図は毛頭ありません。今回の休漁は、たった1日。台風が来ると、2〜3日漁に出られないこともあります」

と、休漁が魚の価格に与える影響が小さいことを強調。価格のちょっとした動きに敏感な消費者が「魚介類離れ」を起こさないように懸命な様子だった。

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