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【社説】

防衛省改革 組織論偏重が気になる

2008年7月17日

 組織論が前に出過ぎて、不祥事再発防止の原点がかすんではいないか。政府の防衛省改革会議がまとめた報告書はいつの間にか議論がすり替わった感が強い。これで防衛省の再生は大丈夫なのか。

 防衛省は昨年、守屋武昌前事務次官の汚職事件を筆頭に、米補給艦への給油量のデータ取り違えの隠ぺいなど多くのスキャンダルにまみれた。文民統制のありようにも重大な疑念が生じたため、首相官邸主導で処方せんを書こうと設置されたのが改革会議だった。

 報告書は不祥事の検証と提言の二本立て。防衛装備品調達をめぐる守屋前次官の事件を「忌まわしい背信行為」と非難し、調達の透明性確保へ会議録の作成・公開などの強化策を盛り込んだ。

 隊員には規則順守の徹底やプロフェッショナリズムの確立など意識改革を求めた。こうしたイロハから書き込まないといけないところに問題の深刻さが浮かび上がる。不祥事への対処方針としては、全体的に総花感は否めない。

 一方、組織改革については踏み込んだ内容になった。

 本省内局と統合・陸海空各幕僚監部の大枠は維持しつつも、部隊運用や防衛力整備の機能をそれぞれ集約。縦割りを廃するため、背広組と制服組を一部混成化し、首相や防衛相の司令塔機能の強化を打ち出した。

 背広組が優位に立つ“文官”統制ではなく、政治主導による文民統制の徹底を求める狙いは理解できる。しかし、これが不祥事根絶にどう結び付くかが見えてこない。気になるのは、石破茂防衛相が大規模な再編案を提唱したあたりから、会議の関心事が組織改革に移ってしまったことだ。

 以来、権限死守へ背広組、制服組の思惑が交錯。省内外での駆け引きが激しくなるにつれ、不祥事の反省部分がどこかに置き去りになった格好だ。委員からも「組織いじり」の攻防に疑問の声が上がった。

 「国民の目」からの改革が、いつの間にか「防衛省の目」になっていたとしたら主客転倒だ。

 報告書がまとまったことで、これまでの不祥事が雲散霧消するわけではない。国民の視線は依然厳しい。石破氏は報告書を踏まえ、具体案を策定するチームを週内に新設するという。「なるほど変わった」と実感できるような改革案を、防衛省自らの手で提示できなければ、失った信頼はいつまでたっても戻ってこない。

 

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